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「Googleマップ1強」の状況で独自のセールスポイントを武器に拡大を図る新興オンラインマップサービスの存在


スマートフォンやPCで利用できるオンラインマップで、ほとんどの人が使っているものといえば「Googleマップ」やAppleの「マップ」であることに疑問を持つ人は少ないはずですが、実はそれ以外にも多くのサービスが勢力拡大を目指して争いを繰り広げています。2010年にサービスを開始したMapboxはそんな新興勢力の一つで、主に企業向けに高いカスタマイズ性を持つマップサービスの提供拡大を図っています。

The Right Direction: How Mapbox Is Winning Over Developers To Challenge Google's Mapping Dominance
https://www.forbes.com/sites/bizcarson/2018/05/08/mapbox-maps-developers/#18c3cdee164d

Mapboxは、エリック・ガンダーセン氏によって立ち上げられたオンラインマップサービスです。GoogleマップやAppleのマップにはない高いカスタマイズ性が評価され、テスラやUber、FoursquareEvernoteなどの企業やサービスに採用されています。

Maps | Mapbox
https://www.mapbox.com/maps/


Mapboxを使うと、マップ上に自分が欲しい情報や顧客などに提供したい情報を加えてカスタマイズした状態で提供することができます。自社の店舗だけを網羅したマップやオリジナルのナビゲーション機能、数々のデータをマップ上にプロットする「データ・ビジュアライゼーション」など、マップと情報を統合して新たな価値を生み出すツールとして活用することが可能です。


Mapboxを立ち上げたガンダーセン氏は2009年、アメリカ国務省からの任命を受けてアフガニスタンの首都カーブル(カブール)で任務にあたっていました。同年に実施されたアフガニスタン大統領選挙の際に発覚した選挙不正について、18人のスタッフと共に調査していた時にガンダーセン氏は、あることに気がついたといいます。

それは、Googleストリートビューにカーブル市内の様子が全く記録されていないという事実だったとのこと。当時すでに世界各地の都市はGoogleストリートビューカーによってあらゆる地点が撮影され、世界のどこからでも離れた街の様子を確認することができるようになっていましたが、カーブルはそれにあてはまらないことに気づいたガンダーセン氏は「それはまるで、Wikipediaが存在する前の世界のようでした」と振り返っています。そのことを認識したガンダーセン氏とスタッフは、2008年に開発を開始したMapboxのプラットフォームを使って自分たちでカーブルの地図を作りあげました。

その9年後の2018年、Mapboxのサービスは毎月3億5000万人のユーザーに利用される規模に成長しています。Mapboxは前述のテスラやEvernoteのほかにも、Snapchatやウェザーチャンネル、フィットネスSNSのStravaなどで利用されており、多くの人が気づかないうちにどこかでMapboxのサービスに触れたことがある状態となっています。


Mapboxにはこれまでに投資家から2億3000万ドル(約250億円)の資金が集まっており、2017年10月時点での評価額は約7億ドル(約770億円)と算定されていました。Mapboxの売上は前述のような企業やサービスからの利用料となっており、2018年の売上は1億ドル(約110億円)となると予測されていますが、どういうわけか利益はゼロであると見込まれています。その最大の理由は、ユーザーのうちわずか3%しか実際にお金を払っていないことであるとしています。

Mapboxでは利益率を上げるための取り組みを行っており、自動運転車のサービスや拡張現実(AR)分野での成長を図っていますが、それはすなわちGoogleと競合するということを意味します。たしかにMapboxにはGoogleマップにないカスタマイズ性の高さは備わってはいるものの、そのセールスポイントがGoogleマップに備わっているメリットや魅力を超えることができるのか、そこには疑問も向けられています。


Mapboxはこれまで、サービスの対象者をデベロッパーにほぼ限定してきました。Mapboxはいわば「エンジニアがいろいろ組み立てることができるレゴのようなもの」という位置付けであり、利用者は自分流に作り上げたマップを公開し、閲覧回数によって所定の利用料をMapboxに支払います。2012年にMapboxで初めての大規模顧客となったFoursquareは、Googleマップに比べて価格が低く、カスタマイズ性が高いMapboxのメリットを評価して乗り換えてきたそうです。

サービスは無料で使い始めることができますが、それなりの規模でMapboxを活用する企業の場合だと年間の利用料は4万ドル(約440万円)前後から、数百万ドル(数億円)規模に膨らむことも。顧客の一つであるテスラは、年間で500万ドル(約5億5000万円)という金額でMapboxとの契約を結んでいます。


幅広い顧客を抱えることによるメリットは、自社でコストのかかる調査用車両や人工衛星を保有して地図データを作る必要がほとんどないという点にあるとのこと。MapboxでCTO(最高技術責任者)を務めるヤング・ハーン氏は「地図は空気や水のようにその辺りに存在するものではなく、自ら労力を使って作り上げる必要があります」と述べています。個人ユーザーがMapboxをのマップを開くと、利用者のスマートフォンやPCは「緯度」「経度」「時刻」という3つの情報を匿名でMapboxのサーバーに送信するようになっています。こうして寄せられた何十億というデータが、Mapboxのリアルタイム性の高い地図作りにいかされているといいます。

2018年5月現在、世界中の110万人のエンジニアがMapboxに登録してサービスを活用しているとのこと。その中の一人、配車サービス「Lyft」で自動運転車の開発プロジェクトに携わるジョディ・ケルマン氏は、自動運転車がどのように周囲の状況を認識しているのかを乗客に見せるためにMapboxを利用しています。ケルマン氏は、「エンジニアが気に入って使うツールを開発しているというのは重要な功績です」「エンジニアを満足させるのは簡単なことではありません」と、Mapboxの品質の高さを語っています。

今後、Mapboxが目指すべき点はより多くの利用者(=企業)からお金を得られる体制を構築するところにあるとのこと。これは決して容易なことではないといえますが、ガンダーセン氏は「もし成功することができたら、私たちのサービスはあらゆる場所で利用されることになるでしょう」と展望を述べています。

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in ネットサービス, Posted by darkhorse_log

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