サウスウエスト航空1380便のエンジン爆発事故のニュースは、飛行機に乗る人にとっては、まだ記憶に新しいと思います。しかし、旅客機のエンジンが故障するというのは、通常そこまで恐れるようなことではありません。めったに起こらないだけでなく、万が一起こったとしても、パイロットや飛行機にはその事態を収拾する準備ができています。今回は、その手の飛行機事故に関して知っておいたほうがいいことと、サウスウエスト航空1380便の事故が重大になってしまった理由を説明していきます。

エンジンが故障することはめったにない

この事故から学ぶべきことがあるとしたら、旅客機のエンジンが故障することはめったにないということです。1380便の機体は、製造から18年経っているボーイング737型機(737-7H4)で、ジェット機のエンジンでは世界一多いターボファンエンジンCFM56-7Bを搭載していました。世界中で6700機以上の飛行機で使用されているエンジンなので、飛行機に乗ったことがある人なら、このエンジンの機体に乗った可能性があります。また、333333時間に1回しか飛行中に停止しないので、これまで製造された中でも最も信頼のおけるエンジンだと定評があります。

エンジンが故障するというような機械の故障は、飛行機関連の致命的な事故のうち約17%だけです。飛行中も地上も含め、ジェット機のエンジン故障関連の事故は毎年約25件しかありません。これは、世界中の100万便のフライトに1回の事故よりも低い数字です。エンジンの故障は、機械や燃料の問題によって発生しますが、飛んでいる鳥がタービンに巻き込まれるような避けられないトラブルによって起こる事故のほうが多いです。

パイロットはエンジンが1つ、もしくはなくても飛行する訓練を受けている

エンジンが故障することはめったにありませんが、ほとんどの旅客機のパイロットはそのような緊急事態に呑まれることはありません。パイロットは、エンジンがなくなった飛行機を操縦する方法を、何時間も徹底的にトレーニングされています。そのような事態が起こると、乗客は少し怖いかもしれませんが、パイロットがそれ以上事態を複雑にしたり、被害を大きくしたりすることはほとんどありません。

実際、エンジンが故障するというのは、旅客機のパイロットにとってはあまりにもよくあることなので、そんなことがあっても何もしない可能性があります。飛行機を迂回させ、予定を変更したり、緊急着陸したりすることもあるかもしれませんが、必ずしもそうしなければならないわけではありません。エンジン1つでもそのまま目的地に到着したほうがいいと判断すれば、パイロットはそうするでしょう。

たとえエンジンが全滅しても、飛行機の推進力と重力のお陰で、飛行機は滑空し、安全に着陸することができます。もしくは、2009年のUSエアウェイズが離陸直後に雁の群れに遭遇した時のように、離陸時にエンジンが故障しても、水辺が近くにあればパイロットは不時着水することもできます。

旅客機はエンジンが1つでも安全に飛行するよう設計されている

旅客機には、エンジンが1つでも長距離飛行ができることも含め、多くのあまり使わない安全機能が付いています。エンジンが失われることによって、推進力をいくらか失うことにはなりますが、ほんの少しのことにしか影響を与えません。

  • 最大高度を維持できなくなるので、低い高度で飛行することになる。
  • 残ったエンジンにいつも以上の負担がかかる。
  • 燃費が落ちるので、航続距離が短くなる。

基本的に、エンジンが故障するというのは、エンジンがすべて揃った状態と同じほど遠くまでは飛行できないということだと言われれば、納得するのではないでしょうか。しかし、航続距離が短くなることを除けば、飛行機は大幅に能力が低下することなく、安全に飛行することができます。

実際、飛行機が長距離飛行、もしくは海洋や北極圏のような無人の領域を飛行する前は、米連邦航空局のETOPS(民間旅客機の安全性確保のためのルールのひとつ)の認可を受けなければなりません。この認可の大部分は、エンジンが1つでも飛行できるかということに関してです。

サウスウエスト航空1380便は何が違ったのか

エンジンを失うことがそこまで大きな問題ではないのであれば、なぜサウスウエスト航空1380便にあのような惨事が起きたのでしょうか?

簡潔に言えば、機体に穴が開いたからです。乗客がいるメインの客室は、離陸後に加圧していますが(だから快適で呼吸もできる)、飛行中に機体に穴が開くと深刻な問題が起こります。猛烈な均圧が起こり、そのエネルギーによって乗客が機体の外に吸い出されることがあります。

エンジン故障には、エンジンの電力消失からエンジンが爆発して火の玉になることまで色々です。後者のような激しいトラブルは、よりひどいことになります。1380便が離陸して約20分後、左エンジンのひとつの24チタン合金の羽根が折れ、エンジンが完全に消失する根本的な原因となりました。通常、エンジン爆発による破片などは飛び落ちていきますが、今回は何かしらの影響で破片が機体の窓の方に来て、機体に穴を開けたのです。その時点で、パイロットは2つの問題を抱えていたということです。

エンジン故障だけでなく、機内の気圧が急速に下がっていき、乗客の一人が亡くなりました。不運な状況が重なったため、乗務員はすばやく行動し、フィラデルフィア国際空港に緊急着陸しなければなりませんでした。

エンジンが故障するというような飛行中の事故は起こりますが、めったに起こるものではありません。また、起こったとしても、深刻な問題に発展する可能性は低いです。サウスウエスト航空1380便には痛ましい悲劇が起こりましたが、そのような不幸な一件で飛行機に乗ることを恐れないでください。そのようなことがあっても、飛行機は間違いなく最も安全な交通手段の1つです。


Image: ASSOCIATED PRESS via Lifehacker US

Source: Wikipedia, CBS News

Patrick Allan - Lifehacker US[原文