お腹が空いたとき、簡単に作れて素早く食べられるのが、チャーハンです。得意料理とされている方もいるかもしれませんね。

シンプルなチャーハンもいいですが、たまにはアレンジを加えてみるのはいかがでしょう。高菜チャーハンなんて、定番ですよね。高菜漬けを入れるだけで、味もがらりと変わります。

でも、待ってください。はたして、チャーハンに入れておいしい漬物は高菜だけでしょうか。もしかしたら、高菜を上回るものが存在するかも。

そんな疑問を解消すべく、今回は「チャーハンに入れるとおいしい漬物選手権」と題して調査を進めてまいります。

用意した漬物は、茄子の浅漬け、たくあん、柴漬け、白菜の漬物、きゅうりのぬか漬け、福神漬け、べったら漬け、ガリ、の8品。

漬物は世界の文化なので、ザーサイやピクルスなどもカテゴリーに入ります。とはいえ、広げて考えると膨大な量になってしまうため、今回は和風の漬物に限定しました。

作り方は高菜チャーハンと同じで、ごはんと漬物をほかの具材と一緒に炒めて作ります。高菜以上のおいしさを発揮するものはあるのでしょうか。

選定員は、料理研究家のオガワチエコ、アシスタントの千葉あゆみ、料理カメラマンの大崎えりやの3名。周囲をかえりみず、レンゲで一気にかき込みたくなるチャーハンはいったいどれか?「イマイチ」「普通」「おいしい」の3段階に分けてご紹介します。

イマイチ:茄子の浅漬け

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Photo: 大崎えりや

大きめの茄子は、包丁で細かく切ってから使いました。あっさりとして朝食などに相応しい漬物ですが、チャーハンとの相性はイマイチでした。

オガワ:「食感が良くない。歯ごたえもなく食欲が湧いてこない」

千葉:「なんか、チャーハンに虫がたかっているように見える。見た目から食べる気が失せる」

大崎:「漬物の味が邪魔。入れないほうがおいしい」

イマイチ:白菜の漬物

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Photo: 大崎えりや

あっさりしているうえに、柚子の風味が加わって爽やか。それほど主張がないように思えますが、入れないほうがいいという意見が多かったです。

千葉:「柚子の香りが強くて、チャーハンのいいところが消えている感じ」

大崎:「食感は高菜に似ているけど、味を比較するとやっぱり劣る。高菜には勝てない」

オガワ:「せっかく食欲をかき立ててくれるごま油の風味が、柚子に負けてしまっている。もったいない」

イマイチ:きゅうりのぬか漬け

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Photo: 大崎えりや

鮮やかな緑の色合いが、仕上がりにどう影響するのか懸念されましたが、大方の予想通り評価は伸びず。代表的なおふくろの味ですが、チャーハンは受け入れないようでした。

オガワ:「チャーハンにする意味がないかな。できれば別々に食べたい」

千葉:「ぬかの味がちょっと強い。やっぱりぬか漬けは、白いごはんと食べるのが一番」

大崎:「爽やかな感じもあるけど、きゅうりの青臭さも強く感じてしまう」

以上が、「イマイチ」の評価となった3品でした。どれも、朝食に出てくるイメージのある漬物だったように思います。油を使ったチャーハンと合わせると、せっかくの爽やかな風味が損なわれるせいかもしれません。

それでは続いて、「普通」の評価となった漬物を発表します。

普通:柴漬け

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Photo: 大崎えりや

きゅうりや茄子を刻んで、赤紫蘇の葉で塩漬けしたのが柴漬けです。ときどき無性に食べたくなる漬物ではあるものの、チャーハンと合わせることでの相乗効果はそこまでありませんでした。

オガワ:「おいしいんだけど、柴漬けの味がやや強い。これなら入れないほうがいいかも」

千葉:「カリッとした歯ごたえがいいね。その勢いで食べられる」

大崎:「酸味がちょっと強い。量を減らせばいけるのかな……」

普通:たくあん

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Photo: 大崎えりや

大根を糠と塩などで漬けたのが、たくあん。黄色が卵の色ともよく合い、全体の鮮やかさが増すものの、黄金のチャーハン……との評価までは至らず。

大崎:「見た目に高級感がある。でも、味はそれほど……」

千葉:「これも食感はいいんだけどね。チャーハンに入れるほどのものではないかな」

オガワ:「たくあんの香りとチャーハンのごま油の風味意外と合う。けっこう食べやすい」

普通:べったら漬け

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Photo: 大崎えりや

大根を米麹や砂糖で漬けたのが、べったら漬けです。独特の甘さが食べる者に抵抗を感じさせるのではと懸念されましたが……この評価は大健闘と言えるのでは?

オガワ:「米麹が効いて旨みとコクが増している。期待していなかっただけに、おいしく感じる」

千葉:「ちょっと甘ったるいけど、最後に鼻に抜けていく香りは好き」

大崎:「上品な味。中華がだいぶ和風に近付いた感じがする」

以上が、「普通」となった3品です。どれもごはんのお供に相応しい漬物だけに、評価も悪くはありませんでした。それでは続いて、「おいしい」の評価となった残り2品をご紹介しましょう。

おいしい:福神漬け

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Photo: 大崎えりや

大根や茄子など、いくつかの野菜を刻んで醤油やみりんに漬けたのが、福神漬けです。カレーに添えるイメージの強い漬物ですが、チャーハンに対しても大きな影響力を発揮しました。

オガワ:「カレーが欲しくなる味。このまま、あんかけカレーチャーハンにしてもいいかも」

大崎:「子どもが好きそう。こういうメニューとして出しても悪くないと思う」

千葉:「歯ごたえもいいし甘みも丁度いい。もうひとつのカレーのお供、らっきょうバージョンも試してみたいね」

おいしい:ガリ

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Photo: 大崎えりや

薄く切った生姜を酢漬けにしたのが、ガリです。お寿司の付け合わせとしてお馴染み。チャーハンに合わせてみたところ、満場一致の高評価となりました。

オガワ:「生姜のピリッとした刺激が加わって新鮮に感じる。大人の味と言えるかも。隠し味として使っても良さそう」

大崎:「チャーハンのおいしさが引き立ってる。辛みは子どもは苦手かもしれないけど……」

千葉:「よくチャーハンの上に紅生姜がのってるけど、ガリは新しい。色合い以外ならこっちのほうがいい


以上が、「チャーハンに入れるとおいしい漬物」の検証結果となりました。

もっとも評価が高かったのは、「福神漬け」と「ガリ」。どちらも定番の組み合わせがあるものの、それを打ち崩した斬新さが評価に繋がったのかもしれません。

高菜チャーハンを上回るおいしさ……とは、好みも分かれるので言いづらいですが、意外性という意味で試してみても損はないと思います。

これからますます気温が上がってくると、食欲が低下してきます。普段の食事も飽きないように変化をつけて、ガッツリとお召し上がりください。

レシピ・文オガワチエコ

料理研究家。ル・コルドン・ブルー、東京會舘クッキングスクールで料理と製菓を学ぶ。著書に『彼の家に作りに行きたい!純愛ごはん』(セブン&アイ出版)、『おにぎらずの本』(泰文堂)など。道具も調味料もない彼の家で、いかに間単に失敗なく美味しい料理を振舞うかに特化したレシピ本になっている。2015年9月11日には新刊『スティックオープンサンドの本』を出版。

Photo: 大崎えりや