壁にAmazon、障子にGoogle。
気がついたら、ぐいぐいと広がっていったスマートスピーカー。音声であれこれできて、とっても便利です。人間のぐうたらにより拍車をかけてくれる最新家電です。自分の意向をスピーカーに伝えるためには、スマートスピーカーに住むデジタルアシスタント(AlexaやSiri)の名前を呼んだり、「OK, Google」と声掛けしたりします。すると、天気予報やら音楽再生やらが実行されます。ただ、いつご主人さまから声掛けされてもいいように、スマートスピーカーって常にスタンバイ状態にあるのですよね。いつ呼ばれてもいいように、じっとご主人様の声や気配に全身全霊全端末で耳を傾けているのですよね…。
そんなスマートスピーカーに関する、New York Times紙が見つけてきたある特許が怖いです。AmazonもGoogleも、やろうと思えば、いくらでもユーザーの全私生活をチェックできるのです。そして、そのチェックした情報をもとにターゲット広告をうてるのです。
Amazonの特許がこちら。コマンド発動していないときも、ずーっと周辺の会話をモニタリングします。ユーザー(もしくは周辺にいる人々)を認識し、会話から行動や好みを把握。それに応じた広告を出そうという内容です。
米特許商標庁にて公開されている解説画像による、シチュエーションだとこんな感じ。
認識済みユーザー(ローラ)「休暇最高だったね。オレンジカウンティーもビーチも満喫できたし。子どもたちもサンディエゴ動物園とっても気に入ってたね」
確認済みユーザー「南カリフォルニアに行ったとき、サンタバーバラが気に入った。素晴らしいワイナリーがたくさんあるんだよ」
画像で例にあがっているのは「Enjoy(満喫する、楽しむ)」や「Love(大好き)」、「Great(素晴らしい)」というキーワード。これをもとに、「何」を満喫し、大好きで、素晴らしいと思ったのかを割り出します。画像例だと、サンタバーバラや、ワイナリー、ビーチ、サンディエゴ動物園が、この「何」にあたります。日常の何気ない会話を蓄積していけば、かなり個人の好みや行動パターンが割り出せるでしょう。さすれば、提示する広告のターゲットもかなりしぼれます。
Amazonが耳なら、Googleは目。Googleの特許は、Nestのスマート家電であるセキュリティカメラを想定したこんなもの。カメラがとらえた画像から、ユーザーの好みを判断するのです。
米特許商標庁にて公開されている解説画像の例はこんな感じ。
『ゴッドファーザー』の本がベッド横に置いてありますけど、これを原作とした映画が、今夜9時半から5チャンネルで放送されますよ?
コマンド発動関係なしに、常に主人(ユーザー)のすべてをモニタリング。ささいな情報の積み重ねで、主人の生活を完全サポート。なんてできるアシスタントでしょう、なんて便利! そう思う人もいるでしょう。常に監視されている、覗き見されている、さらにその情報でAmazonやGoogleが金儲けしている。怖い以上に気分悪い! そう思う人もいるでしょう。
特許=製品化ではありません。GoogleもAmazonも、プライバシーへの配慮にはそりゃ気をつけています。Amazonは、録音したユーザーの音声をターゲット広告には使わないと言っています。特許は、ちょっと前のものなので、まだ可能性を模索していたときに提出されたものなのでしょう。…そう、可能性としては考えたのです。特許があるということは、アイディアとしてあがったということ、やろうと思えば技術的にはできるということ。やりませんよ。今はやりません。ただ、人間がもっと便利な世界を望んだとき、その引き換えに個人のデータを差し出したとき、そのときはガンッガンにできる準備はあります。
世の中で最も難しいことのひとつは、きっとうまいバランスを探ることですよ。
Photo: ギズモード・ジャパン
Image: USPTO (1, 2)
Source: Techradar
(そうこ)