メモ

「賢い人ほどより協力的であり、社会全体にもいい影響を与える」のか?


古代ギリシャの哲学者アリストテレスが「人間はポリス的な動物である」と唱えていた通り、人間は社会共同体を形成し、絶えず他者との関係上に存在していることが古来より指摘されていました。そして、賢い人間ほど社会的協調性が高く、所属する共同体にもいい影響を与えるという研究結果が、ニュースメディアのConversationで紹介されています。

How clever people help societies work together better
https://theconversation.com/how-clever-people-help-societies-work-together-better-93463


INTELLIGENCE, PERSONALITY AND GAINS FROM COOPERATION IN REPEATED INTERACTIONS
(PDFファイル)https://docs.google.com/viewer?a=v&pid=sites&srcid=ZGVmYXVsdGRvbWFpbnxhbmRpc3NvZmlhbm9zfGd4OjcxYWMwN2ExNzMwOGQ1YWE


人はさまざまな状況で助け合う社会的な動物です。多くの経済学者は「他人や社会的地位を気にすること」が社会を維持するための協調的な行動を生むと主張してきました。また、一方で「ルールを守り、共同体を尊重すること」が社会的に有用な行動を導くと主張する人もいます。さらに一部の経済学者は「知性を持って自分の利益を追求すること」こそ私たちが社会の一員になるために必要であると唱えています。


そこで、行動経済学者であるEugenio Protoさんらは、「人はなぜ協力しあうのか」を調べるため、792人を対象とした実験を行いました。被験者には事前にアンケートを受けさせ、それぞれ「社会的態度」「ルールの順守ぶり」「知性」を調査しました。そして、それぞれについて2つにグループ分けを行い、囚人のジレンマと呼ばれるゲームを行いました。

囚人のジレンマでは、「共同で1つの犯罪を行ったと考えられる囚人2人に自白させるために、検事が以下の司法取引をもちかける」という状況を想定します。

1. 2人が「協力」しあって黙秘したら、2人とも懲役2年となる。
2. 1人が「協力」して黙秘しても、もう1人が「裏切り」を選択して自白した場合、自白した囚人は釈放されるが、黙秘した方は懲役10年となる。
3. 2人とも「裏切り」を選択し自白した場合は、2人とも懲役5年となる

囚人のジレンマで重要なポイントは、2人とも「協力」を選択した方が刑罰は軽く済むにも関わらず、2人とも自己の利益だけを追求すると「裏切り」を選択してしまうため、結果的に刑罰は重くなってしまうという点です。

研究チームは自己の利益を追求する中で他人と協力することは可能なのかという問題を調べるため、囚人のジレンマにおける「釈放・懲役」に当たる部分を金銭の報酬に置き換え、さまざまなプレイヤーと組合せながら繰り返しゲームを行ったとのこと。

以下のグラフは、縦軸が協力した割合、横軸がゲームを繰り返した回数となっていて、青い線が一定よりも知能指数(IQ)が高い人が協力した割合、赤い線はIQが低い人の協力した割合を示したもの。全体的に知性が高い人ほど協力する割合が高いことが分かります。また、回数が少ない場合だと協力する割合はそれほど高くありませんが、ゲームを何度も繰り返すほど協力する割合が高くなっています。このことから、「知性の高い人は本質的には協調的ではないが、情報をより早く処理して学習した結果、協調的になっていく」ということが分かりました。一方で「社会的地位」「ルール順守性」で見たところ、協力した割合の違いは見られなかったとのこと。


さらに、知性の高い人は認知の優位性を利用して、他者を導くことが分かりました。以下のグラフは、知性ではなく性格でグループ分けを行い、その中でゲームを行った結果です。知性が高い人と一緒にゲームを繰り返していくうちに、赤い線の協力する割合も高くなっていることが分かります。


研究チームはこの結果から、「少数の賢い人が、同じグループや職場内の他人にも利益をもたらす」ことが示されていると結論づけています。また、知性が高い人は周囲にいい影響をあたえ、共同体全体に利益を与えるという研究結果から、「幼少からの教育は個人だけではなく社会全体に対しても重要であるともいえる」と主張しました。

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in メモ, Posted by log1i_yk

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