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OWとLoLから読み解く、日本でロール型(役割別)対戦ゲームが流行りにくい理由

(総文字数:約4500文字、記事を読み終えるのに必要な時間:約11分)

ロール型対戦ゲーム、というものがある。

というものがあると書くと、あたかも存在するような表現だけど、具体的にはこの言葉は私の造語で、チームプレイで行うゲームかつ各自に役割が定められているゲームのことを指す適切な言葉がないから使っている。

ロール型対戦ゲームとして具体的な名前を挙げるなら、OverwatchLeague of LegendDota2vaingloryあたりだろうか。

これらのゲームの特徴として、

・複数人でチームを組む必要がある
・一人で試合に勝てるような作りにはなっていない
・操作キャラクターごとに出来る行動に制限がある
・操作キャラクターごとに求められる役割がある
・勝利のために特定の役割が必須(推奨)となる

というのがある。

ここでは、Overwatch、League of Legendと、2017年に「ときど選手」が世界一になった格闘ゲーム業界を交えて、なぜ日本でロール型対戦ゲームが流行りにくいのかを考えてみたいと思う。

Overwatchにおけるロール(役割)とは

Overwatchを詳しく知らない人に説明をすると、OverwatchはFPS形式の対戦ゲームで、プレイヤーは6vs6で戦うことになる。

FPSが良くわからない場合は、「銃で撃ちあうゲーム」と思ってもらえれば大丈夫。

ここまでだとCS:GOやBFシリーズ、AVAなどと同じだが、Overwatchがそれらと明確に違う点として「何人もいる能力が異なるキャラクター(ヒーロー)を選べる」という点がある。

他のFPSにも「スナイパー」「マークスマン」「ポイントマン」「衛生兵」といった役割が存在するゲームもあるが、Overwatchにおいてはその役割が厳しく分かれており、かつ行動も制限されている。

例えば、Overwatchにラインハルトと呼ばれるキャラクターが存在する。

彼はFPSにおいては異例のキャラで、なんとメインの武器がハンマーなのだ。

…繰り返すが、Overwatchは銃で撃ちあうのが主体のゲームだ。

そんな中、彼は遠距離の通常攻撃が行えないハンマーを持って戦う。

「いやいや、そんなの銃とどうやって戦うんだよ」ってなると思うが、実はOverwatchではキャラクターごとにスキルを持っている。

ラインハルトのスキルは「自分の前に透明なシールドを展開する」というものだ。

このシールドは敵の攻撃を通さず、こちらの攻撃だけを通すため、ラインハルトがいるチームは一方的に敵を攻撃することができる。

勘の良い皆さまならわかると思うが、彼には「ハンマーで攻撃すること」ではなく、「盾を持って味方を守る」ことが求められている。

他にも、マーシーと呼ばれる味方の蘇生・回復が行えるキャラや、トレーサーと呼ばれる無敵のブリンク(要はワープ)を繰り返して敵に攻撃するキャラが存在する。

こうしてみると、キャラクターごとに個性が強くて面白いゲームなのだが、これは別の側面も持っている。

つまり、「使用するキャラクターごとに求められることが固定されている」のだ。

例えば、ラインハルトのデザインが大好きで、彼を愛用している場合、どんなにハンマーを振り回して敵を倒そうとしても、味方から言われる言葉は「なんでシールド貼らないの?」だ。

同じようにマーシーのデザインが大好きで、彼女を愛用している場合、彼女のメイン武器であるピストル※で敵と正面から戦っていると、味方から言われる言葉は「このマーシー回復してくれない」だ。
※実はDPSが高く、ちゃんと頭に当てられたら強い武器ではある。

どんなに、そのキャラクターが好きであっても、「そのキャラクターが行える行為」と「そのキャラクターに求められるもの」があらかじめ決まっている、というのがロール型対戦ゲームであるOverwatchの特徴の一つになる。

League of Legend(Dota2)におけるロール(役割)とは

League of Legendは、もともとDotAと呼ばれるゲームから派生しており、一般的にMOBA(Multiplayer online battle arena)と呼ばれるゲームスタイルになっている。

PCゲームに詳しくなくてスマホゲームに詳しい場合、vaingloryのようなゲームと言えば伝わるだろうか。

League of Legendは、Overwatchのように役割が明確に定められており、ダメージを受けるタンク・ダメージを出すアタッカー(キャリー)・味方をサポートするサポートに分かれている。
※細かく分類するとアサシンとかファイターとかもあるがここでは省略する。

特にLeague of Legendの場合、キャラクター数の多さもさることながら、びっくりするくらいキャラクターバランスが整っており、ダメージを出しやすいキャラクターは逃げ性能が低い(ジンクスとかコグマウとか)、タンクは硬いが瞬発的な機動力が低い(サイオンとかDr.ムンドーとか)など、強い点と弱い点がしっかりと定められており、何でもできるキャラクターというのは存在しない。

また、MOBAと呼ばれるゲームの特徴としては、勝利条件が敵の撃破ではなく、タワーやネクサスなどと呼ばれる「設置物」の破壊が条件となっている。

極論、敵を一人も倒さずとも設置物の破壊が行えればそのチームの勝利になる。

その際、この設置物というのが各自のキャラクターの10倍くらい強い存在となっており、かつこちらに攻撃もしてくるため、敵の相手もしつつ一人で全部壊す、といったことは非常に厳しい設計になっている。

そのため、必然的に「タンク」がダメージを受け、その間に「アタッカー」が設置物を攻撃し、そのアタッカーを支援する「サポート」が必須となる。

当然、敵も設置物を攻撃されて黙っているだけではないので、負けじと相手の設置物に攻撃をしかけたり、味方の設置物を守るために様々な動きを行うことになる。

良くも悪くも、半ば半強制的にチームプレイを強いているのが、MOBAの特徴の一つになる。

これらのロール型ゲーム共通することは、以下の点になる。

・複数人でチームを組む必要がある
・一人で試合に勝てるような作りにはなっていない
・操作キャラクターごとに出来る行動に制限がある
・操作キャラクターごとに求められる役割がある
・勝利のために特定の役割が必須(推奨)となる

この中でも最後の「勝利のために特定の役割(推奨)が必須となる」という点が、日本でロール型ゲームが流行らない理由の一つだと思っている。

なぜかというと、日本全体の教育って就活とかを見るとわかるように「個性を持たずに汎用的な人になる」ってことを求められている。

大学に入り、会社に入り、結婚し、そして老いて死ぬ、という一般的な道筋が美徳だと教育されていた時代は確実に存在しており、今でもまだその風習は残っている気がする。

そういった点から見ると、「集団において、個人個人が特定の役割を担う」ということに日本人は慣れていないのではないだろうか。

また、日本は格闘ゲームが強いと言われており、2017年にはストリートファイターにおけるプロゲーマー、ときど選手がEVOという国際大会で優勝※したこともある。

なぜ「ときど優勝」で格ゲーマーは泣いたのか 東大卒プロゲーマーの情熱と“友情、努力、勝利” (1/3) - ねとらぼ

日本が格闘ゲームに強い理由を考えても、以下の条件から見るとOverwatchやLeague of Legendと異なっている。

OverwatchやLeague of Legend
・複数人でチームを組む必要がある
・一人で試合に勝てるような作りにはなっていない
・操作キャラクターごとに出来る行動に制限がある
・操作キャラクターごとに求められる役割がある
・勝利のために特定の役割が必須(推奨)となる

格闘ゲーム
・複数人でチームを組まない
・一人で試合に勝てるような作りになっている
・操作キャラクターごとに個性がある
・操作キャラクターごとに役割がない
・勝利のために特定の役割が必須(推奨)ではない

また、格闘ゲーム以外にも日本で今流行っているゲームに「PUBG(PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS)」や「Fortnite」がある。

これらのゲームは「バトルロワイヤル形式」という、新しいゲームスタイルなのも影響していると思うが、格闘ゲームと同じで、チームを組んで戦うことはあっても、特定の役割を強いられることはない。

これらのことを考えると、やはり日本人は「キャラクターごとに役割が決められいて、勝利のために特定の役割が必須(推奨)となる」ゲーム自体が苦手なのではないだろうか。

また、「特定の役割が必須」になるということを言い換えると、「勝利・敗北」に対して責任が発生し、明確な批判ができてしまうことになる。

例)
タンクが居ないから負けた
ヒーラーが回復しないから負けた
アタッカーが弱すぎて負けた

格闘ゲームやPUBG、Fortniteの場合「勝利・敗北」に対する考えは単純で、自分が強ければ勝つし、自分が弱ければ負ける、ただそれだけのことになる。

そこに対して「味方が」とか「タンクが」とかいう役割は関係してこない

今回の考えをまとめると、日本がOverwatchやLeague of Legendなどのロール型対戦ゲームが流行りにくい理由は以下ではないだろうか。

①ロール型対戦ゲームは、個人個人に特定の役割を担わせて、勝利に対する責任を持たせる。

②そのため、没個性を良しとされていた日本人にとって、不慣れなこと(役割を担う)を強いられることになる。

③また、勝利に対して責任を持たされるので「楽しみたい勢」と「勝ちたい勢」が同じチームで混合すると目的のズレが発生する。

④しかし、「楽しみたい勢」と「勝ちたい勢」が明確に住み分け出来るほど、日本のゲーム人口が多くないため、日本においてロール型対戦ゲームは流行りにくい。

まとめ

逆に、アメリカや韓国などでロール型対戦ゲームが流行り続けている理由は何なんだろうか。

もしかしたら、彼らの環境は「人生とは他者を蹴落として勝つ」ことを良しとされ続けていることで、それがゲームおいてもチームの勝利に対するモチベーションの向上につながっているのではないだろうか。
※PCゲーマーの人口の多さも大いに影響していると思う。

試合に負けて「次こそは!」となるのか、「萎える」のか、その人の個性なのか国民性なのかはわからないが、少なくとも日本におけるゲームの流行り・廃りの参考になるのではないのかなと思った次第。

とはいえ、ロール型対戦ゲームはすごく楽しいのでもっと流行ってほしいですね。

執筆:Rainbee

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