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今までとこれからのインターネットを知るための貴重な情報が詰まったレポート「Internet Trends 2018」


「ネット広告」「eコマース」「中国のネットビジネス」など世界のインターネットに関わるさまざまな情報と見解が詰まったレポート「Internet Trends 2018」を、ベンチャー投資家でインターネット・アナリストのメアリー・ミーカー氏が発表しています。

2018 Internet Trends — Kleiner Perkins Caufield Byers
http://www.kpcb.com/internet-trends




◆インターネットの普及
2018年のインターネットユーザー数はついに世界人口の約半数、およそ36億人に達したのこと。インターネットユーザーの増加率は12%から7%に下がりました。インターネットの普及率が50%を超えたことにより、普及率の増加はピークを迎えていて、ここからさらにインターネットの普及を進めるには難しいものがあるとミーカー氏は分析しています。


これだけインターネットの普及が進んだ理由は、スマートフォンの性能が年々向上していて、iPhone XやGalaxy S9/S9+などの高級モデルも出ながら、スマートフォンの平均販売価格自体は下がり続けているためとのこと。コストの削減は先進国市場でのスマートフォンのシェアの拡大を意味します。


Wi-Fiネットワークも世界的に大きく拡大していることも理由のひとつで、2010~2011年から見せている急激な普及率の伸びは衰える気配がありません。


特に中国では、携帯電話市場は爆発的に大きくなっていて、2012年に比べるとその規模は5倍以上となっています。


◆インターネットの利用状況
インターネットに接続する人の利用時間も増加の傾向にあり、アメリカ人成人は2017年に1日あたり5.9時間をデジタルメディアに費やしています。そのうち約3.3時間がモバイルに費やされているとのこと。


また、ネットゲームやTwitchなどのゲーム実況が盛んになったこともあり、ムービーをストリーミング再生することも当たり前になりました。例えばTwitchのストリーミング時間は、この6年間でおよそ5倍にまで増えています。


ネットサービス市場は全体的に規模が拡大していて、Facebookは22億、Pinterestsは2億、Spotifyは1億7000万、Netflixは1億2500万のユーザーを抱えています。


インターネット企業は膨大な個人情報を元に低価格でよりよいサービスを提供し、それによって価値が上がったサービスをユーザーはますます利用するようになり、取り締まる組織は企業によって個人情報が正しく使われるよう保証するという、三者の存在によって今日のインターネット業界は支えられていますが、現実には個人情報が膨大過ぎて混乱している状況です。重要なのは、個人情報の漏えいなど、意図しない結果を管理することであり、イノベーションと進歩を止めることは無責任だとミーカー氏は述べています。


◆テクノロジー企業の拡大
アメリカ・MSCIの時価総額のうち、25%をテクノロジー企業が占めています。


研究開発費・資本支出のトップ企業15のうち、6つがAmazon・Google(Alphabet)・Intel・Apple・Microsoft・Facebookというテクノロジー企業で、そのどれもが成長率がプラスとなっています。


テクノロジー企業の平均成長率は9%にも達しており、エネルギー系やヘルスケア系など、他の研究開発業種よりも成長率が高くなっています。


◆eコマース(電子商取引)
eコマースの成長は加速していて、全小売売上高の13%を占めるにまで拡大しています。


また、クレジットカードを使ったデジタル決済だけではなく、仮想通貨を使った取引も増加しています。仮想通貨取引企業・Coinbaseのユーザー数は2017年1月から4倍にまで増加しています。


インターネットで商品を見つける手段として、ソーシャルメディアは欠かせません。FacebookやTwitterなどのソーシャルメディアからeコマース取引成立に至ったケースを見ると、2015年にはeコマース市場全体の2%ほどだったのが、2018年第1四半期には6%にまで上昇しています。この急速な成長の波に乗るべく、ソーシャルメディアを利用するブランドや小売業者が多く存在しています。特にFacebookのクリックスルー率はこの1年で大きく上昇していて、Facebookが広告媒体としても需要が高まっていることが示されます。


特に、eコマース市場におけるAmazonの勢いはすさまじく、そのシェアは28%と、2013年から8ポイントも増加しています。


また、消費者の49%が商品を検索する際にAmazonを利用しており、Googleやbingなどの検索エンジンの利用者は36%となっています。ここから、本来コマースプラットフォームであるAmazonが広告プラットフォームへ、そして広告プラットフォームだったGoogleがコマースプラットフォームへ進化するという現象が生じているとミーカー氏は指摘しています。


インターネット広告ビジネス市場も年々拡大の傾向にあり、2017年には880億ドル(約9兆6000万円)に達しています。特にスマートフォンの普及に伴って、スマートフォン向けの広告がついにインターネット広告支出の半分を超えています。


◆中国の台頭
中国では、国内の全小売売上高のうち、20%がeコマースによるもので、世界でも類を見ないほど急成長を遂げています。中国は、アメリカと比べてプライバシーよりも利便性を重視する傾向が強く、このことが中国企業の競争力を押し上げているとミーカー氏は論じています。


世界でのインターネットをリードする企業トップ20のうち、9社が中国の企業となっていて、中国が世界最大のインターネット企業のハブとして成長していることを意味します。


中国では、オンライン市場に対抗するべくオフラインの小売業者がさまざまな試みを行っています。例えば、中国大手の靴小売企業であるBelleは、靴にチップを埋め込むことで店舗のどこに商品が置かれているかを把握しています。また、店内の人の動きを検知し、どういうタイミングで客が靴を買うかを正確に予測することができます。さらに、足や靴をスキャンすることで、どんな靴が客に適しているかも調べることができるとのこと。


中国で生まれた通販サイト・Alibabaは毎月数十億件の取引を処理していて、コマースプラットフォーム・物流・支払いを包括するエコシステムを構築しています。中国外でもそのシェアを急拡大していると指摘されていて、実際、市場規模はAmazonが上回っているものの、Alibabaの売り上げの約8.4%が中国国外によるもので、前年の7.9%から上昇しています。


特に、中国ではスマートフォン向けのストリーミング再生サービス市場が急成長しています。2018年3月における中国でのスマートフォン利用目的の統計ではスマートフォンの総利用時間は32億時間となっており、そのうちムービー視聴に費やしている時間は全体の22%で、2016年3月から利用時間が大きく増加しています。


その中で急激に視聴時間が増えているのが、テレビ番組や映画のような長いムービーではなく、再生時間が数秒で終わる短いムービーです。これはTik-Tokなどのアプリが影響しているとのこと。


また、中国における長いムービーのストリーミング再生サービスは、2017年になってついにその予算がテレビ局のものを上回るほど成長したと報告されています。


◆機械学習とデータ処理
Googleの機械学習による音声認識の精度は95%を超え、2017年にはスマートスピーカー市場が大きく拡大しました。例えば、2017年第3四半期ではAmazon Echo利用者が2000万人だったのが、第4四半期では3000万人以上に増加しています。また、Amazon Alexaのスキルも2018年には3万種類を超えていて、ここ数年で爆発的に増えています。


データの収集と最適化は50年以上前から行われてきました。1950年代初めに政府がメインフレームの導入を決定し、社会保障・アメリカ航空宇宙局(NASA)・アメリカ内国歳入庁(IRS)などの多くの政府組織、ウォルマートやVisaなどの民間企業でも使われてきました。


そうしたデータ収集・最適化・共有はコンピュータの進歩とともに再び加速しています。2006年にはAmazonのAmazon Web Service(AWS)が登場し、2007年にはAppleがiPhoneを発表し、消費者向けモバイルデバイスの普及が始まりました。


スマートフォンなどモバイルデバイスが台頭してきたことによって、収集・最適化しなければいけないデータの量は急激なペースで増加しています。そのことは、AppleのApp Storeの規模拡大を見ればよくわかります。データは顧客を満足させる要因となります。そこで登場するのがクラウドコンピューティングとAIによるデータ解析です。


膨大なデータがそろうことによって機械学習によるAI性能のアルゴリズムがより洗練されるようになりました。人工知能のプラットフォームは、Amazon・Microsoft・Googleという3大巨頭が激しい競争を繰り広げています。人工知能プラットフォームの研究開発の基盤となるクラウドサービスとして、AmazonはAWS、MicrosoftはAzure、GoogleはGoogle Cloudを提供しています。その中でもっとも勢いがあるのはやはり2006年から展開しているAmazonのAWSとのことで、世界的な収益の約50%をAWSが握っています。


しかし、データ共有は多面的な課題を生み出します。「あなたが嫌いだからといって、私があなたを愛していないということではない」というこの漫画のような関係は、まるでデータと消費者の関係のようだとミーカー氏は例えています。インターネット上の消費者の79%が、買い物などの個人的な利益のために個人情報を共有します。しかし、個人情報を共有して得られた利益が思ったほどでもない場合、64%が特定のアプリを削除するという行動に出るそうです。つまり、データの管理を考えなければ、ユーザーを固定させることはできないとミーカー氏は論じています。

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in メモ,   ネットサービス, Posted by log1i_yk

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