業界が注目した「KOFガチャ返金訴訟」が和解で決着 原告への返金は認められず疑問残る結果に

なんともスッキリしない結果に……。

» 2018年04月16日 09時00分 公開
[ねとらぼ]

 スマートフォン用ゲームTHE KING OF FIGHTERS '98 ULTIMATE MATCH Online(KOF98 UM OL)のガチャ不当表示を巡り、ユーザーの“Tomas”氏が運営元を訴えていた裁判(関連記事)が終結し、最終的に和解に至ったことが分かりました。Tomas氏は自身のブログで、和解に至った経緯を報告するとともに、当初から掲げていた“返金の前例を作る”という目的を果たせなかったとし、「パッとしない結果で申し訳ありません」と支援者に謝罪しています。


KOF裁判 ガチャ 決着 和解 ガチャの不当表示を巡って返金裁判に発展していた「KOF98 UM OL」

KOF裁判 ガチャ 決着 和解 今回のKOF訴訟についてのご報告(原告、Tomas氏のブログ)

 裁判で主な争点となったのは、「被告がアプリの運営主体であるか否か」。Tomas氏は今回、東京・六本木にある「OURPALM株式会社(代表:石渡章博/東京都港区)」を相手に訴訟を起こしていましたが、結果から言えば、ここはアプリの運営主体ではなく、Tomas氏が主張していた「不当表示の是非」についてはそもそも争われなかった――というのが裁判の大まかな顛末(てんまつ)になります。

※ただし不当表示については既に消費者庁が運営元に対し再発防止などを命じており、有利誤認があったことがはっきり認められている(関連記事:スマホ版「KOF」に消費者庁が措置命令 ガチャの確率表示に有利誤認

 今後、「本当の運営元」を相手に再度訴訟を起こすつもりがあるかなど、Tomas氏に取材しようとしましたが、残念ながらこの件についてはブログに書いてある以上のコメントは控えたいとのこと。最後はなんともスッキリしない着地となりましたが、裁判記録やTomas氏のブログと照らし合わせつつ、裁判の経緯をまとめました。


KOF裁判 ガチャ 決着 和解 問題になっていたガチャ画面。「出現確率3%」との記載があったが、実際には0.333%だった(消費者庁の発表資料より)

「事業者:OURPALM株式会社」とは何だったのか

 同ゲームの公式サイトには当初、運営事業者として「OURPALM株式会社」の社名や所在地、また代表者として石渡氏の名前などが記載されていました。これは「特定商取引法(特商法)」で義務付けられている表記で、Tomas氏もこれを根拠に「OURPALM株式会社」に対し返金訴訟を起こしています。


KOF裁判 ガチャ 決着 和解 今回の裁判の構図(編集部作成)

KOF裁判 ガチャ 決着 和解 当初サイトに記載されていた運営会社表記(モザイク加工は編集部によるもの)

 ところがサービス開始から半年以上が経過したころ(2017年3月30日)になって、運営側は突然記載に間違いがあったと公式サイトで発表します。サイトによれば、同作の運営元は中国にある「Ourpalm Co., Ltd.(代表:エイミーリウ/北京)」であり、当初記載があった「OURPALM株式会社」一切関係のない会社だったとのこと。思えばこれが裁判をややこしくした全ての原因でした。


KOF裁判 ガチャ 決着 和解 突然サイトに掲載された「誤記載のお詫び

KOF裁判 ガチャ 決着 和解 本来の運営会社だったとされる「Ourpalm Co., Ltd.

 Tomas氏は当初「日本法人(OURPALM株式会社)もイベント立案やユーザーサポートなどで関わっていたのではないか」と主張していましたが、ブログでは最終的に「被告が実際の運営者ではないことや(略)経緯について、私なりに理解・納得することができました」と報告。被告の「OURPALM株式会社」および、同じく運営に関与している可能性があるとして批判していた「CTW株式会社」(代表:佐々木龍一/東京都港区)に対し、「多大なる迷惑をかけてしまっていた」として謝罪しています(※)。

※OURPALM代表の石渡氏はCTWの副社長でもあり、OURPALMとCTWは登記上の住所も同じ

 しかし、ひとまず和解という形で決着したとはいえ、そもそもなぜ無関係な会社名がサイトに記載されていたのか、被告は本当に一切運営に関与していなかったのかなど、いまだ疑問は多く残っています。


KOF裁判 ガチャ 決着 和解 裁判記録がWebで公開されていないため、東京地方裁判所まで行って閲覧してきた

なぜ無関係な「OURPALM株式会社」の名前が記載されていたか

 裁判記録を確認すると、CTW代表の佐々木氏はもともと「Ourpalm Co., Ltd.」の社員と個人的なつながりがあり、石渡氏が新会社を設立する際「OURPALM株式会社」という名前にしたのは、中国進出時に合弁会社の提案をしやすいようにとの意図があったとのこと(石渡氏の証言)。


KOF裁判 ガチャ 決着 和解 OURPALM株式会社とCTW株式会社、Ourpalm Co., Ltd.の関係(編集部作成)

 ただこの合弁会社の話は、会社設立とほぼ同時に立ち消えになり、その後「OURPALM株式会社」は実質休眠状態に。代表の石渡氏はTomas氏から訴状が届くまで、自分たちの名前がゲーム公式サイトに記載されていたことは全く知らなかったそうです。

 石渡氏は供述の中で、誤表記について「取りあえずOURPALMという同じ商号を記載しておけばよいといった程度の軽い認識だったのでは」「誤表記の重大さや、それが原因で日本のユーザーから訴訟提起されるなどとはまったく想像していなかったのではないか」とOurpalm Co., Ltd.を強く批判。訴状が届いた時は「怒りの気持ちがこみ上げてきたのを覚えています」ともコメントしています。

 裁判ではその他、ゲーム公式サイト(kof98.ourpalm.co.jp)などでも使われている「ourpalm.co.jp」のドメイン「OURPALM株式会社」が取得していた件についても追求されていましたが、石渡氏はこれについて“中国法人からの個人的な依頼を受け、佐々木氏が代理で取得したもの”と説明。石渡氏は訴訟を提起されるまで、これについても全く関知していなかったとしています。


KOF裁判 ガチャ 決着 和解 「ourpalm.co.jp」のドメイン名を検索すると、「OURPALM株式会社」の「佐々木龍一」氏が取得していたことになっていた(カコミは編集部によるもの)

和解しなければ逆にTomas氏が訴えられていた?

 結局、上記のような流れから、正規の運営元である「Ourpalm Co., Ltd.」の不当表記については問われないまま、裁判は和解という形で終結することになります。

 最終的な和解条件は、Tomas氏側はブログに謝罪エントリを掲載し、当時訴訟の動きについて報じたブログやメディアにもこれを紹介するよう求めること(※ねとらぼの名前も挙がっていた)、被告側は「ourpalm.co.jp」のドメインを今後使わないよう中国側に求めること、そして互いにこれ以上の法的請求を行わないこと――など。

 また和解協議の記録を見たところ、もし和解に応じるのであれば、佐々木氏がTomas氏に対し別途準備していた訴訟を取り下げる――といった記述もあり、このあたりもTomas氏が和解案を飲んだ理由の1つだったと考えられます。裁判記録には佐々木氏がTomas氏に対し、風評被害による損害賠償(1日あたり約41.6万円)を求めるメールを送っていたことも残っており、もし和解に応じなければ、今度はTomas氏が訴訟を起こされる側に立っていた可能性もあります。


KOF裁判 ガチャ 決着 和解 CTWのサイトにも「しかるべき法的措置をとらせていただくことを検討」といった記述(カコミは編集部によるもの)

運営側は実質“おとがめなし”という結果に

 いずれにしても、ここまで裁判がこじれることになった原因の1つは、やはり本来の運営元だったとされる「Ourpalm Co., Ltd.」“誤記載”でしょう。しかも結果的にはこの誤記載によって、運営側は明らかな不当表示があったにもかかわらず、ユーザーの返金要請から逃れることに成功しています。さらにもう1つ付け加えるなら、特商法表記欄の誤記載は明らかな「特商法違反」ですが、これについても運営側は今のところ何のペナルティーも受けていません。


KOF裁判 ガチャ 決着 和解 消費者庁サイトより。「事業者の氏名(名称)、住所、電話番号」は特商法により表示が義務付けられている(カコミは編集部によるもの)

 一体なぜこのような誤記載が起こったのか。Ourpalm Co., Ltd.(「KOF98 UM OL」運営サポート)側に問い合わせたところ、「今件につきましては、運営内部のミスコミュニケーションが原因となり、この様な誤記載が発生しました」との回答。結局、具体的な誤記載の理由についてはよく分からないままでした。

 また特商法違反の罰則についても消費者庁に聞いたところ、「一般的には特商法違反の報告があった場合、事実であるか精査し、それが悪質であった場合には罰金や業務停止命令などの罰則を課すことになります」との回答。ただ、なぜ今回のケースでは何のペナルティーもなかったのかなど、個別の案件については回答できないとのことでした。

 今回の裁判では図らずも、海外運営タイトルとトラブルになった場合、いかにユーザー側が不利であるかが浮き彫りになったとも言えます。Tomas氏はブログの最後を、次のようなアドバイスで締めくくっています。

「ユーザーというか消費者の方々には、『特商法に基づく表記に載ってても違う人かもしれない』とか、『住所や電話番号書いてあってもそれは間違いの可能性もある』ということを念頭に、インターネットの世界を楽しんでもらえれば、と思います」(Tomas氏のブログより)


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2405/03/news002.jpg 市役所で手続き中、急に笑い出した職員→何かと思って横を見たら…… 同情せざるを得ない衝撃の光景に「私でも笑ってしまう」「こんなん見たら仕事できない」
  2. /nl/articles/2405/02/news023.jpg 【今日の計算】「2+7×9−3」を計算せよ
  3. /nl/articles/2405/02/news004.jpg 80代一人暮らし女性の“その都度が大事”なキッチンお掃除術 毎日少しずつ……の習慣に「尊敬しかない」「すごくやる気をもらえます」と称賛の声
  4. /nl/articles/2405/01/news013.jpg IKEAの新作カーテンが「家中これにしたい」ほどすてき!→どうやって付けているの? 垢抜けインテリア術に視線集中「すっごいかわいい」「色味が最高」
  5. /nl/articles/2402/15/news019.jpg 犬が同じ場所で2年間、トイレをし続けた結果…… 笑っちゃうほど様変わりした光景が379万表示「そこだけボッ!ってw」
  6. /nl/articles/2405/01/news131.jpg なんでそうなった? のこのしまアイランドパーク園内看板の名称が「俺は間に合わなかったがトイレはあっちだ君」に決定
  7. /nl/articles/2405/01/news128.jpg 「笑い止まんないw」 少女漫画風の顔をメイクで再現したら……? 衝撃の“おもしれー女”が爆誕 「笑うと怖!!」
  8. /nl/articles/2402/21/news158.jpg 業務スーパーの“高コスパ”人気冷凍商品に「基準値超え添加物」 約1万5000個販売……自主回収を実施
  9. /nl/articles/2405/02/news106.jpg 【今日の難読漢字】「鱸」←何と読む?
  10. /nl/articles/2405/01/news092.jpg “スケスケ成人式コーデ”が物議のモデル、「3度見される服」を披露 「コレは見ちゃうわ」「洗っても大丈夫なのか」の声
先週の総合アクセスTOP10
  1. 釣りに行こうとしたら、海岸に子猫が打ち上げられていて…… 保護後、予想だにしない展開に「神様降臨」「涙が止まりません」
  2. 身長174センチの女性アイドルに「ここは女性専用車両です!!!」 電車内で突如怒られ「声か、、、」と嘆き 「理不尽すぎる」と反響の声
  3. しぶとい雑草“ドクダミ”を生やさない超簡単な方法が115万再生! 除草剤を使わない画期的な対策に「スゴイ発見」
  4. 天井裏から変な音がする→スマホを突っ込んで撮影したら…… 映った“とんでもねぇ”モノに「恐ろしい」「何これ」と騒然の196万表示!
  5. 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  6. 誰も教えてくれなかった“裁縫の裏ワザ”が目からウロコ 200万再生のライフハックに「画期的」と称賛【海外】
  7. 「電車の中で見ちゃダメ」「笑ったww」 実家からLINE「子ヤギがすばしっこくて捕まらない」→送られてきた衝撃姿が320万表示!
  8. 顔の半分は童顔メイク、もう半分の仕上がりに驚がく 同一人物と思えない半顔メイクが860万再生「凄いねメイクの力」
  9. 元「AKB48」メンバー、整形に250万円の近影に驚きの声「整形しすぎてて原型なくなっててびびった」
  10. スーパーで買ったレモンの種が1年後…… まさかの結果が635万再生「さっそくやってみます」「すごーい!」「手品みたい」
先月の総合アクセスTOP10
  1. 庭に植えて大後悔した“悪魔の木”を自称ポンコツ主婦が伐採したら…… 恐怖のラストに「ゾッとした」「驚愕すぎて笑っちゃいましたw」
  2. 小1娘、ペンギンの卵を楽しみに育ててみたら…… 期待を裏切る生き物の爆誕に「声出して笑ってしまったw」「反応がめちゃくちゃ可愛い」
  3. 生後2カ月の赤ちゃんにママが話しかけると、次の瞬間かわいすぎる反応が! 「天使」「なんか泣けてきた」と癒やされた人続出
  4. 「歩行も困難…言動もままならず」黒沢年雄、妻・街田リーヌの病状明かす 介護施設入所も「急激に壊れていく…」
  5. 車検に出した軽トラの荷台に乗っていた生後3日の子猫、保護して育てた3年後…… 驚きの現在に大反響「天使が女神に」「目眩が」
  6. 「虎に翼」、新キャラの俳優に注目が集まる 「綺麗な人だね」「まさか日本のドラマでお目にかかれるとは!」
  7. 釣りに行こうとしたら、海岸に子猫が打ち上げられていて…… 保護後、予想だにしない展開に「神様降臨」「涙が止まりません」
  8. 身長174センチの女性アイドルに「ここは女性専用車両です!!!」 電車内で突如怒られ「声か、、、」と嘆き 「理不尽すぎる」と反響の声
  9. 築152年の古民家にある、ジャングル化した水路を掃除したら…… 現れた驚きの光景に「腰が抜けました」「ビックリ!」「先代の方々が」
  10. 「葬送のフリーレン」ユーベルのコスプレがまるで実写版 「ジト目が完璧」と27万いいねの好評