人工の造形が水中生物をもっと魅力的に! すみだ水族館の「waterscape 水の中の風景」に行ってきた

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人工の造形が水中生物をもっと魅力的に! すみだ水族館の「waterscape 水の中の風景」に行ってきた
Photo: 中川真知子

動物が大好きで国内外の動物園、水族館、ファームをおとずれる私が、東京スカイツリーのふもとに位置するすみだ水族館で「水中で生息する生物たちの生態環境をゼロから探り直してみる」プロジェクトを見られるとの情報をキャッチ。GW直前の4月27日展示開始ということで、早速足を運んできました。

そこで目にしたのは、人工の造形を使った新しいアクアリウムの可能性でした。

生き物の新たな魅力を人の力で引き出す水槽

waterscape 水の中の風景」では、キューブ型水槽のなかに「浮く」と「沈む」を人工的に設計し、生き物の生態を見せています。

たとえば、トップ画像の「水の中の温室・気球型」は、ドーム状の部分が温室になっていて、内部の水草が元気に育つんです。

水のなかに空間というギャップと、お腹が減るとドーム型温室に入って水草を食べるプラティのかわいさが楽しめる完成された美がありました。

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Photo: 中川真知子

水中ジャングルジムな「泡のゾーニング」にはアカヒレしか入っていませんが、大小の魚を入れることで、小さい魚が上角の小さい空間に行き、大きめな魚が大きな空間に行き、といった住みわけを楽しめるようになるのだとか。

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Photo: 中川真知子

四方の面から異なる表情をたのしめるのが「開口のある境界膜」。遮る板の穴から魚が見えたときのちょっとした感動は、雑踏に好きな人を見つけたときの喜びに似てたかも。

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Photo: 中川真知子

見れば見るほど不思議だったのが「水上の水中・マッシュルーム型」です。水面は低く、突き出た球体のなかは水で満たされていて水草が生えていました。

数学や物理が得意な人ならわかるのかもしれませんが、単なる映画好き、動物好きのわたしには、なぜこの球体の水と下の水が均一にならないのかと頭の中が「?」だらけに。

球体に入ったプラティとハニードワーフグラミーは虫眼鏡効果で拡大され、細部まで観察できるようになります。グラミーのゴールドのラインが入った鱗がはっきりと見えたときにはテンションがあがりましたね。

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Photo: 中川真知子

わたしが最も楽しみにしていたのが「浮く島、沈む島」です。

猫タワーならぬ亀タワーで、亀がアクティブに不安定な浮島のうえを目指してよっこいしょ。頂上にいったら大好きな甲羅干しのご褒美、という亀と見る人をエンターテインしてくれる一品。

国内外の動物園、水族館で亀の展示を見てきましたが、大きさや数で来場者を圧倒させることはあれど、小さな亀1匹でここまで見る人を飽きさせなかったのは初めてでした。

これは亀飼いがリアルに欲しがるアイテムではないでしょうか。是非とも商品化してほしいと思いました。

「waterscape 水の中の風景」ではこういった作品を8つ展示しています。本当ならすべて紹介したいのですが、実際にご自分の目で発見と感動を楽しんでもらいたいのでここら辺で。…「水上の水中・ドーム型」のアオウキクサの繊細さと白い砂に映る遠慮がちな影模様の美しさを写真とともにとことん語りたいのは山々なんですが!

ここまで読んで、すみだ水族館に興味を持ったけれど場所が遠い、入場料がちょっと高い、と思った方(これまでのわたし)にさらなる魅力をお伝えしましょう。小規模ですが、充実しまくりなんです。わたしはすっかりファンになりました。

生き物をもっと好きになる方法を教えてくれる水族館

・ステレオタイプを捨てて

実際に行った感想ですが、すみだ水族館は「気づきと学び」に溢れています。個々の水槽に生態の説明文はなく、じっくり観察して生き物の習性や特徴に気づいてもらうスタンスをとっています。プロの写真家で水景クリエイターだった天野尚さんがデザインした水槽はどれも細部から余白のバランスまで演出された芸術です。背景に合わせた魚のチョイスがこれまた絶妙。わたし大きな魚、珍しい魚を飼育したいと考えていましたが、この水族館でアクアリウムは全体のバランスが大切であることを思い知らされました(カージナルテトラ、入門編魚と軽視してて本当にゴメン)。

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Photo: 中川真知子

有名なチンアナゴの展示では目線が下に向かうようになっています。ここに同居しているのは苔むした小石みたいなマガキガイと変形チンアナゴのようなヘコアユ。普段スポットライトが当たりにくいマガキガイは、よく観察するとチンアナゴたちとちょっとしたアクシデントを起こしたりしてその天然ボケっぷり(失礼)に萌え。チンアナゴを見にきたのに、いつのまにかマガキガイのファンになってた、なんてこともありそう。逆さに泳ぐことで知られるヘコアユは、チンアナゴと同居すると「間違って紛れちゃった」感が出てツッコミ対象に。3種類の異なる生物を一緒に展示することで得られるハーモニーによって個々へのイメージが変わりました。

・子ペンギンの存在が密かに語るもの

ちなみに今の時期注目したいのは、なんと言ってもペンギンの赤ちゃん! 「waterscape 水の中の風景」と同じ4月27日(金)から一般公開になったのですが、赤ちゃんらしい姿でいる時期はたった1カ月程度なんだとか。

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Photo: 中川真知子

展示の間、子ペンギンを見守るのは優しい飼育スタッフさんとマゼランペンギンのヌイグルミ

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Photo: 中川真知子

飼育スタッフは子ペンギンの一挙手一投足を観察しているわけですが、じゃあこのヌイグルミは…? これは大人ペンギンの姿に慣れさせておくためなんだとか。つまり、このヌイグルミは子ペンギンを騙せるほどクオリティが高いということになるのかも。これは ショップで要チェックですね。

すみだ水族館では毎年子ペンギンが生まれているそうですが、それって実はスゴいことなんです。というのも、交尾、産卵はペンギンにとっても大イベント。心身ともにリラックスした状態じゃないと挑めません。ペンギンエリアを見ればわかりますが、横に広ーいんです。だからペンギンがスイーーーーーースイーーーーーー、バッシャン、バッシャン(跳ねる音!)と元気に泳ぐ姿を見れるんです。生き生きした姿に「ああ、そりゃ卵も産むよね」と思うことでしょう。

・金魚は上見

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Photo: 中川真知子

下町にある水族館らしく、金魚に力を入れた展示をしているのもすみだ水族館ならでは。ここでは上見の展示が多く見られたのですが、それには金魚と日本の秘密が隠されていました。

横型の水槽ができる前、江戸時代には桶などに金魚を入れていたので、その頃に作出された金魚はうえから見るのと特に美しさが際立つ品種が多いのだそうです。

広がった尾ひれに赤い頭、あふれんばかりのお目目はうえから眺めると本当に華やか。限られた環境で美しさを表現しようと改良を重ねたであろう昔の人たちの気持ちと喜びを垣間見た瞬間でした。


ちなみに、今回は取材ということで広報の方に説明を受けながら案内してもらったのですが(VIP待遇)、通常でも飼育スタッフにはどんどん質問して無問題だそうですよ。声をかけやすいようにオープンな設計にしてあるだけでなく、質問に応えるためのトレーニングも受けているんだとか。いろいろ聞いてみてくださいね!

テクノロジーで水中生物に一味違ったアプローチをかける「waterscape 水の中の風景」は、7月8日(日)までの展示です。そして、子ペンギンの愛らしい姿はこの時期のみ。是非GWに足を運んでみてください。


Image: 中川真知子
Source: すみだ水族館, PR Times

中川真知子