Steamの複数の人気「エロゲー」への削除警告に対してValveが再レビューを検討

デベロッパーから新展開に関する最新のアップデートも出ている

Steamの複数の人気「エロゲー」への削除警告に対してValveが再レビューを検討
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Steamにてポルノ要素のあるゲーム(以下「エロゲー」)を配信している複数のデベロッパーは、Valve社からゲーム内のポルノコンテンツを除去しなければゲームをSteamから削除するという警告を受けている。各デベロッパーはTwitterでこの情報を明かしたが、のちに最新の展開に関するアップデートも上がっている。

その中でも特に海外で人気のある恋愛シミュレーション兼パズルゲームの『HuniePop』を開発したHuniePotは「重要なお知らせ」として、警告を受けた旨を公式Twitterアカウントで示し、大きな話題となっている。HuniePotによると、Valveは『HuniePop』が「Steamにおけるポルノコンテンツに関する規則とガイドラインに違反するため、該当コンテンツをアップデートで除去しなければ、ゲームをストアから削除する」と通告している。

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他にも『Re;Lord ~ヘルフォルトの魔女とぬいぐるみ~』『屋上の百合霊さん』『VRカノジョ』『Tropical Liquor』『Mutiny!!』といった人気タイトルが同様の警告を受けており、「エロゲーをSteamから削除する」というのがValveの方針のようだ。『Mutiny!!』を開発したLupiesoftは公式Twitterアカウントで、「ポルノコンテンツに関する複数の通報」があったため、Valveが警告を出したそうだと発言している。

これらのゲームは日本製タイトルと、海外製の日本風タイトルの両方があるが、すべて日本で言う美少女ゲームであり、恋愛や性愛に関連するテーマを扱い、性行為の描写あるいは性的内容を示唆するコンテンツが含まれている。LupiesoftはSteamのガイドラインには厳格に従っていると話し、またパブリッシャーであるMangaGamerのスタッフが直にValveの担当者に会った際に「Steamではecchi(エッチ:アニメなどで「サービスシーン」に当たる意味)なコンテンツは問題ない」との回答を得たと明かしている

『HuniePop』や『Mutiny!!』をはじめ、Steamで購入されたゲームに性描写を追加する「無修正パッチ(uncensored patch)」を外部で配布する行為が常態化しており、同様の手法を採用するタイトルが増え続けている。いわゆる日本型の「ノベルゲー」(18禁含む)の新たなプラットフォームとして、Steamが有力であるという見方も出ていた。

『屋上の百合霊さん』や『HuniePop』が何年も前からSteamで配信されているだけに、今回の厳しい警告は開発者にとっては急な動きであり、多くの人を驚かしている。『HuniePop』が相当前から新規コンテンツを追加するアップデートを行っていないので、Valveが新しい指針を作って、以前からあるコンテンツに当てはめて削除する必要があると判断し、各デベロッパーに警告を出したと思われる。今年3月にSteamでリリースされた『Re;Lord ~ヘルフォルトの魔女とぬいぐるみ~』も警告対象に含まれたので、最近になってValveの方針が変わったとも推測される。

なお、Valveは2017年6月にSteam Directという新たなゲーム配信プロセスを導入した。Steam Directでは、幅広い開発者が事前のユーザー投票によるゲーム選別を経ることなく、Valveに対して必要な書類を送付し、配信するための料金(100ドル)を支払うことで、Steamで直接ゲームを販売できるようになっている。Steam Directによる直接的なパブリッシングの解禁も、今回の規制強化に関係があると見られる。

この警告を受け、デベロッパーはそれぞれ違う反応を見せている。『Mutiny!!』のLupiesoftは「ポルノコンテンツをSteamで配信していませんし、宣伝もしていません」とツイート。まさに「寝耳に水」という感じで、Valveが以前の許可を反故にしたと批判し、「正常でなく間違っている」判断のせいで「Steam上のビジュアルノベル業界全体がこの非常手段に脅威を感じています」と発言。さらに「日本のアニメ風のアートを採用したセクシーなゲーム」のみが標的にされ、「100倍も激しいポルノコンテンツが含まれる欧米風のゲーム」が野放しにされているという不公平な状況を憤り、ビジュアルノベルというジャンルのために、Steamがいつでも正当な理由なくタイトルを削除できるという現状に対して抗議の声をあげ、このメッセージを広めてほしいとファンに要請した。

Valveの「反故」を批判し、ビジュアルノベルというジャンルの存続を憂うLupiesoftのツイート

『屋上の百合霊さん』などのパブリッシャーであるMangaGamerは自社のブログで下記の声明を出している。

ご記憶かと思いますが、我々の発表と複数のメディアによる報道を顧みると、我々と業界の多くの方々がSteamにおける『屋上の百合霊さん』の無修正でのリリースを、品のある成人向けコンテンツの扱いに関するSteamの前向きな変化であると受け止めておりました。我々は今でも、このゲームのコンテンツがポルノではなく、セクシュアリティに対する真摯かつ趣深い探求であるとの主張を固持しております。

『VRカノジョ』の販売ページには「様々な理由により、『VRカノジョ』の仕様が変わる可能性があります。調整が完了したらお知らせします」と書いてある。

また、『Tropical Liquor』を開発したTentacle Gamesのブランドを持っているNEKO WORKsの社長であるアンコウは、2次元の表現における乳首の露出が問題になっているのかもしれないとツイートしている。

ところが、日本時間の5月20日朝、『HuniePop』のHuniePotと『Mutiny!!』のLupiesoftが相次いでTwitterで最新の状況をアップデートした。HuniePotによると、Valveから本件の警告を「無視」するよう要請したメールが届いたという。Valveは、迷惑をかけたことを謝ると共に、『HuniePop』が本当にSteamのガイドラインに違反しているか「再度レビュー中」であることを伝えたようだ。

LupiesoftもValveから『Mutiny!!』が再度レビュー中であり、2週間以内にポルノコンテンツを除去しなければゲームが削除されるというデッドラインが解除されたとの連絡を受けたと報告した。Lupiesoftは、彼らが「膨大な数の苦情」がきっかけとなったと考える今回の件について、デベロッパーとファンの反対抗議行動が奏功しただろうと話す一方、問題はまだ解決しておらず、休戦状態になったに過ぎないとの認識を示している。

Steamでは多くのエロゲーが配信されているだけではなく、『CLANNAD』『STEINS;GATE』のような非18禁の美少女ゲーム、『マブラヴ』のような18禁の原作から成人向けの表現を削除・修正したタイトルも決して少なくない。Valveが本当に方針転換をするか、その場合の影響はどこまで広がるか、そして各デベロッパー・パブリッシャーがどのような対応をするか、これからも注意深く見守る必要がある。

IGN USはValveにコメントを求めている。続報があり次第伝えるので、引き続きIGN JAPANをチェックしてほしい。

※本記事はIGNの英語記事にもとづいて作成されています。

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