【ネタバレあり】『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』レビュー

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【ネタバレあり】『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』レビュー
Image: ©Marvel Studios 2018

本日ついに公開された『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』。もうご覧になりましたか? まだという人はすぐにこのページを閉じて、映画を見てからこれを読んでいただきたい。

今回のレビューは、ガッツリ内容に踏み込んだものとなっています。あくまで見た人向けの内容ですので、今作の続編への展開を含め、ネタバレありで書いていきます

繰り返しになりますがネタバレがある内容ですので、まだ見ていないという人はマジですぐさまこのページを閉じ、できる限り早く映画をご覧ください


いやぁ『インフィニティ・ウォー』は言われていた通りのデカい映画でしたね。物語、戦闘シーン、ヴィランのサノスどれをとってもすべてがデカい! 以下、登場キャラクター、アクション、ストーリーにわけて振り返ります。

登場キャラクター

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Image: ©Marvel Studios 2018

まずひたすらにデカいヴィランのサノスは、この映画に出てくる多数のキャラクターの中でも最高の出来。MCU10年の歴史の中で暗躍を続けたヴィランが、理解できなくもないが残酷すぎる壮大な目的を元に動いていたということが明らかになりました。その心の狂った部分だけでなく弱い部分もすべて描かれ、恐ろしくもどこか惹かれる悪役で、まさに期待に応えた作り。ジョシュ・ブローリンの演技も本当に素晴らしい。

現実世界でも今まさに抱えている人口問題を銀河規模に広げて、サノスの原動力としながらも、あまりポリティカルだったり社会風刺性が強すぎたり説教臭かったりはしない、いい塩梅。またサノスもMCUで多用されてきたテンプレートを使ったキャラクターでしたね。

ちなみにコミックでのサノスは、死神「デス」に恋をし、愛情表現としての「死」を起こすべくインフィニティ・ガントレットで世界の半分を滅ぼすというキャラ。だったのですが、映画ではその恋の要素は抑えながらも、サノスの養女であるガモーラの育ての親としてある種の愛を注いでいたという設定で、コミックの要素を活かしていて上手かった。

ただ、そんな強烈なヴィランであるサノスを際立たせるためか、手下である悪の軍団ブラック・オーダーはテレキネシス使いの「エボニーマウ」を除くと、ヒーローとのやり取りが少ないのもあって、あまり印象に残らないキャラとなっていました。個人的には活躍を期待していただけに残念なところ。次回作ではもうちょっと見せて欲しいですね。

また『ガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシー』の面々が初めてジェームズ・ガン監督以外の人物の手で映像化されることに若干の不安はありましたが、ルッソ兄弟の作品の中でもガーディアンズの奇妙さと面白さは健在で、まったくの杞憂に終わりました。

とくに最近、緩やかな昔の姿に戻りつつあるクリス・プラットの体型に関するジョークがあったのは面白かったところ(正直、今ぐらい丸みがある方がキャラ性に合っている気もするし、可愛げがでてていいと思うんですけどね)。どれくらいルッソ兄弟がジェームズ・ガン監督と協力して作ったのかはまだわかりませんが、だいぶガン監督風味だったと思います。

ガーディアンズとソーを始め、初対面となるヒーローたちのやり取りがなにより今回の楽しいところ。「私はグルート」に対する「私はスティーブ・ロジャース」は可愛すぎたし、いろいろな面で似た者同士である髭面仲間のアイアンマンとドクター・ストレンジのやりとりは今後ももっと見たい

アクション

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Image: ©Marvel Studios 2018

アクション面でもクロスオーバー作品ならではの面白さが活きていて、いろんなヒーローたちが共に繰り出すコンビ技がかなりの見所。特に物語の主要キャラでもあるドクター・ストレンジは、単独映画よりも成長した設定だからかとにかく技のバリエーションが豊富で、彼が出した魔法陣(?)をピョンピョン飛んで移動するスター・ロードとか、ウィンター・ソルジャーがロケットを持って戦うシーンとか、コミックでもあんまり見ないような独特の組み合わせが最高でした。

またアクションのスケールもとにかくデカい。後半にあったサノスの「アウトライダー」たちが雪崩のように襲いかかってくるワカンダでの戦いは圧巻だし、ハルクvsサノスのデカキャラ対決では、いつもパワーで押し切ってきたハルクに対し、サノスはパワーだけではなくスピードや技でも圧倒する形で格の違いを見せる。短いながら印象的なシーンとなっていましたね。

その一方で、最強ヒーローが揃った銀河の存亡をかけた戦いということもあってか、乱戦になると大ジャンプを多用するド派手なスタイルが主体となり、マーシャルアーツ系のアクションは少なく、射撃・格闘系が主体のキャラ(キャプテン・アメリカ、ブラックパンサー等)はそれぞれの特徴があまり出てなくて、全体的にアクションの味が似ているのがどうしても気になりました。

正直なところ、同じルッソ兄弟の『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』のような、タイトでスリリングな駆け引きのあるアクションがどうしても見たいと思ってしまったのは私だけではないはず。それだけ『ウィンター・ソルジャー』のアクションがカッコ良すぎたんだ……。

ストーリー

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Image: ©Marvel Studios 2018

アクションにも負けずストーリーで描かれる出来事もスケールがいちいちデカい。その最たる例が、ソーが新たな武器を手に入れるためドワーフの住む惑星を訪れる展開。

そこはとんでもないサイズの鍛冶場があって、ドワーフなのにデカい奴……というかデカいティリオン(今作でドワーフのエイトリを演じているピーター・ディンクレッジの『ゲーム・オブ・スローンズ』でのキャラクター)が住んでいて、彼の協力を得てソーが凄まじい機械を動かして斧「ストームブレイカー」を完成させる流れは熱くて壮大

決して長いシーンではないのですが、ソーというキャラクターの物語が神話でありSFだから面白いということを改めて感じさせてくれる内容。またロケットが武器の制作を助け、反抗期のグルートが斧の柄として自らの腕を切って提供するという展開は、ソーとガーディアンズの新たな繋がりを生み出していて面白いところでした。

ちなみにコミックでのストームブレイカーは、ソーとの戦いの中でムジョルニアを持ち上げたエイリアンの戦士「ベータ・レイ・ビル」がその高潔さを認められ、オーディンによって彼に授けられたハンマー。その使い方を教えるシーンにもエイトリは登場しています。

なぜハンマーが斧に変わったのかといえば。実はソー・オーディンソンがムジョルニアを失うという展開はコミックにもあり、そのときにソーはかつてムジョルニアを手にする前に使っていた斧で戦っているので、おそらくそれがモデルになっているのでしょう。

さて映画に話を戻すと、いろんなデカいことがあった中でやはりなにより今作で最大の事件はとにかくキャラが死んで死んで死にまくること。サノスの養女ガモーラや、スパイダーマンを含め続編が決まっているキャラクターまでも消す展開。特に前半から中盤に起こるキャラクターの死は非常に悲しく、これからのMCUはどうなってしまうんだと不安と期待が一緒に高まる構造でした。

しかし、サノスがインフィニティ・ガントレットの能力を発動させて世界の半分を抹殺したときには、今後もMCUが続くことを知っているし、『ドラゴンボールZ』で育った世代としては「どうせ次の映画の最後でなんかすごい事が起こってある程度復活するんでしょ……」とちょっと冷めた目で見てしまったのも事実。

とはいえ、こんなにデカい映画を作り出したルッソ兄弟は本当にすごいとしか言いようがない。『シビル・ウォー』では、あそこまでたくさんのキャラクターをたくさん出して捌き切るルッソ兄弟の手腕に驚かされましたが、今回はそれ以上の数のキャラクターを登場させ、さらに地球だけでなく宇宙の様々な惑星を舞台にしながら、ちゃんとまとまりのある見やすい話にしているのはまさに匠の技。

また観客がMCUのファンであることを前提とした、ある程度「行間を読む」ことを必要とする作りであることもポイント。説明不足とも言われかねない編集のおかげてテンポもよく、これだけたくさんの要素を盛り込んだ映画でありながら、(普通の映画としては長いんだけど)2時間半にまとまっているのがすごい。大量にカットされたシーンがありそうな予感もしています。

結局『インフィニティ・ウォー』は面白いのか?

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Image: ©Marvel Studios 2018

今作は10周年に相応しい作品であり、期待にしっかりと応えてくれる一本。ファンでさえ、もしかしたら忘れてるかもしれない『キャプテン・アメリカ』第一作のラストで消えたレッド・スカルの行き先がついに明らかになるなど、「作品が繋がることで歴史が作られていくシリーズとしての面白さ」も改めて感じさせてくれました。これはまさにアメリカのヒーローもののコミックの面白さでもあるんです。

安易なクリフハンガー(「宙吊りのまま」終わる作劇手法)とは少し違う絶妙な形で迎えるエンディングも秀逸(おそらくコミックでサノスが農夫となる場面の再現に繋がるものだと思うんですが、果たして)。ポストクレジットではニック・フューリーが再び登場しただけでなく、『アントマン&ワスプ』の後に公開予定の『キャプテン・マーベル』のキャラクターロゴが謎の通信装置(?)に映るというところにはワクワクしました!

謎の装置がポケベル風なのは、おそらく映画が90年代を舞台にするからだと思うのですが、果たしてどんな映画で、あの装置がどういった経緯でフューリーの手に渡るのかがかなり楽しみです。

しかしながら、今作は前後編という作品の都合上結末が見られないので、とてもじゃないけど完全に満足とは決して言い切れないし、最終的な評価は下せません。またどうしてもMCUは10年という歴史の中で様々な素晴らしい作品を見せてくれたこともあり、今までの作品と比較してしまいどうしても細かいところが気になってしまいます。くわえて、みんなが大好きなキャラクターの死が悪く言えばかなりあっけなく描かれるので、『シビル・ウォー』以上にファンの意見はこれから大きく割れそう

映画としては本当に素晴らしいし、こんなものを生み出せてしまうMCUはまだまだ長く続きそうだなと感じさせてくれました。しかし、どうしても、続きが気になって気になってしょうがないので、『インフィニティ・ウォー』をついに観られた今は最高にハッピーかと聞かれると、答えに困る……そんな作品でした。

この後に続く(劇中内の時系列的には前になるはずの)『アントマン&ワスプ』は超楽しみではありがら、コミカルなシーンがあっても「しかしこのキャラクターのうち半分は、後でサノスに消されちまうんだよな」というイメージが頭をよぎってしまいそうなのがちょっと心配です。

映画『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』は現在公開中。その直接の続きとなる『アベンジャーズ4(タイトル未定)』は、アメリカで2019年5月3日公開予定。だいぶ時間がありますので、今のところはとりあえず『インフィニティ・ウォー』を改めて見て、今後の展開を考えてみてはいかがでしょうか。

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https://www.gizmodo.jp/2018/04/avengers-infinity-war-3.html


Image: ©Marvel Studios 2018
Source: 『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』公式サイト

傭兵ペンギン