やはり、気候変動が原因なのでしょうか。
昨年、「ハービー」や「イルマ」といった巨大ハリケーンがアメリカに上陸し、甚大な被害をもたらしました。日本でも報道されていたことから記憶に残っている方も多いと思います。
このような巨大ハリケーンの裏には、急激にハリケーンが成長する「急発達」とよばれる現象があります。科学誌Geophysical Research Lettersに掲載された最新の研究では、30年前と比較して、ハリケーンの「急発達」がより速く、より強力になっていることが明らかになりました。
米エネルギー省のパシフィックノースウエスト国立研究所(PNNL)とアメリカ海洋大気庁(NOAA)の研究チームは、1986年から2015年までの30年分のハリケーンのデータを調査しました。この研究では、ハリケーン内の最大風速が24時間以内に25ノット(時速約46km)以上増加した場合を「急発達」と定義しています。関連研究でも示されているように、急発達の発生頻度自体は増加していませんでした。
しかし30年前と比べると、成長率が増加していることがわかりました。30年前は24時間における風速の平均増加量が時速約7.5kmであったのに比べて、近年では21km以上も強くなっていたのです。
では30年前と比べて、いったい何が変わったのでしょうか? 研究チームは「大西洋数十年規模振動(AMO)」とよばれる気候サイクルに着目しています。そのメカニズムは解明されていませんが、AMOが海面水温を上昇させ流と共に局地的に風向や風速が急変する現象「ウインド・シア」を減少させることにより、強力なハリケーンが発生しているのです。
過去にAMOは、主に大西洋西部でのハリケーンに影響を与えていました。しかし、1990年代からヴァージニア諸島やセント・キッツ島といった大西洋の中央部や東部の地域で発生するハリケーンにも影響を与えるようになりました。これは、昨年発生した「イルマ」や「ホセ」といったハリケーンが急激に発達した場所とちょうど同じ地域になります。
このように、気候変動による影響はこの研究の対象となっていません。著者の1人であるBalaguru氏は米Gizmodoに対して、「我々が観察した『急発達』のほとんどは、自然現象であるAMOの影響によるものです。気候変動の影響も完全には排除できませんが、『急発達』に関する役割は大きくありません。我々は16もの異なる気候モデルを用いて解析した結果、気候変動の兆候はウィンド・シアの変化と一致していない一方で、大西洋で発生するハリケーンについてはAMO指数とよばれる値の変化とかなり合致していることがわかり、このような考えに行き着きました 」と述べています。
また、Balaguru氏は、AMOと気候変動の影響を見極めるためには、さらなる研究が必要であるとしています。
Image: NOAA
Source: Geophysical Research Letters
George Dvorsky - Gizmodo US[原文]
(tmyk)