壁全体をタッチスクリーンのようなセンサーにしてしまう研究「Wall++」

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壁全体をタッチスクリーンのようなセンサーにしてしまう研究「Wall++」
Image: Future Interfaces Group/YouTube

家そのものをスマートホームにすることも可能!?

建物には必ずといって良いほどがあります。その壁は部屋を区切るとか、内部に電線を這わせるくらいしか役目がないのが現状。でもただ立たせておくだけだなんてモッタイナイ!

てなわけで、そこに目をつけたカーネギーメロン大学の学生とディズニー・リサーチが、壁をタッチスクリーンのようなセンサーにしてしまう「Wall++」の研究をしています。

これを設置することで、たとえば壁を触るだけで家の電気をオン/オフするといったことが可能になっちゃいます。

Video: Future Interfaces Group/YouTube

その精度は壁に触る前からセンサーが手の動きを検知するほどの高性能で、タッチした時や任意の方向にスワイプした時、または複数の手が壁に触れた時もバッチリ認識しています。

ほかにもこの壁は、ドライヤーやドリルなど家電から発生するノイズを拾うアンテナにもなります。何の家電によるノイズなのかも波長から判断でき、これまた複数の家電を個別に検知するのです。1m四方で20ドル(約2,200円)程度しかコストがかからないというのも魅力的ですよね。

研究発表に用いられたPDFには、この仕組みが事細かく書かれています。

壁の「Wall++」化は、まず導電性の高いニッケル系のペンキで菱形の升目をビッシリ描き、そこに銅のテープを縦軸と横軸へと格子のように張り巡らせて升目を繋ぎます。そしてラテックス塗料で壁を白くコーティングし、壁の電極をカスタム・メイドの回路基板に繋ぎ、そこからモニタリング用のコンピューターに繋ぎます。あとはコンピューターが、升目が拾う電磁波をグリッドとして扱い、手脚の角度や長さを演算処理し、モニターに表示してくれるのです。

升目は電磁波を拾う帆のようなイメージで、テープは升目を繋ぐ電線の役割ですね。縦と横というのがけっこう大事で、横軸だけだと電磁波を受信するモードになり、縦横同時に使うと人間の動きを捉えるニュートラル・モードに切り替わることができます。

簡単にいうとこの研究は、壁全部を巨大な電磁波アンテナにしてしまうってことなのですが……ここに辿り着くまでが大変でした。塗料も塗り方もテープも、さらには升目の形状や大きさや間隔なども、多種多様な素材で効果と相性の検証を重ねてきたのです。それに見た目は白い壁ですし、ものすっごい地味なテクノロジーです。

しかしこれ、我々の生活を一転させてしまう可能性を秘めていると思うんですよね。この技術が発達すれば、一人暮らしのお年寄りの生存確認もできるでしょうし、Kinectのようにジェスチャーで家電やスマートフォンを操作することも可能になるかもしれません。当然ゲームや教育の場においても応用が効きそうです。


Image:YouTube
Source: YouTube via Yang Zhang, WallSense_V44_CH

岡本玄介