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恐竜が誕生する頃の地球に「200万年にわたる降水量&洪水爆増時代」が突如現れて劇的な環境の変化がもたらされた


46億年といわれる地球の歴史の中では、生物が大量絶滅する時期が何度も訪れたり、「全球凍結」と呼ばれる氷に閉ざされた時代が訪れたりと、非常に長い時間軸の中で大きな変化が繰り返されています。現在から2億5000万年前から約5000万年続いた三畳紀の時代は気温が高く、非常に乾燥した環境が存在していたのですが、その中には200万年にわたって雨の量が劇的に増加し、環境が変化して生態系が大きく変化した時代が突如として出現していました。

That Time It Rained for Two Million Years - YouTube


今から2億5000万年前、地質時代上の三畳紀に分類される時代の地球にはパンゲア大陸と呼ばれる超大陸が存在していました。


「現代の大陸の全てが集まっていた」と言われるパンゲア大陸の内陸部ではほとんど雨が降らず、荒涼とした砂漠が広がっていたと考えられています。


そんな状況が一変したのが、2億3400万年前から2億3200万年前にわたる200万年間のことでした。この時期は「カーニアン階」と呼ばれており、世界中で突如として降雨量が激増したことがわかっています。


雨は世界中で洪水を引き起こしました。この時起こっていたのは、多くのものが流される「大洪水」ではなく、小規模~中規模な「普通の洪水」だったとみられますが、普通の洪水が200万年にわたって頻繁に発生することで、生き物を取り巻く環境は激変。そのため、この時期には「カーニアン階絶滅」と呼ばれる動物の大量絶滅が起こっています。


ペルム紀から三畳紀の始めごろにかけて、地球はとても暑くて乾燥していました。その痕跡は、地層を見ればわかります。この時代の地層には主に赤く焼けた石が含まれており、植物が存在したことを示す炭素の痕跡はほとんど発見されません。


このような乾燥した世界にも、恐竜は生息していました。しかし、それらはまだ初期の爬虫類と哺乳動物の祖先が住む世界で、両者は自分たちが生きる場所をめぐって争っていたと考えられています。当時の世界を支配していたのは、ワニのような外観の肉食性の爬虫類、クルロタルシ類でした。


その一例が、長い後脚を持つオルニトスクス。二本脚で立つことができ、獲物を狙う時に速く走ることができたと考えられています。


一方、哺乳類の祖先であるディキノドン類もこの時代に生息していました。これは四肢で歩くディメトロドンよりも現代の哺乳類に近い生き物であると考えられています。


これ以外にも多くの生き物がペルム紀から三畳紀の初期にかけて多く生息し、当時の高温で乾燥した環境に適応していた考えられていますが、それを一変させる大変化が2億3400万年ごろに起こりました。


人間が誕生する前の時代は「地質時代」と呼ばれ、各時代は化石の分布や地下の地層の特徴を分析することで分類されます。1990年代初頭にイギリスの研究チームは、本来は乾燥しているはずの三畳紀の地層の中に、予想もしなかった特長を持つ層が存在していることを発見しました。


先述のように、三畳紀の地層は赤く、あまり風化していない岩が多いのが特徴です。しかし研究チームは、川の流れで作られるような丸みを帯びた石や、湖で沈殿物が積もった痕跡、そして植物の残骸が炭素になって堆積している層があることを発見しました。これは地表に雨が降って水が流れたことを意味するもので、本来は乾燥しているはずの三畳紀の中に大量の雨が降った時代があることを示しています。詳しい調査の結果、その時代は実に200万年間にも及ぶことが明らかにされています。


しかも、この変化は現代のイギリスから北米、中東から極東アジアにあたる広い地域で起こっていたことがわかっています。つまり、この気候の変化は極地的なものではなく、パンゲア大陸の全土で起こっていたものとみられています。


やがて、この特徴的な現象は「Carnian Pluvial Episode(CPE:カーニアン階多雨事象)」と呼ばれるようになりました。


カーニアン階は、三畳紀(Triassic Period)の中間あたりに位置する時代を指します。


CPEが起こった時代の年間平均降水量は、平均で1400mmと推定されています。これは、アメリカ内陸部にあるユタ州の約4倍にあたります。ユタ州は乾燥した地域にあるために年間を通じて雨が少ないのですが、そこに通常の4倍もの雨が降るようになると、環境が一変することは想像に難くありません。なお、日本の平均年間降水量は約1700ミリであることから考えると、常に土砂降りの雨が降り続くような状況ではなかった模様です。


このように、CPEはパンゲア大陸の広い地域で雨が降り、定期的に洪水が起こるという現象が200万年間も続いた時代ということになります。


この気候変化により、地球上では大きな変化が起こりました。その最大といえるものが、恐竜の大増殖です。CPEが始まる前の時代の地層から発見された脊椎動物の化石のうち、恐竜の仲間が占める割合は5%程度でした。


しかし、CPEの終わりごろの地層では、その比率が90%に急増していることがわかっています。つまり、この200万年の間に地上では恐竜の数が増えたことが示されています。


果たしてどのような理由で恐竜が突如として増えだしたのでしょうか。その理由は、大量の雨によって植物がそれまでよりも巨大化したことが挙げられます。この時代には、気候の変化により多くの植物が巨大化したことで、動物が食料としていた葉の位置がそれまでよりも高くなってしまいました。こうなると、背の低い草食動物は食べ物にありつけなくなり、次第に個体数が減少してしまいました。


また、ディキノドン類も草食動物でしたが、歯を持たず、しかも胃石と呼ばれる石を飲み込んでおいて消化に役立てる能力も持っていなかったため、食べることができる植物は限られていました。


ディキノドン類の「ふん」の化石を調査すると、CPEの時代にディキノドン類はシダ類のような柔らかい植物しか食べられていなかったことが判明しています。


一方、歯を持つ動物や、胃石を使うことができる動物のふんからは、木の幹を食べていたことが明らかになっています。


つまりこの時代には、背の低くて柔らかいシダ類が気候変化によって大きな木へと変化し、動物を取り巻く食糧事情が大きく変化したというわけです。


さらに連鎖は続き、ディキノドン類などの動物を食料としていた肉食動物も、この時代には数を減らすことになったとみられています。


いったいなぜこのような気候の大変化が起こったのでしょうか。その答えは、CPEが始まる少し前の2億3500万年前に、現在のアラスカやカナダのブリティッシュコロンビア州にあたる地域で「Wrangellian Eruptions(ランゲル噴火)」と呼ばれる大規模な噴火活動が始まったことにあります。


この噴火活動は実に500万年間も続きました。噴出した溶岩量も膨大なもので、流れ出した溶岩は6kmもの厚さに及びました。


その際に放出された二酸化炭素により、地球の気温はセ氏3度~10度も上昇しました。全球的に気温が上昇すると、次第に海洋から蒸発する水蒸気量が増加するようになり、それに伴って降水量が増加。つまり、、CPEは火山の噴火活動の活発化が引き金となり、数百万年の時間軸を経て降水量が増えたことで引き起こされた現象だったというわけです。


逆に、このCPEの時代はどのようにして終わりを迎えたのでしょうか。


CPEの時代、空気中の二酸化炭素濃度は非常に高く、その状況が数百万年にわたって続きました。そうすると、植物はより多くの二酸化炭素を吸収して大きく成長します。このようにして、「炭素固定」が行われます。


また、雨によって侵食された岩石や、海洋にも炭素は吸収されます。


ランゲル噴火の活動が終わりに近づくと、二酸化炭素の排出量は低下しました。しかし、それまでの環境により増加していた植物の活動や地殻への吸収により炭素は徐々に固定され、大気の二酸化炭素濃度は低下。それに伴い、世界の降水量は徐々に減少し、ついにCPEは終わりを迎えることになりました。


その証拠に、ランゲル噴火の活動が終わった2億3000万年前になるとパンゲア大陸の気候はCPE以前のような暑く、乾燥した状態に戻ったことが明らかになっています。この状況は、1億8000万年前にパンゲア大陸の分割が始まるまで続きました。


約200万年にも及ぶCPEの時代は、46億年という地球の歴史から見ればほんのわずかなものです。しかし、その時代に起こった変化は現代の地球を形作るものともなっています。たとえば、それまでの背の低い植物が変化して、針葉樹林のような背の高い植物が出現したのはCPEによる変化の結果です。


また、雨が少なくなり、CPEの時代が終わりを迎える頃、地球は本格的な恐竜の時代を迎えることになりました。

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in サイエンス,   生き物,   動画, Posted by darkhorse_log

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