サイエンス

朝型・夜型と関連する遺伝子座を約70万人の遺伝子を分析して研究者が特定

by Vladislav Muslakov

夜型あるいは朝型であることはさまざまな病気との関連性が疑われていますが、「夜型が病気を引き起こす」という確固たる因果関係はまだ研究で示されていないところ。夜型か朝型かは遺伝子が関係していると考えられていることから、研究者らが約70万人のデータを用いて、概日リズムに関連する遺伝子座を特定したと発表しました。

Genome-wide association analyses of chronotype in 697,828 individuals provides new insights into circadian rhythms in humans and links to disease
(PDFファイル)https://www.biorxiv.org/content/biorxiv/early/2018/04/19/303941.full.pdf

世の中には早起きして朝から精力的に活動できる「朝型人間」もいれば、反対に朝は苦手だけれど夜になると頭がさえてくるという「夜型人間」、そして朝型と夜型の間という「中間型人間」が存在します。朝型か夜型かどうかという概日リズム(体内時計)の問題は年齢・性別・日照レベルなどの環境要素が関係してきますが、遺伝子的な要因も朝型・夜型に影響を与えるものの1つと言われています。

動物を対象とした研究では、概日リズムに関係する遺伝子変異や遺伝子発現の変化が肥満や高血糖症、ベータ細胞の機能障害による糖尿病と関連することが示されています。しかし、人間の概日リズムと病気の関連性は報告されてはいるものの、「『夜型人間は肥満になる』のではなく『肥満によって夜型人間になる』のでは?」というような可能性が残されており、因果関係の部分の証拠が確立されていませんでした。

by Vladislav Klapin

概日リズムのような「リスク要因と考えられるもの」と関連する遺伝子変異を特定することは、概日リズムと病気の因果関係を理解するヒントとなり、また睡眠のホメオスタシスや概日リズムの生物学的プロセスに新しい見方を与えるとして研究が行われました。

研究者らはDNA解析サービス「23andMe」とイギリスのバイオバンク「UK Biobank」が有する69万7828人のデータを用いてゲノムワイド関連解析(GWAS)を実施。GWASの結果、朝型人間に関連する351の遺伝子座を特定したと研究者らは発表しました。なお、この研究は生物学のプレプリントリポジトリであるBioRxivで公開されたものであり、査読は行われていません。

GWASの元となったデータは朝型か夜型かを自己申告で答えるものが含まれており、バイアスがかかっている可能性があるため、UK Biobankが有する被験者8万5760人の活動をモニタリングしたデータと遺伝子の関係の確認が取られました。その結果、朝型と関連する対立遺伝子を最も有する人の上位5%は、下位5%に比べて活動状態から休息状態に移るタイミングが平均して25.1分早かったとのこと。

今回特定された遺伝子座は、概日リズムやインスリン分泌経路のほか、網膜、菱脳、視床下部、脳下垂体の表現型に関連する遺伝子が含まれているところでした。また、研究者は朝型であることは若年における乙子の出産や、統合失調症・うつなどのリスクを減らすこととの関連を研究において示していますが、BMI・2型糖尿病との関連性については確認されていません。

by Asdrubal luna

概日リズムが遺伝子によって制御されているという内容は、これまでにも発表されています。ショウジョウバエに遺伝子の突然変異が起きやすくなる物質を与え、その子孫の変化を観察したところ、X染色体の中に概日リズムに作用する遺伝子が含まれている個体が発見されました。この具体的な仕組みを解明した研究者らは2017年にノーベル生理学・医学賞しています。

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in サイエンス, Posted by darkhorse_log

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