春は志を新たにする季節。持ち前のスキルや経験を活かして、仕事やプライベートをもっと充実させたい。そんな思いから資格の勉強や、スクールに通い始める方も多いのではないでしょうか。

でも、時間とお金を投資する前に自分の経歴を振り返ってみると、「人に教えられる」スキルを既にひとつやふたつ、いや、もしかしたらもっとお持ちなのでは?

自身がスキルと認識していなくても、他人には役立つノウハウは案外たくさんあるようです。例えばエクセル便利術、プレゼンスキル、包丁研ぎ。Outlookメールの賢い使い方だって、立派なスキルです。痒い所に手が届く…そんな有効なスキルをお持ちなら、教わるより教えたほうがライフスタイルの充実につながるかもしれません。

教えたい人と教わりたい人をつなぐスキルシェアサービス

新宿マルイメン靴磨き講座
Image: ストアカ

得意な知識やスキルを教えあう「スキルシェアサービス」はここ最近のトレンドです。「ストリートアカデミー」から、より親しみを込めて2017年にサービス名を改称した『ストアカ』は、CtoCモデルを使った「教えたい」と「学びたい」をつなぐ日本最大級の学びのマーケット。

具体的には、先生として教えたいユーザーと、生徒として学びたいユーザーとをオンライン上でつなげるプラットフォームです。マッチングが成立したらオフラインでリアルに講座を受けられるので、先生と生徒が向き合うことで一緒にスキルアップを図っていくことが可能です。

どんな講座があるのか

まず、特長的なのはジャンルの豊富さ。スタート時点では9つだった講座は、現在1万3800講座、170ジャンルになっています。プログラミングや写真の撮り方といった王道から、「3時間で忍者になれる」のような、ここでしか体験できない個性的な学びも。

また、ピンポイントなテーマかつ一回で完結する講座も多く、効率的に好きなことだけ習うことができます。大人の学びにフォーカスしていることから、時間設定は社会人が受講しやすい平日夜間、もしくは週末がほぼ半々。

場所にも捉われないので、お寺でヨガ教室を開催したり、アフターファイブの街に繰り出して夜景の撮り方を学んだり、築地市場で新鮮な食材を調達してからお料理教室に直行したりと、ユニークな講座が数多く開催されてきました。

2012年に始まって以来、ストアカで講座を開設して、先生として教えた人は全国で1万2000人を超えましたが、100万人を目指しているとのこと。一方、ストアカの講座を受講した人は19万人を超えたそうです。

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Photo: ライフハッカー[日本版]編集部

そんなストアカの先生には、どうしたらなれるのでしょうか。ストアカを運営するストリートアカデミー株式会社の地域コーディネーター、味岡美希さんにお話をお聞きしました。

ストアカで先生になるために必要なこと

まず気になるのは、どんな審査があるのかということ。「誰でも先生になれる」がコンセプトであることから、先生になるために資格提出のような厳密な審査は特になく、必要なものは身元確認とこれまでの活動を証明できるSNSの提示、顔写真の登録。つまり、本人確認ができ、自身の情報開示に積極的であるということです。

かかる手数料ですが、受講料の10~20%をストアカに支払います。登録料や入会費、更新料は不要。場所も先生が指定するので会議室などを借りる場合は場所代が必要ですが、フィールドワークや自宅で行う場合はかかりません。

どのような人が先生になっているのかというと、年齢層は20歳の学生からリタイア生活を送る方までと幅広く、一番多いのは独立・起業をされた方や副業として教鞭を取る30代後半のビジネスパーソン。長年培ってきたビジネススキルを活かして新しい活動を始められるだけでなく、ちょっとした社会貢献にもつながります。中にはストアカでの講座を機に、スクール事業で会社を設立したサクセスストーリーもあったとか。

ストアカの講座の平均満足度レーティングは91.2%。高い数値ですが、ストアカの先生は一部のプロを除いてほぼ全員が一般人なのだそう。

充実したサポートサービス

この高い満足度を担保できる理由のひとつは、充実したサポートサービスです。地域コーディネーターとしての味岡さんの主な仕事は、地域の先生を増やすこと。各地で月1は開催されている先生向けワークショップを運営するほか、先生に役立つ情報発信、講座スペースの確保や授業料の設定についての相談に乗るなど、先生の悩みや不安に寄り添うサポートを行っています。

先生向けワークショップでは、1人で悩むのではなく、参加者同士でブラッシュアップする時間を設けているそう。2時間のワークショップですが1000円なので(2018年5月現在)、気軽に参加できそうです。また、ワークショップ後は参加者同士のフリートークや名刺交換ができる時間も設けられており、同じ志を持った人同士なので毎回盛り上がるのだとか。

また、先生になった後もカスタマーサクセスチームにいつでも相談でき、生徒が受講後に投稿するレビューを通して得られるフィードバックはやりがいに繋がります。学びを深めるだけでなく、「あの講座のここがよかった!」、「こんな講座があればいいのに」など、生徒の生の声が先生にダイレクトに伝わるので、新しいインスピレーションをかたちにする手助けになりそうです。

先生として登録すると教えることの喜びを知ることができ、お互いを高め合っていける仲間を見つけられる――。それがストアカで先生になることの大きな利点と言えるでしょう。

いざ、先生になってみよう!

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Photo: 山田ちとら

「自分もやってみようかな?」という気持ちになった読者もいることでしょう。 そこで、ライフハッカー[日本版]編集部の今井がストアカの先生になるなら何になれるのか、実際に味岡さんに見立ててもらいました

自他共に認める「自然科学オタク」である今井の場合、植物学、生物学、鉱物学、天文学といった、博物学を中心とした幅広い知識が最大の武器。

サンシャイン水族館「ざんねんないきもの」応募、ダブル受賞!!(トップ+次点) バカ売れしている「ざんねんないきもの辞典」とのコラボで、そこに掲載されているのと水族館のスタッフが選んだ生き物が展示される「ざんねんないきもの展」をやってるんだけど、一般の人からも「ざんねんないきもの」募集、どこがざんねんなのかも書いてくださいという、応募企画をやっていたので、生き物オタクのプライドをかけて熟考、面白おかしく文章も書いて3動物応募したのです。そして昨日行ってきたのでレポします。 特にインスタのフグ仲間さんは「知ってる」とニヤニヤしそうだな。 #フグラーの常識 #サンシャイン水族館 #sunshine #池袋 #展示 #event #ざんねんな生き物 #animal #雑学 #ざんねんないきもの展

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最近もサンシャイン水族館の企画、「ざんねんないきもの」募集トップ賞をとったとか。

いろいろな切り口で講座を開設できそうですが、逆に「これ」と絞るのが困難とも言えます。味岡さんによると、そんな先生志望者も多いのだとか。また、やはりいざ「先生になろう」と思ってみると不安も大きいもの。話をよく聞いた上で具体的にどんな講座ができそうか一緒に考えてくれるコーディネーターの存在は大きいと感じたそうで、話しているうちに「自分でもいけるかも?」と前向きになれたとのこと。丁寧なアドバイスによるサポートは、人と人とのリアルなつながりを大切にしている、ストアカならではかもしれません。

ちなみに、今井がストアカで講座を開設するとしたら、野外のフィールドを実際歩きながら学ぶ少人数制ツアーがおすすめだそうです。例えば講座名としてこのようなご提案をいただきました。

  • 【その雑学、一生モノ!】水族館、動物園が2倍楽しめる、生き物博士のちょっと笑える生き物講座
  • 【いつもの散歩が冒険に!】意外と身近に生息する魅力ある生き物を見つけて学ぶ!街歩き講座
  • 【アンティーク初心者歓迎!】90分でアンティークから歴史を読み解く骨董市デビュー講座

人気講座の先生になるには

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Photo: ライフハッカー[日本版]編集部

勇気をもってストアカで講座を開設しても、初めのうちはなかなか生徒が集まらなくて苦労する方が殆どだそう。そこで、味岡さんからいくつか集客アップの方法を教えていただきました。

先生として一番大事なのが情熱。稼ぎたいという気持ちより、この分野で教えたい!という情熱さえあれば、ジャンル問わず人気が出てくるそうです。自分の教えたいという気持ちから、どうすれば良さがわかってもらえるのか、相手に伝わるのか努力するものだからです。

努力する、という点ではストアカの先生方はびっくりするほど向上心があるのだとか。先生自身が満足度を高める工夫をしていることも、講座の満足度の高さにつながっています。レビューが低かったらどのように教えたらいいかを再構築したり、先生向けのフェイスブックページで人気の先生に相談してみたりと、お互いに高め合う環境が醸成されているとのこと。ときには先生だった人が人気講座を受講する生徒になるケースもあるとか。

また、資料など、何か物理的に持ち帰れるものがあったり、写真撮影を許可したりするだけで生徒の満足度が高くなります。さらに、講座を目的別に細かくバリエーションをつけて開設するとリピーターを生んでいくそうです。

ストアカでは、たとえ先生になって集客率が悪くても登録が解除されることはないので、先生同士、または運営者との相談を経て、試行錯誤をしながらチャレンジし続けることができます

教えることで逆に教わることが多いのは、まるで人生そのもの。最近はメルカリの『Teacha』など、他にもスキルシェアサービスが増えてきていますが、この世の中の動きにストアカは歓迎しているとのこと。教えることが自分の発見につながり、喜びにつながっていけば、オンもオフもより充実しそうです。


Image: ストアカ, Rawpixel.com / Shutterstock.com

Photo: 山田ちとら, ライフハッカー[日本版]編集部

Reference: ストアカ, まなぶーん, サンシャイン水族館