東日本大震災を大きな契機として国内でも高まった「防災」の意識。以降も多くの天災が発生しましたが、情報伝達のスピードや協力体制など、多くのことが変わったように思います。

とはいえ、いつ来るのか分からない災害に向けて準備をするのはとても難しいこと。たとえば会社や学校の避難訓練なども、習慣だから参加するイベントという気持ちになっていませんか。

そんな「防災」に対する意識を変えようと奮闘する若き女性の姿が、IBMのWebメディアMugendai(無限大)にて紹介されていました。

内定式直前の東日本大震災。募る被災地への思い

登場していたのは、防災を身近にするさまざまなプロジェクトを手がける一般社団法人「防災ガール」の代表・田中美咲さん。田中さんは、大手IT企業の内定式直前に東日本大震災を経験。いったん入社はしたものの、「被災地のために何かしたい」という思いを捨てきれず、1年ほどで退職の道を選びます。

その後は、福島県庁、各市町村、広告代理店、地元新聞社などと協力し、福島県外へ避難された方向けの情報発信や、ゲーミフィケーションを取り入れた避難訓練プログラムの提案によって8社もスポンサーを集めるなど、その活躍の幅を広げていきます。

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Image: Mugendai(無限大)

そんな田中さん率いる「防災ガール」の初期のコンセプトは、「防災をもっとオシャレでわかりやすく」。地味になりがちな分野にもデザイン性ファッション性を取り入れることで、それまでビジネスにはなりにくいと思われていた「防災」に変革をもたらしました。

田中さんは現在、その考え方をさらに一歩進め、「すべてのものに防災をインストールする」と表現し、以下のように語っています。

デザイン性が加わっても防災はまだまだ“非日常”で、私たちの生活に落とし込みづらいという現実は今も変わりません。だからこそ、従来の防災である非常食や避難訓練と行った枠組みではなく、すべてのものに防災をインストールし日常化することを目標に、防災の再定義を始めようとしています。

例えば、机の構造。机の下部分にジェル状の素材を付ければ、地震が起こった時に万一机が破損しても、下に隠れていてケガをしにくくできる。また、蛍光灯の色を薄く覆うカバーのようなものがあれば、破片が落ちてくる可能性を軽減できる。ほんの少し視点を変えるだけで、防災はもっと身近になると考えています。

進化し続ける「防災ガール」。次の目標は「生き抜く力」を身につけること

現在は滋賀県長浜市に移住し、同市と連携した「生き抜く知恵の実験室 “WEEL(ウィール)”」というプロジェクトを立ち上げた田中さん。これは、古来の日本の文化・暮らし・伝統から、現代にも活かせる「生き抜く力」や「防災のあり方」を見つけ出すための試みとのことで、田中さんたちの移住もその一環なのだそう。

この実験的な取り組みに至った経緯について田中さんは、防災には「深く思考すること」が必要不可欠だと判断したからだと語っています。

現在の日本のように、生まれたときから周囲にモノや情報があふれていると、人は1つひとつの物事に対して深く思考する力を失いかねない。そうした所に、災害をはじめ想定外の出来事が起こると対応の仕方がわからず、いとも簡単に諦めてしまう。そうならないためには、「生へのこだわり」を持ち、決して思考停止せず、疑問を持ち続けること。そして決断する力をつけることが、結果として、「生き抜く力」につながるのではないでしょうか。

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Image: Mugendai(無限大)

「防災」という、一見ビジネスとはかけ離れた領域に、デザインという概念を持ち込んだことでそれを具現化した田中さん。その飽くなき挑戦の続きは、Mugendai(無限大)よりお楽しみください。


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Source: Mugendai(無限大)