子どものころ、こんなテストを受けたことはありませんか?

「猫」という単語を見たら、あなたがするのは次のどれですか?

  • 頭の中に猫の絵を思い浮かべる
  • 「猫」という単語を発音してみる
  • 自分が猫を撫でているところを想像する

この質問の回答を見れば、あなたの「学習スタイル」と呼ばれるものがわかります。あなたの「学習スタイル」は、視覚、聴覚、触覚のどれを使うスタイルだと判定されたでしょうか。

学習スタイルの根拠はなし

このときついたラベルはその後いたるところについてまわります。学校の先生はこのラベルに沿ってすべての授業を行います。もしかしたら、クラスをこの3つの「学習スタイル」でグループ分けするかもしれません。たとえば、惑星のことを学ぶとき、視覚で学習するグループはスライドを見る、聴覚で学習するグループは歌を聞く、触覚で学習するグループはさまざまなサイズのボールを手に取ってみるというやり方で学習することになります。

上記の3つの学習スタイルのどれに子どもが当てはまるか把握して、その学習スタイルで教えると学習効果が高いと考えられていました。この考えは現在でも根強く信じられています。

しかし、「学習スタイル」の概念を裏付ける実際の根拠はほとんどなく、多くの研究が、それは壮大な神話であることを実証しています。これは、多くの人には受け入れがたい見解です。どんなに多くの研究が否定しても、自分にあった「学習スタイル」として認識された方法で勉強したら学習効率が高かったと感じるからです。直近の調査はインディアナ大学医学部のPolly HusmannさんとValerie Dean O’Loughlinさんの共同研究で、数百人の学生に最も知名度の高いeラーニング形式のサーベイの1つであるVARKサーベイに回答させています。被験者が自分に該当する「学習スタイル」を決めると、そのスタイルに合った方法で学習を行いました(例えば、視覚を使う「学習スタイル」なら、記憶から自分が書いたメモのページを引き出します)。

HusmannさんとDeanさんは、ほとんどの学生が自分に適していると想定される学習スタイルを用いてもうまく学習できないばかりか、学校の勉強も成果が出ないことを発見しました。「私は視覚を使って学習するタイプだから、○○を勉強するのには向いていないなどとは誰も言えない」という結論にこの2人の研究者は至りました。

学習スタイルに固執するべきではない

もちろん、能力は学生によって異なります。これに議論の余地はありません。心理学の教授で、「学習スタイル」など存在しないと長年主張しているDaniel Willinghamさんが、この動画で説明をしているように、確かに視覚的に記憶することが得意な人もいれば、耳から学習するほうが得意な人もいます。

しかし、「それは教える立場の人たちにとってそれほど重要なことではありません」と彼は言います。教える内容に応じて適切な教え方を決めていくべきです。「アルジェリアの形を教えるときに、耳で聞く方法は使わないでしょう」とWillinghamさんは言います。

その場合は誰でも目で見る必要があります。

誰でも言葉を使って考えたり視覚的なイメージを使って考えたりできるのです。教師や親ができることは、子どもがどのスキルをいつ使うべきか気づくのを手助けすることです。

たとえ、子どもがある特定の方法で教えてもらうことが好きで、それにより自信をつけることがある場合でも、「学習スタイル」に固執するとどのような問題が生じるのでしょうか。情報サイトWiredのChristian Jarrettさんが『50 Great Myths of Popular Psychology』という本で次のように指摘しています。

教師がこのアプローチを取ると、生徒の強いところばかり伸ばしてしまい、弱点が矯正されることも補われることもないまま避けて通ってしまう点です。また、生徒に思い込みを与えてしまい、本来なら一生を通してさまざまな学習方法に適用していかなければならないはずなのに、異なる学習方法への適用力を失ってしまいます。

Willinghamさんは、「学習スタイル」がもたらす真の弊害は、「機会費用であることは明らかだ」と私に言いました。科学的根拠がないので、それは単に「授業計画をあれこれ練るために費やすことができたはずの時間とエネルギーが失われている」と彼は思っています。

では、どうしたらいいのでしょうか?

「学習スタイル」から脱却して本物の学習にしてく方法は以下の通りです。

1. 子どもには実践を通して教える

幸いにして、科学に裏付けられた教授法はたくさんあります。他人に教えることが一番の学習になることはわかっています。また、概念は実際の活動を通して頭に入ります。類似点を探すと原則を深く理解できます。子どもに考えるプロセスを熟考させるのも名案です(「どのようにしてこの結論に至ったの?」と聞いてみましょう)。

そして、学習の度合いを評価するときは、まず子どもの記憶だけを使って習ったことを再生させるようにしましょう。教科書もノートもGoogleも使わせてはいけません。また、身体を動かしながら学習すると、誰にでも効果があるようです。

2. 「学習スタイル」でなく教材に応じて教え方を変える

「学習スタイル」の代わりに、「生徒が教材の意味を把握するのを助けるには、どうするのがベストか」と自問して、授業の仕方を考えましょう。たとえば、子どもにフランス語の発音はどのような響きか理解してもらいたいときは、録音を聞かせましょう。地図を理解してもらいたいなら、実際の地図を子どもに与えてA地点からB地点に行かせてみましょう。

3. 子どもに思考のツールボックスを与える

教材はさまざまなやり方で教えましょう。『Frames of Mind: The Theory of Multiple Intelligences』の著者であるHoward Gardnerさんは、教授法を「複数にする」と効果的だとしています(彼は「多重知能」は「学習スタイル」とは別のものだと主張しています)。

「教材を多様な方法で教えると、何かをしっかり理解するとはどういうことかが伝わります」と彼はワシントンポスト紙に書いています。思考する方法が詰まったツールボックスを生徒に与えると、生徒は何を学ぶときもそこから必要なものを引き出せます。

まだ脳が発達途中にある幼い子どもたちの場合、親は子どもができるだけ多くの種類の人、状況、話題、学習方法に接するようにすべきだと、最近の研究の共同著者であるHusmann博士は言います。

最近の研究で、より多くの学習方法を試すほど、学習到達度が高くなることがわかっています。

4. 子どもによって違いがあることを認識する

「学習スタイル」にとらわれた教え方はしないほうがいいと言っても、誰にでもあう教授法が唯一無二のものとして存在しているわけではありません。子どもはみんな違うので、先生も親もこの違いに気を配るべきです。外交的なタイプと内向的なタイプでは情報処理の仕方が違いますし、学習をはじめたばかりなら事例を勉強すると学習が進み、専門知識があるなら自分で問題を解決すると学習効果があがります

しかし、「学習スタイル」に関しては、これを採用すべきという科学的根拠が今のところはありません。ですから、Willinghamさんが書いているように、「科学者たちが相当確信している理論を使うことは理に適っているのではないでしょうか。


Image: wavebreakmedia/Shutterstock.com

Source: NCBI, Digest, Wiley Online Library, Vark Learn

Michelle Woo – Lifehacker US [原文