多くの人は、ToDoリストにいくつ完了チェックをつけたかで生産性を自己評価しています。しかし、リストのすべてのタスクにチェックがつくことは決してありません。タスクを完了するそばから、新しいタスクが次々と追加されていくからです。

考えてみてください。仕事や人生で心から達成感を味わったのはいつのことでしょうか? ゆっくりと達成感を噛みしめる前に、すぐに次のタスクが頭をよぎります。他に何かやるべきことは?

この考え方は、大きな問題をもたらしかねないものです。「これは、率直に言って、人生を台無しにする愚かなやり方です」と作家でポッドキャスト『Hurry Slowly』を主宰するJocelyn K. Glei氏は言っています。

「ほかに何か?」という思考方法を採用すれば、いつも満たされない気持ちでいることになります。

どうしてそう考えてしまうのでしょうか? Glei氏は、この思考は「広く一般に浸透しつつある、有害な心理状態の象徴」だと言っています。この現象は、テクノロジーやソーシャルメディアが普及したことで、誰もがお互いを簡単に比較できるようになったために起きているものです。Facebook、Instagram、Tinderなど数多くのWebサイトから、ほかの人の生活を覗き見ることができるようになり、また、絶え間なく流れ込む情報やコンテンツにさらされ続けた結果、「ほかには?」と考えることが、習い性となってしまったのです

誰かの人生で最も輝かしい瞬間を目撃しても、恐ろしく悲惨な出来事のニュースを見ても、自分自身の創造的キャリアにおいて劇的な進歩があっても、いつもどこか満ち足りない気分が残ります。

この思考から抜け出すために、Glei氏は次のことを勧めています

1. 現実的なTo-Doリストを作成する

Glei氏は、ToDoリストの作成時に考慮すべき事項について深く洞察した記事を書いています。まず最初にすべきことは、視点をズームアウトして「なぜそのタスクに取り組まなければならないのか」「そのタスクが大きな目標にどのように貢献するのか」を、俯瞰して見ることです。

また、2種類のToDoリストを作成することも勧めています。1つは、「脳の排水」用のリストで、翌月達成すべきタスクをすべて書き出したものです。もう1つは、日常的に使うToDoリストです。こちらは、現実的にこなせるだけのタスクを書き入れます。このとき、達成に必要なエネルギー量にもとづいてタスクを並べるようにします。

「私たちはひとりの人間として概日リズムに従っています。たいていの人は、午前9時〜正午に認知機能のピークを迎えます」とGlei氏。

ですので、タスクに取り組む順序が重要です。

最もエネルギーと集中力を必要とするタスクをToDoリストの先頭に書き入れてください。

また、ToDoタスクはできるだけ具体的に書くようにします。たとえば、単純に「午後用の記事を執筆する」とする代わりに、「アイデアを練る」「導入部を書く」「写真を探す」など、より小さいタスクに分割してください。

2. カレンダーに "余白"をスケジュールする

デザインの世界では、要素間のバランスをとり、構成を整えるために「余白」が意図的に使われます。Glei氏は、日常生活にもこの考え方を導入することを勧めています。

「デザインと同じくらい、日常生活にも余白が必要です。その理由もデザインと同じです」とGlei氏。

日々の生活が慌ただしく過ぎたり、タスクを詰め込みすぎていたりすると、何事にも集中できなくなります。そんな状況で仕事に取り組んでも、創造的に思考する能力が低下するだけです。

集中力を取り戻すために、生活に採り入れるべき余白の例を以下に挙げておきます。

余白を楽しむための時間をスケジュールしてみましょう。

3. 「やめること」リストを作成する

Glei氏は、Jim Collins氏の記事を引きながら、ToDoリスト(すなわち、することリスト)を補完するために「やめること」リストを作ることを勧めています。 Collins氏は次のように書いています。

明日、目覚めると、2件の電話がかかってくるとします。最初の電話は、あなたが無条件で2000万ドルを相続したことを伝えるものです。2件目の電話は、あなたが治療不可能な末期の病気であり、余命が10年もないことを伝えるものでした。これを受けて、あなたの行動はどう変わるでしょうか? とくに、何をやめることにするでしょうか?

この課題に取り組んだことが、人生のターニングポイントとなりました。そして、「やめること」リストが、新年の誓いを立てるときの重要なベースとなったのです。このリストのおかげで、あらゆる資源の中で最も貴重なもの、すなわち「時間」をどのように割り当てるかについて、改めて深く考えるようになりました。

ですので、自分にこう尋ねてみてください。仕事中に何を「やめる」ことにしますか? 5分おきにメールをチェックすること? Glei氏のように、朝に会議をしたり、デスクで昼食を食べることをやめますか? あなたにも、やめられる習慣がいくつかあるはずです。

4. 過去の実績を思い起こす

Glei氏は、過去の実績を思い起こすほうが、新しいタスクに次々と手を出すよりも、生産性にも仕事そのものにも良い効果をもたらすことを示す、ハーバードビジネススクールの研究を引用しています。この研究結果に納得できない人は、自分の経験を思い出してみてください。仕事で忙しく駆けずり回っているといき、実際にはどれほどのことを達成できているでしょうか?

良い効果がもたらされるのは、過去の実績を思い起こすことで、自身の能力への信頼感が高まり、目の前の仕事に対する理解が深まるからです。自分自身と仕事について、より深く理解できるようになるということです。どんなことでもそうですが、本当に何かを理解したいなら、そのことを集中して考えられる時間をつくらなければなりません。こうした自己省察は生活の中で自然と起きるものではありません。意図的にそのための時間をつくっておく必要があります。

自分がこれまでに達成した成果を祝福し、分析しなければなりません。過去を振り返ることで、自分や仕事についてより一層理解が深まり、そこで得られた学びを次の仕事に活かすことができます。

ですので、「ほかの何か」を考えるかわりに、自分に休息を与えてください。これまでに自分がどれほどのことを成し遂げてきたか、どれだけ長い道のりを歩んできたかを認め、祝福してください。


Image: YarekM/Shutterstock.com

Source: Hurry Slowly, Jocelyn K. Glei(1, 2), Jim Collins, SSRN

Alicia Adamczyk - Lifehacker US[原文