確定拠出年金などを利用して、リタイア後に備えようとするときにぶつかる壁の1つは、市場がうまく機能し利益が出ていることを実感できる地点に達するまでに、長い時間がかかることです。

何年、あるいは何十年も掛け金を払い続けなければ、有名なパーソナルファイナンス本『Your Money or Your Life』でクロスオーバーポイントとされている地点、つまり、運用益が自分が拠出した掛け金(と企業がマッチする金額)を上回り始める地点に到達することはできません。

投資から利益が出ていると思えなければ、長いキャリアを通じて掛け金を拠出し続ける気にはならないでしょう。しかし、ある地点を過ぎれば、身を削るようにして拠出したお金が利益を生んでいくのを実感することができます。

リタイアメント情報サイト「Real Deal Retirement」のWalter Updegrave氏が、単純化した事例を紹介しています。たとえばあなたの初年度の年収が45000ドルで、年間の昇給率が2%だとします。そして、給与の10%を確定拠出年金に拠出し、年間利回りは6%です。最初の頃は目立った動きはありません。

この事例では、初月に掛け金として375ドルを拠出しても、その月の運用益は2ドルにもなりません。1年間の掛け金4500ドルを拠出した後でも、投資から得られる利益は月にならすと20ドル程度です。初年度の運用益は拠出した金額全体の5%程度しかないということです。

あまりの少なさに、やる気が挫かれてしまうかもしれません。しかし、ゆっくりとですがリターンは積み重なり、いずれは毎月拠出する額よりも多くの運用益が得られる地点に達します。

満5年になるころには、運用益は毎月拠出する掛け金の3分の1程度にまで達します。

8年目には、運用益は月の掛け金の半分を超えるようになります。

13年がすぎる頃には、クロスオーバーポイントに達し、運用益が掛け金を超えるようになります。

ここがスイートスポットです。「あなたのポートフォリオは今、積み立ててきた掛け金と運用益によってフル回転し始めました」とマネー情報サイト「Humble Dollar」のJonathan Clements氏は話します。

「ここからの成長は爆発的です」(Updegrave氏によれば、上述の13年目の時点で、月の掛け金485ドルに対して運用益は500ドル以上になるとのことです)。

もちろん、一貫して安定した成長を期待できるわけではありません。給与が上がっていくとしても、物価も上昇していきます。利回りのレートも変動するし、あなた自身が掛け金を拠出し続けられる能力があるかも問われます。

ほかの投資家たちと同じく、挫折を味わうことがあるかもしれません。しかし、あなたはきっと立ち直り、「バーゲン価格で株を手に入れる」と、Clements氏は言っています。

とはいえ、Updegrave氏が指摘するように、リタイアのための投資を考えるときには、クロスオーバーポイントに達することを目標とすべきではありません。長い期間、安定的に貯蓄し続けることで、リタイア後の生活を快適なものにする、という意識のほうが大切です。

投資は時間のかかるゲームですが、クロスオーバーポイントのことを頭に入れておけば、市場が乱れたときや最初の何年かの投資効果が実感できない期間にも、信仰を保ち続けることができるでしょう。

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Alicia Adamczyk - Lifehacker US[原文