ガジェットを見捨てないで、ソニー…

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ガジェットを見捨てないで、ソニー…
Image: Wikimedia

仕方ないのかな…。

最近「ハードウェアからコンテンツなどの分野へのシフト」が噂されていたソニー。そして先日発表された中期計画。米GizmodoのRhett Jones記者は、いちソニーファンとして「傷つけられた」と書き記しています。


ソニーCEO・社長の吉田憲一郎は、5月23日に投資家向けに中期計画──収益を改善するための3カ年計画を発表しました。サービス・半導体・AI/ロボティクスに対して重点的に投資していくそうです。ソニーファンにとって重要な点は、ソニーの未来からガジェットが抜け落ちていることです。

発表に先だって、吉田社長がコンシューマ向けハードウェア開発から離れる動きを発表し、それについて正確には語らず、語ることもガジェットとは関係ないのではないか?という噂が広がりました。彼は過去のコンテンツに関する経験と収益性の高い生命保険ビジネスでの成功を踏まえ、将来ソニーが提供するサービスに焦点を当てました。もしソニーがコンシューマハードウェアに大きく賭けているなら、そう公言しませんが。

数世代に渡ってハードウェアビジネスを発明・刷新し、ウォークマンやBlu-rayプレイヤー、フルサイズミラーレスカメラといったイノベーションを生み出した会社であるソニーにとって、これは大転換のようです。しかし、注意して見ると嫌な感じです。

吉田社長の前任である平井和夫は2012年からソニーのトップに立ちました。当時ソニーの株価は2倍以上でしたが、ハードウェアビジネスはどれも2011年以来下り坂。

ハードウェアの総売上台数は2011年には8110万台でしたが、2018年の売上台数は推定4130万台に減少業界トップの製品を出しているにも関わらず、カメラ部門の売り上げ台数はこの8年間で2100万台から推定380万台まで落ちました。スマートフォンによる影響に打ち克てなかったのです。ではスマートフォンについてはどうかと言うと、かつては力強かったスマートフォンの売り上げ台数は、アジア圏外でのマーケティング失敗とベゼルレスといったデザイントレンドへの乗り遅れの中で、2250万台から1000万台にまで縮小しました。

ソニーのハードウェアビジネスでゆいいつ輝いていたのはPlayStation 4の売上でした。しかし、旬はほぼ過ぎ去っていて、直近で収益に占める売上高は18%下がり、2018年にはさらに下落する見込み。吉田社長は、PS4がライフサイクルの終わりにきていること、すでに7400万台以上を売り上げており、2018年にはさらに下落する見込みを示しました。

ですが、ソニーはゲーム関係の収入がPS4本体売上の減少を補うと見込んでいます。オンラインネットワークへの有料購読者がここ2年で64%も増加しているのです。

これは最近のソニーのビジネスについて重要な点を明らかにしています。ソニーがまだゲームハードウェアを続けているのは、オンラインゲーム・購読サービス・ソフトウェア・ストリーミングの成長のためなのです。別の言い方をすれば、本体の売上が落ちてなおPS4はまだ収入源、吉田社長の言葉を借りるなら「キャッシュカウ(金のなる木)」なわけです。

それを考慮して、吉田社長のプレゼンテーションでは、人気コンテンツ・DLC・PlayStation Network・音楽・新しく生まれ変わった映画スタジオが将来的に収益を得るための鍵として強調されました。実際、いちばん大きなニュースは、ソニーがEMIの音楽ライブラリの60%を約2億ドルで買い取り、210万曲を獲得するというもの。この取引はEMIの所有権の最大90%をソニーにもたらします。今月初めに、ソニーは所有するSpotifyの株式の半分を1億ドルに近い額で売却しましたが、それはソニーが音楽ライセンスビジネスに注力する予兆だったようです。

いちソニーファンとして、この大転換には傷つきました。今年、私は4年前に発売されたミラーレスカメラ・α7Sを買い、長い間でもお気に入りのガジェットになりました。PS4は数年前に買ったのですが、一時期離れていたゲームの世界に私を引き戻してくれました。苦闘するストリーミングサービスVueも使っています。いいんですけどねー。米Gizmodoにやってきたソニー製品の中にもすばらしいものがありました。PlayStation VRはエントリー向けVRゲームデバイスとしては最高ですし、ワイヤレスヘッドフォン・MDR-1000Xも極めて優れた製品でした。ガツンとくる製品ではありませんでしたが、優れた中価格帯のスマートスピーカー・LF-S50Gも出しています。

たぶんこの転換が意味するのは、得意な製品は作り続け、そうでない製品はやめていくということでしょう。ソニーのモバイル向けカメラチップは、iPhoneを含めスマートフォン業界で広く採用されていますが、ソニー製スマートフォンはそれほどのファンを得られていません。たぶん、スマートフォンビジネスにおける損失をカットすることはほかの領域を助けるでしょう。ソニーは追加で9億ドルをイメージセンサーに投資することを約束しましたが、スマートフォンについては何も言いませんでした。それなのに、ソニーの最新スマートフォンはまるでまたスマートフォンに本気になったかのよう

実のところ、伝統的なコンシューマ向けテクノロジーにおけるイノベーションは鈍化しています。人々はかつてほど頻繁にスマートフォンやカメラを買い替えるべきだとは感じていません。新しいカテゴリーは明らかな成長ポイントとして浮上してはいません。Apple(アップル)でさえ、収益において小さな割合しか占めていない購読サービスを強力に推し進めており、ソニーのそれは遙かに小規模ですが、ソニーが同じ方向に進むことには意味があります。私たちはソニーがかつてハードウェアビジネスを建て直したのを目撃しています。その見通しがつくまで様子を見守るべきなのでしょう。

Image: Wikimedia
Source: Bloomberg (1, 2, 3), Sony (1, 2), MarketWatch, Hollywood Reporter, billboard, engadget, Twitter

Rhett Jones - Gizmodo US[原文
(かみやまたくみ)