「パスタはすばらしい食品だ」ということを示す研究結果があったら、信じたくなるのはよくわかります。みんなパスタが大好きですから。私も好きです。あなただってきっとそうでしょう。

最近、パスタの研究を紹介する記事が話題になりました。その見出しはこんな感じです。「パスタを食べると痩せやすい:分析結果(USA Today)」、「パスタは食べても太らない──カナダ研究(Newsweek)」

ただし、こうした記事の元になった新しい論文の著者の1人、トロント大学准教授John Sievenpiper氏に、上記のような見出しについてどう思うかと尋ねてみたところ、「この研究の背景が置き去りにされているように思います」という答えでした。

この研究で実際にわかったのは、「低GI食(食後血糖値の上昇が穏やかな食品)を摂取している人が、少量のパスタを食事に取り入れても、体重増加にはつながらない」ということでした。Sievenpiper氏は、次のように述べています。

低GI食以外の健康的な食習慣でも、同じことが言えると思います。でもそれは、「あらゆる食習慣において、好きなだけパスタを食べても体重が増えない」ということではありません。

この論文は、新たに行われた実験の結果について書かれたものではなく、これまでに発表されてきた研究を分析したものです。パスタ単品の減量効果をテストした研究は見つかりませんでしたが、パスタを含む低GI食についての研究は複数行われていました。

グリセミック指数(GI)とは、炭水化物の多い特定の食品を取ることにより、血糖値がどれくらい上昇するかを示した値です。こちらのリストによれば、コーンフレークはGI値81で、インスタントのマッシュポテトは87です。一方、パスタは49です。思ったより低いと思いませんか?

今回の分析により明らかになった事実は、パスタを1週間通して少しずつ食べても(1回に半カップずつ、週3回)、それだけで低GI食を台なしにすることはない、ということです。驚くほどの内容ではありませんよね。Sievenpiper氏に、特定の食品を対象としたこの種の研究で、「この食品を食べると、健康な食事の効果を台なしにしてしまう」という結論になったものはあるか聞いてみたところ、そのような例は思い浮かばないという答えでした。

なぜ、さほど報道価値のない研究結果がニュースになるのか

公平を期すために言うと、どんな論文であれ、科学雑誌に発表されるときは、たいていは、ニュースに値する新しい知見が得られています。今回の研究はカナダの研究チームが、健康な食事における特定の食品の役割を分析しようと試みたものでした。Sievenpiper氏の研究チームは、ほかにナッツ類と豆類についても同様の研究を行ったそうです。特にパスタは悪者扱いされているので、パスタが減量に特別な影響があるかどうかを研究する価値はあったわけです。

ただし、毎年、何千本もの論文が発表されますが、私たちがそれを耳にすることはありません(「豆類が心血管系リスクを下げる」というこちらの研究結果が話題になった記憶なんてないですよね?)。論文が世に出てメディアが熱狂するまでには、さらにステップがいくつかあります。中でももっとも大きなものの1つが、プレスリリースです。

今回のケースで多くの記者が目にしたのは、カナダのトロントにあるセントマイケルズ病院が発表したこちらのプレスリリースです。論文の執筆者数名が、この病院に勤務しています。標準的なニュースサイクルの一環として、自分のところの研究者が報道に値しそうな論文を発表した場合、病院や大学などの機関は報道機関に知らせます。プレスリリースはあらかじめ用意された記事で、それをそのまま流す報道機関もあれば、それを元にして自分たちで記事を書く報道機関もあります。

パスタメーカーも協力していた

しかし、今回この研究が話題になった理由はそれだけではありません。PR会社エデルマンの担当者によれば、パスタメーカーのバリラも、この研究の情報発信をサポートしていたようです。エデルマンの担当者は、この研究が発表される2~3日前に、私に対して、「低GI食とパスタの関係について、栄養士に話を聞いてみませんか?」と尋ねるメールを送ってきました。最初のメールには、バリラの名前はどこにもありませんでした。企業が自社ブランドに利益をもたらす研究を宣伝したいときに、最近よく使うパターンです。

バリラは今回の研究に出資はしていませんが、分析を行なったいくつかの試験を、おもにパスタの無料提供という形で支援していました。Sievenpiper氏は、「研究者と企業は連絡を取り合っていることが多く、パスタに関する新しい論文が出ることは、バリラの社員に対して連絡していました」と語ってくれました。

結論はこういうことです。少量のパスタを健康な食事に組み込んでも効果が損ねられることはありません。ただそれは、驚くような知識でもないでしょう。


Image: Rosmarie Voegtli/Flickr

Source: USA Today, Newsweek, BMJ, Harvard Health Publishing, NCBI, St. Michael's, Science Daily, Popular Science, Edelman

Beth Skwarecki - Lifehacker US[原文