ERATO APOLLO 7s レビュー：左右独立型イヤホンで最小クラス。なのにアンテナ性能ばっちりのチートみたいな子

渋谷駅前スクランブル交差点でもかなりの安定度。良き。

ケーブルがない｢左右独立型ワイヤレスイヤホン（bluetoothイヤホン）｣はストレスなく音楽を聞きたいと願う、NO MUSIC, NO LIFE.派の皆さまから多くの支持を集めています。しかし、そのなかには音がブツブツきれちゃうものもあるのがツラい。特に片耳だけ切れちゃうというものが多い。せっかくノってきたというのになんたる仕打ちか。

常時そうなるわけじゃないですけどね。周囲にBluetoothを使っている人が多い（チャンネルが枯渇している）、自動ドアや火災報知器、電子レンジなど2.4GHz帯に影響を与えるものがそばにあるといった原因があって、製品が壊れているわけではないんですけどね。

反面、安定度の高い左右独立型イヤホンを作っていることで、評判がグッと上がってきているメーカーもあります。その1つがERATO（エラート）です。生まれたのは2015年。メーカーとしてはまだ若々しい。そしてこの｢ERATO APOLLO 7s｣は、現行モデルのなかではハイエンドに位置するモデルとなります。ほほう。どのあたりが？

指先にちょこんと載るコンパクトさ。しかし満員電車のなかでも音切れは確認できず、渋谷や新宿駅前のような場所でも1～2回切れただけ。この安定度の高さに圧倒されます。この小ささでアンテナの処理、どうやっているんでしょうか。

同じくBluetooth接続時の安定性に長けたモデルにAirPodsがありますが、彼なんてうどん部分がアンテナ（とバッテリー）ですよ。APOLLO 7sはよほど小型で高性能なチップアンテナを積んでいるというのでしょうか。

小型ではありますが、耳へのフィット感は悪くない。1サイズ上のイヤーピースをつかうならば、という前提ですけどね。

IPX5の防汗・防水性もあり。ということはジムトレーニングやスポーツ中の使用も考慮しているということ。激しく動いている場だと、振動で抜けやすくなるかも。

スポーツシーンで使うため、後付け式のイヤーフックが付属するのですが…。コイツの存在意義に疑問あり。フック部を耳介に引っ掛けやすくなるメリットの反面、扱いが面倒なんですよ。

というのも、左右独立型イヤホンには、充電用の収納ケースが付属するものが大半。ERATO APOLLO 7sも同様です。しかしイヤーフックをつけていると収納不可です。そして、ケース内にイヤーフックを持ち運ぶための収納部があったり、ポーチなどは付属しません。

2万円台後半のモデルにしては、扱いがちょっと雑。アクティビティ時に煩雑な荷物を持ち歩ける人はそうそういません。だからこそスポーツウェアに身を包んでいるときの可搬性も考え抜いてほしかった。

とはいえ、電車やバス、飛行機での移動中や、歩きながら使うシチュエーションならスタビライザーは不要でしょう。そして上に書いた苦言もまったく意味をなさないものとなります。

さて本体を見るとちょこっと飛び出ている部分がありますね。これは電源＆モード切替を行なう押ボタンです。長押し、複数回押しで機能を選択する設計になっていますが、音楽再生中（メディアモード）と停止中（スタンバイモード）で呼び出せる機能が違います。ここは慣れが必要でしょう。

イヤーピースを外してみると、メッシュフィルターがついた音道が表れました。奥底までゴミが入らないように、そして高域の特性を調整するローパスフィルターとしての役目を果たすパーツです。

音道の径はやや太め。低反発素材のコンプライ製イヤーピースが付属しますがその型番はT-600。このサイズを使っているイヤホン、初めて見たかも。

音質：ジャンルを問わずまんべんなく聴く人なら合格点

ささ、肝心の音質をチェックしてみましょうか。いやー、これがなかなかにいい。低域のアタックがスピーディで、ベースもドラムも音の立ち上がりがいい。ボリューム量は一般的でしょうか。あまり膨らませないようにしていますね。

ボーカルやメロディラインの楽器音もキレイめにまとまっています。情報量も左右独立型イヤホンのなかでは多めですね。伸びやかだ。そこから連なる高域はシャープめ。星がまたたくようなキラキラ感、までは至っていませんが、フォーカスが無駄にボケることはなく、伸びやかでナチュラルなトーンです。

ただ、低域だったら俺に任せろ！みたいなアピールは一切なし。一言でいうと地味系です。でも地味系美人です。全帯域において無理なく誇張なくピークなくディップもなく、気がつくとその音のバランスの良さに惚れるはず。得手不得手がないということは何でも鳴らせる優等生であり、ナイスキャッチャーでもあります。

ERATOの独自機能である、ERATOSURROUNDも搭載されていますよ。3Dサラウンドの一種でデジタル信号処理を用いて音場を補正する機能です。

立体的な音場を作り出すという触れ込みでしたが、この機能を活かせるトラックは限定されるかも。生録されたトラックは概ね好印象で、確かにステージが広くなったように感じます。しかしロックやポップスは音場が広がったというかは音が遠くなったいう印象を受ける曲が多く、熱気がマイナス傾向に。時と場合によって適切に使い分けるのがいいですね。

まとめ：つまりは、通勤イヤホンの最高級モデル

購入時のAmazonプライスは2万3300円。ややバッテリーの持ちが悪い（連続再生時間3時間+収納ケースで2回充電可能＝計9時間）ので海外旅行などには不向きです。急速充電機能もありませんし、3時間以内で移動できるタイミング以外は使いにくいかと。

とはいえ、APOLLO 7sの良さをもう一度ふりかえってみると、指先サイズで小さくて軽量だから耳への負荷も軽い。なのにアンテナは安定していて、ストレスの溜まりやすい満員電車のなかでも、バランスのいい音を快適に楽しめる。だから、ドアtoドアで1時間前後の通勤通学中にはピッタリなんです。ケースもさほど大きくないから、ポケットに入れていても邪魔にはなりませんし。

Photo: 武者良太
Source: ERATO

（武者良太）