「人生100年時代」にどう備えるか——。最近よく聞くテーマです。人生が長いということは、それだけ長期にわたり生活費がかかるということ。老後までに多くのお金を蓄えておかなければ!と思う方も多いでしょう。ですが、そもそもかかるお金が少なければ、その分準備しなければならないお金も少なくて済みます。ここで注目したいのが、「一生涯費目」です。

「一生涯費目」とは私が勝手に名付けたもので、その名の通り生きている限り、一生涯にわたってかかる費目をいいます。例えば、食費、光熱費、住居費、通信費、被服費、日用雑費など。

一生涯費目は日々のコストは小さくても、長い年月での累計額は侮れなくなります。ましてや、人生100年といったらなおさらです。

例えば、月2万円も50年の累計となれば、1,200万円にもなります。月2万円無駄遣いをすると、消えてなくなるのは1,200万円。無駄遣いしなければ、有効に使える1,200万円です。

人生100年時代だからこそ、自身の一生涯費目を洗い出し、小さくてもムダ買いは丁寧に見直したいところです。その効果は時間をかけて現れるので、実感はなかなか感じにくいかもしれませんが、必ず結果は出ます。まさに「継続は力なり」です。

一生涯費目の支出カット4つのコツ

かといって、何でも単にカットすればいいものでもありません。一生涯費目だからこそ、下手にカットすると、生活に潤いがなくなります。日々、楽しく、心豊かに過ごすことも大切です。

そこで、支出カットの4つのコツをご紹介しましょう。自分では何ができるか、考えるヒントにしてみてください。

1.やめる

キッパリやめることです。つまり、買わないということ。

たばこをやめる、行きたくない飲み会を断る、あまり行かない習い事をやめる、有料サイトの会員をやめる、ゲームの課金をやめる、洋服の衝動買いをやめる、コンビニのついで買いをやめる。

支出カットにはこの方法がもっとも手っ取り早いです。このときの考えるポイントとしては、いかに「なくても平気」と思えるか。完全にやめなくても、「量(回数)を減らす」のもいいでしょう。

これまで「買う」ことに慣れていると、なかなか思い切った決断ができないかもしれません。そんなときは「いったんやめてみる」のもアリです。本当に必要だったり、心から欲しいと思えば、また買えばいい。「買わない世界」を一度体験して平気だと思ったら、すんなりやめてしまいましょう。

私は、以前肩こりと腰痛がひどく、毎月のようにマッサージに通い、月5,000円以上は使っていました。「この先ずっと通うのかな…」と思っていましたが、人から教えてもらったストレッチを毎日行うようにしたところ、ツラかった肩こりから解放され(完全に治ったわけではないが、日頃は気にならないくらいの状態)、マッサージ通いは卒業しました。これで年6万円浮きました。

2.割安に買う

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Photo:Bikeworldtravel/Shutterstock

同等のものをセールやまとめ買いで安く買います。何でもかんでも安く買おうとすると「安物探し」で疲れてしまいます。「よく買うもの」を中心に探せば、少しの価格差でも、買う数量が増えることで、支出カット額も右肩上がりが期待できます。

ただ、まとめ買いにはちょっとした落とし穴があります。

私はビール好きで、割安に買おうといつも6缶パックを購入していました。ところが、ある時気づいたのです。6缶パックは、5日持てばいい方。2~3日でなくなります。「あると飲む」という自分の習性に気づき、思い切ってまとめ買いをやめました。本当に飲みたいときに1缶買って帰るようになると、毎日飲むことはなくなりました。1缶あたりは高くなりましたが、消費量がグッと減ったことで、私のビール代は各段に下がりました。

「単価×消費量=コスト」ですから、単価を落として消費量が増えると支出はむしろ増えます。特に嗜好品のまとめ買いは要注意です。

3.代替品を利用する

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Photo:yasuhiro amano/Shutterstock

例えば、ハンバーグを作るのに、肉ではなく、豆腐で作るといったことです。「ハンバーグを食べる」という「目的」は変えず、中身を上手に買えることで、コストを抑える方法です。

他にも、タクシーでなく電車を使う、収納ケースを買わずに菓子の空き箱を利用するといった具合。何か新しい物を買おうとする場合には、家の中に活用できるものはないか探す癖をつけるといいでしょう。

私は靴やお菓子の空き箱を引き出しの中の整理に活用しています。空き箱は紙製なので適当にはさみを入れて、好きな大きさにカットし、つなげて置けば引き出しのサイズに合わられます。市販のプラスチックのボックスでは、引き出しのサイズにピッタリなものを探すのはなかなか大変です。

4.作る

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Photo:Falcona/Shutterstock

買わずに作ります。

何かを購入することは、他人の労力と時間をもらうようなものです。自分で作れないから買うわけです。自分で作れば、買う必要はなくなります。分かりやすい例は、外食やお惣菜、お弁当など。自炊すればそれらのコストは簡単に抑えられます。自販機やコンビニなどで飲み物を買わずに、好きな飲み物をマイボトルで持ち歩けば、これも「作る」といっていいでしょう。

最近は何でも売っています。売っているから買う、となっていないでしょうか? 買う前に、自分で作れるかな?と考えてみてもいいでしょう。

ちなみに私は、ここ何年も化粧水を買っていません。手作りです。ゆずの種を焼酎につけるだけという手軽なモノ。パックも手作りです。小麦粉とはちみつと水をまぜるだけで簡単に作れます(最近はハトムギ粉を使用)。重曹とクエン酸と水を混ぜるだけで簡単に炭酸水が作れることを最近知り、ときおり炭酸水で洗顔したりしています。安くて手軽で、しかも自然のものなので安心感もあります。

これら4つのコツは、お金を節約するためのコツのように思われるかもしれませんが、それは私の本意ではありません。

お金は本来使うもの。使ってこそ、その効果を発揮するものですから、本音をいえば使ってほしいと思っています。問題はその「使い方」です。

お金の使い方は学校では教わらないばかりか、世の中買わせようとする仕組みがいっぱい。

家計相談をしていると、「(お金が)あるから買う」「売っているから買う」という人がものすごく多いことに気づかされます。こうした「使い方」に慣れてしまい、使い過ぎが起こると、いざというときにお金が足りなくなって人生設計の変更を余儀なくされる、なんてことも。

起業する、車を買う、留学する、資格を取る、家を買う、引っ越す、結婚する、転職する等、いろいろな「いざ」があるでしょう。

必要なタイミングで、必要な分のお金があれば、人生を後押ししてくれます。

それには「一生涯費目」を上手に使うことで結果的に貯蓄につながり、その貯蓄がまた人生を後押しするコストをカバーしてくれます。貯蓄すら(将来に)使うためなわけです。

4つのコツは、自分のお金の使い方を振り返るコツともいえます。

お金は有限ですが、欲は無限です。

そもそも合致しませんから、お金は人生に役立つ“生き金”となるよう有意義に使ってほしいなと思います。

八ツ井慶子:生活マネー相談室、ファイナンシャルプランナー。どなたでも参加できる「生活マネー塾」を主宰。

BUSINESS INSIDER JAPANより転載(2017.2.22公開記事)