Flipboardが考えたフェイクニュースへの処方箋は、目利きによる「キュレーション」の強化だった

月間アクティヴユーザー1億人を誇るニュースアグリゲーションサーヴィス「Flipboard」。フェイクニュースへの対策として彼らが考えたのは、ニュースにもっとキュレーションを加えることだ。4月末に追加された新機能の数々で、彼らはニュースをどう変えようとしているのか。
Flipboardが考えたフェイクニュースへの処方箋は、目利きによる「キュレーション」の強化だった
IMAGE BY HOTLITTLEPOTATO

フェイクニュースは、本物のニュースからほど遠い存在だ。しかしここ数年、フェイクニュースはソーシャルメディアやニュースサイトなどに新たな居場所を見つけている。

当然のことだろうが、人々のニュースへの信頼も過去最高とは言えない状態だ。とはいえ、少なくとも米国の人々は、いままでよりニュースに注意を払っている。2017年にピュー研究所が発表した報告書によると、ニュースを「頻繁に追っている」と回答した米国人は16年よりも多かったという

信頼できるニュースソースを推す

ニュースを読む人が増えている──。世界各国に1億人の月間アクティヴユーザーをもつニュースアグリゲーションアプリ「Flipboard(フリップボード))」のクリエイターたちも、同じことに気がついたようだ。17年夏以来、Flipboardのエンゲージメント数は、「フリップ」(ページをめくる動作)の数とアプリの滞在時間の両方で倍増している。

しかし、Flipboardに厄介なフェイクニュースへの免疫はない。Flipboardのエディトリアル・ディレクターであるジョシュ・クイトナーは、フェイクニュースについて「うるさくて、地獄のようなバベルの塔で暮らしているよう。同じイデオロギー上の言語を話す人はおらず、それぞれが暴力にも近い意見の衝突下にいる」と書いている

IMAGE COURTESY OF FLIPBOARD

こうしたことを踏まえて、Flipboardは人間の手によるキュレーションに「倍賭け」することにした。

18年4月24日、Flipboardはアプリとウェブサイトをアップデートし、信頼できるニュースソースを推しだす機能を追加したのだ。新しい機能はトップエディターたちによる本の紹介から、週刊のニュースレター、グループ内でプライヴェートのマガジン(雑誌)を制作する機能まで、多種多様である。

手始めは「テック分野」

Flipboardが手始めに着手するのは、ユーザーにいちばん人気のセクション「テックニュース」だ。

毎週月曜日、Flipboardは同社が選んだテックの専門家やエディターによるおすすめ書籍を掲載する(『WIRED』US版編集長のニコラス・トンプソンもそのひとりだ)。同アプリでは、メディアによるまとめ記事を見ることもできる。

ウェブサイト上のテクノロジーセクションも一新される。密度高めの新しいレイアウトは、不思議なほど従来の新聞のレイアウトによく似ている。

同社はまた、グループ内で新着記事をシェアできる「チームマガジン」という新機能も推している。以前から個人ユーザーが自分の雑誌を作成することはできたが、この新機能は「ユーザーは他人よりも、同僚や仲間たちが集めた記事のほうを信頼するのではないか(あるいは単に読むのではないか)」というアイデアを活用したものだ。

アップデートには、Flipboardのコマースへの一押しも加えられている。Flipboardの「ショッピング」セクションには以前から「購入(Buy)」ボタンがあったが、これまでアプリを製品カタログにしようとはしてこなかった。

今回新たに登場したお薦め書籍にはAmazon.comへのリンクが加えられ、「購入(Buy)」ボタンは「アプリやギア、ガジェットや製品にも拡張されることになる」と、Flipboardの共同創業者で最高経営責任者(CEO)のマイク・マッキューは言う。

購読サーヴィス参入が報じられたアップル

テック通のためにテックニュースを集めるというアイデアは、フェイクニュースの問題に対する魔法の解決策だとは思えない。しかしマッキューたちいわく、テクノロジーはあくまで手始めに取りかかる分野にすぎないという。対応分野はこれから広がっていく予定であり、ヘルスケアは拡張の対象として何度か挙がっている。

Flipboardによるキュレーションニュースへの取り組みの一方で、アップルもニュース購読サーヴィスのローンチを計画していると報じられている。同社はデジタル雑誌購読サーヴィスのTextureを買収したばかりだ。

「高い目標」を設定しているアップルは、Flipboardにとってのモチヴェイションでしかないとマッキューは言う。「Flipboardは多数の競合がいるなかで成長してきました。アップルの存在は、ミッションを忘れるなというリマインダーでしかないのです」

ミッションというのは、マッキューがよく言う「メディアとしての価値をもつテック企業」というステータスの維持なのだろう。

Flipboardのアプローチは、ツイッターやフェイスブックといった巨大企業たちがとるそれとはまったく違うものだ。「テック企業たちは、ニュースへの判断が加わるのを避けるハンズオフなアプローチをとることが多いのです。しかしわれわれは、人々がニュースへの判断を提供できる環境をつくりたいと思っています」


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TEXT BY LAUREN GOODE

TRANSLATION BY ASUKA KAWANABE