日本の企業を蝕んでいる病の正体が分かった

「ゾンビ企業」が増えるワケ
東芝、シャープ、三菱自動車や神戸製鋼、そして、森友学園の国有地取得をめぐる公文書改竄事件――相次ぐ大企業の不祥事・経営危機や、国家を揺るがす事態の裏側には、ある病巣があった。
ソニーのカンパニープレジデントや、グーグル日本法人元社長を経て独立起業した実業家・辻野晃一郎氏と佐高信氏の新刊『日本再興のカギを握る「ソニーのDNA」』では、組織に従順で挑戦しないものが出世し、「個」を大事にしない日本型大企業や現政権の問題について鋭く斬り込んでいく。

「戦争で儲ける国にしないために」

佐高さんと知り合うきっかけになったのは、『週刊文春』の連載だ。2014年10月から2016年12月までの2年ほど、私は週刊文春にビジネス連載を持っていた。

安保法制はじめ、安倍政権が次々と強引に進める施策と、それにただ迎合するだけの経済界に強い失望と危機感を覚え、警鐘を鳴らす意味で、同誌の2015年10月1日号の連載に「戦争で儲ける国にしないために」というタイトルの寄稿を行った。

その中で、佐高さんがテレビ番組で言及されていた中山素平など、平和主義を貫いた戦後の経済人の話を引用させていただいたのだが、それが縁となって佐高さんと知り合うことになり、以来、親しくさせていただいている。

佐高さんと私のバックグラウンドはまるで違うが、「反戦」「平和主義」ということにおいては完全に一致している。

 

私は、1984年4月に新卒でソニーに入社した。以来、20年余にわたって、同社で働くことは自分の生き甲斐であり人生そのものであった。

しかし、2006年3月に同社を退社し、翌年4月から米グーグルに転じた後、2010年10月には自分で独立起業した。

すなわち、私自身は、ソニー、グーグル、自分が創業したベンチャーという3つのまったく異なるステージを通じて世の中に関わり、グローバルビジネスの世界に身を置いてきた立場だ。

辻野晃一郎

私が全力疾走で駆け抜けたかつてのソニーという会社は、今の時代でいえばグーグルやアップルを凌ぐほどの勢いを持つ、まさに日本の珠玉ともいうべき誇らしくて偉大な会社だった。

井深大と盛田昭夫という傑出した二人の創業者に率いられた個性豊かなエンジニアたちが、チャレンジを厭わず、困難から逃げず、数々の革新的な家電を生み出し続けて世界を席巻した。

そして何より、井深大は、中山素平などと並んで平和主義を貫いた戦後経済人の代表格でもあった。佐高さんは、かつて井深にインタビューしたときに、「アメリカのエレクトロニクスは軍需によってスポイルされる」と井深が言い切ったことが忘れられない、という。

そんなソニーを辞めた時、私は深い失意の中にあって、同社の将来に対する悲観的な見通しを禁じ得なかった。

創業者が二人とも亡くなり、ソニーがソニーでなくなっていく過程に翻弄されながら、なんとかソニーをソニーであらしめようと奮闘したが、結局自分の無力さを思い知らされただけだった。

当時の挫折感は今でもまだ時おり古傷のように痛む。

しかしながら、ソニーを辞めたことによってはっきりと見えた光景がある。

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