新年度、始まりました

年度末の慌ただしさから一息つくタイミングでもありますが、そんな新しい季節には、余計なものを捨て去って、新たな気持ちで挑みたいものです。モノはもちろん、日常的に惰性で続けてしまっている悪い習慣も。

そこで、気持ちも新たに新年度を迎えるために、深酒エナジードリンク麺類タバコなど、4人のライフハッカー[日本版]編集部員がそれぞれにやめようと思ってもやめられないでいた悪い習慣のリセットに挑戦してみることにしました。

悪い習慣をやめるにあたり、それぞれの編集部員がどのようにやめたのかを習慣化コンサルタントの古川武士さんに聞いてもらい、採点とアドバイスをいただきます。

古川武士(ふるかわ・たけし)/習慣化コンサルタント

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関西大学卒業後、日立製作所などを経て2006年に独立。約3万人のビジネスパーソンの育成と約500人の個人コンサルティングの現場から「続ける習慣」が最も重要なテーマと考え、オリジナルの習慣化理論・技術をもとに個人向けコンサルティング、習慣化講座、企業への行動定着支援を行っている。主な著書に「続ける習慣」「やめる習慣」「早起きの技術」などがあり、全16冊、計70万部を超え、中国・韓国・台湾など海外でも広く翻訳され読まれている。公式サイト

1人目は、毎日お酒を飲むことが習慣になっていた編集部員・岸田。深酒をやめようと思ったのは「慢性的な疲労」がきっかけだったと言います。  

やめようと思ったきっかけ

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Image: Kangaru/Shuttterstock.com

わたし、岸田がお酒をやめようと思ったのは、去年末に「なんとなく疲れが取れないなー」と感じていたことがきっかけ。週末といえば、これまではライブに行ったり遠くに出かけたりとわりとアクティブに過ごしていたのですが、最近は、昼過ぎまで寝て、起きてからもぼーっとして、なんとなくだらだら過ごしてしまいがちでした。これまで友人に遊びや飲みに誘われたら断ることなんてなかったのに、なんだか最近は出かけることすら億劫に感じる…。

それを友人にこぼしたところ、「飲みすぎで肝臓が弱ってるんじゃない?」と一言。肝臓弱ったら身体疲れるん?

そういえば健康診断で肝機能はC判定だった気がします。調べてみると、肝機能の低下が、だるさや眠気を引き起こすのはかなり有名な話らしいのです。同時に、沈黙の臓器と言われるだけあって、症状が出る頃にはかなり進行している状態だとも知って肝を冷やしました。肝臓だけに。

気分をあげるため、元気を出すためなどブーストの意味も込めて飲んでいたお酒。逆効果だったのかも…と思い始めました。

深酒で失ってきたものを数えてみた

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Image: Yulia Grigoryeva/Shuttterstock.com

思えば、深酒によって失ってきたものも多い気がします。

・お金と時間

毎日、お酒を飲むことに費やすお金と時間をバカ計算してみました。自宅で毎日2本缶ビール(350ml)を飲むとしたら、1日に約500円。外で軽く飲んでお酒だけで1500円ほど。週に2回外食するとして、お酒に年間28万7500円も費やしていることになります。さらに時間で言えば、1日にお酒を飲むのに1.5時間費やすとして、年間534時間。2時間の映画を267本観ることができますね!

・信頼と機会

深酒で理性を失っての行動は、信頼損失を招きかねないほか、物理的なリスクもつきまといます

大学生時代からの友人と飲んだ際、いつものように酔ってじゃれ合っているうちにもつれて倒れてしまい、友人は後頭部を強打。すぐに見てわかるくらいの大きなたんこぶができてしまいました。その夜はそのまますぐ解散となりましたが、なにかあればどうしようと考えると怖くて、泣いて帰ったことを覚えています

友人も幸い別状はなかったのですが、もしものことがあれば、損害賠償どころか一生消えない後悔の念と刑事責任を負うところでした。

やめるためにしたこと

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Image: 常陸野 ノン・エール via amazon

あえて、ここではお酒が悪いとはいいません。これまでにもコミュニケーションやインスピレーション(アルチュール・ランボーにおけるアブサンのようなイメージです)といった面でのメリットは享受してきましたし、自分自身、一切のお酒を断つということはあまり考えにくいので、体調に支障をきたしたり、アウト・オブ・コントロールになるまで飲むのをやめるためにできることを考えました。

  • なぜ自分がお酒を飲むのかを見つめ直す
  • ノンアルコール飲料で代替
  • ご褒美制にする
  • 代わりに運動をする、猫を飼う
  • 自転車通勤にするなどして、飲めない環境をつくる

やめてみての感想

まずしたことは自分が「お酒を飲む理由」を見つめ直すこと。先ほどコミュニケーションやインスピレーションのため、と言いましたがそちらはポジティブで副次的な側面。深酒しがちなのは、仕事でうまくいかない時やプライベートで落ち込んでる時など、ネガティブな動機での飲酒が多いように思いました。そこで、考えたのが以上のようなこと。

高揚感を求めて、クラフトビールっぽい、ちょっといいノンアルコール飲料を飲んでみたりしました(結果、私が求めているのはアルコールなのだということがわかりましたが)。

かつては、何もない日は1杯まで、お祝い事などがある日は5杯まで…といった風に「ハレ」と「ケ」に分けて飲酒の量を決めていました。今回はこれを応用して、日常ではなるべく控えめにするのはもちろん、お祝い事やいいことがあった時には積極的に飲んで良いというルールを設けました。

さらに、ストレス発散や落ち込んだ時の癒しを、運動や猫を飼うことで解決しようとしたのですが、こちらは結果からいうと失敗しました

ペット可物件への引っ越しを期に、ランニングを再開して猫を飼おうと思っていたのですが、年末から一度も運動はできていないし、猫はまだ飼えていません。

自転車通勤などにして、飲むまでに障害を作ればお酒を飲まなくて済むかなと思ったのですが、自転車もまだ買えていません。そもそも自転車通勤したとしても、自転車乗った後のビールの方が美味しいんじゃないか、というつっこみもありました。その通りだと思います。

このように実現できていない項目もいくつかありますが…、お酒を控えるように意識してからは心なしか体調が良く、前より疲れは感じなくなった気がします。寝ても寝ても寝足りないといっただるさも軽減されたように思うし、週末に出かける意欲も復活してきました。(※ 個人の感想です!)

習慣化コンサルタント・古川さんの採点&アドバイスは?

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Image: Rafael Croonen/Shuttterstock.com

いかがでしょう…。

古川さんによる採点は、70点

うーん、微妙な点数ですね。ちょっとネタバレすると編集部内で最下位でした。さらにいうと、最初は60点だったのですが温情で70点にしていただきました。この点数となった理由は…

・「深酒」の定義がちゃんとできていない

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Image: ヨコヤマコム

何かをやめるというのは、何をすることなのかをはっきりさせたほうがいいんですね。今回、一切を断ち切るのではなく、「無駄なお酒」を辞めたいという意図だと思うのですが、「なるべく」「できるだけ」といった言い方で、そもそもの「深酒」の定義が曖昧でした。

日に週に月に、いくらくらいまでなら飲んでいいのか、それは量なのか時間なのか。そこがまだ詰められていない印象を受けました。

そうですね…。「深酒」の具体的な定義をせず、精神論だけを奮ってやろうと思っただけで実行できてなかったことも多かったですね。反省しています。

やめるためにもっとできたこと

・飲み会では周りに宣言する

周りに節酒と「ビール何杯」までといった具体的な節酒の目安を宣言すると、周囲の視線や声が自然とストッパーになってくれます。

・飲んだ量を可視化する

さらに、アルコール1杯くるたびにスマホのカメラ写真で撮影したり、飲んだグラスを下げないでおいてもらうなどして、自分自身や周囲が「自分がどれくらいの量を飲んだか」をわかるようにしてみてはいかがでしょう。ノンアルコール飲料も活用次第だと思うので、上限を超えそうな場合は飲み会×ノンアルコール飲料と組み合わせるのもいいと思います。

自宅で飲む場合、2杯半で捨てる

たとえば「家では2杯半まで飲んでいい」などのルールを課すのはいかがでしょう。3杯目を飲むとしたら半分は捨てなければいけなくなるので、2杯でやめておこうという意志が働きます。

・冷蔵庫で冷やす本数を制限する

ぬるいビールほどまずいものはないですよね。缶ビールは冷蔵庫で冷やす本数をあらかじめ決めるのも良さそうです。

こちらに関しては「冷えていなかったら、氷入れて飲んじゃいますね」というとすごく残念そうな顔をされました。

ストレスから解放されるための手段は?

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Image: ヨコヤマコム

へべれけになるまで酔う時って、忘れたいというような辛いことが起こっただとか、現実逃避したいなんていうストレスベースの事案が多くないですか? 日常に起こるこれらのことにどう対処するか、ということが重要になってきます

ストレスから解放されるためには、今に没頭することがてっとり早いんです。今という時間に没頭するのは心を解放する手段なのですが、それにも、ジャンクなやり方と健全なやり方があります。ジャンクなやり方としては「お酒を飲む」「ギャンブルに興じる」など。「スマホゲーム」なんかもそうかもしれません。ゲーム性の高いものをすれば、時間を忘れるわけじゃないですか。

一方、ランニングする人は走ることに没頭している時には嫌なことを忘れていますよね。お酒もそういう手段になり得るけれど、他のことに没頭してネガティブな感情を思考空間から外してしまう。座禅を組むとすっきりするし、マインドフルネスだっていいわけです。

ストレスに立ち向かうために代替に行動をすることを「スイッチング」といいますが、お酒に爽快感を求めるのなら、それはウィルキンソンの強い炭酸水だっていい。

なぜお酒を飲むのか、その要因を書き出すなどして、ストレスに対してどう向き合うのかを考えることが引き金になってくると思います。

なるほど。まず始めに「なぜ自分がお酒を飲むのかを見つめ直す」ことをしたのは、あながち間違いではなかったようです。


今回わたしが至ったプロセスとしては、問題を認識して、本質原因の特定を(雑に)して、解決策の立案まではなんとか(雑に)したはいいものの、実行に至らないものも多かったというところでしょうか…。

また、深酒することではなく疲れが取れないのが問題なのだとしたら、肝機能の低下をお酒のせいとだけ決めつけず、食生活を見直すなどの必要があったのかもしれません。

古川先生に指摘されたことは、自分が見落としがちなことを振り返るきっかけとなって、学ぶところが多かったです。今を生きるをモットーに、新年度も精進していきたいと思います。

あー、ビール飲みたい。

Image: Shutterstock.com(1, 2, 3), amazon, ヨコヤマコム

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