ついに公開された『デッドプール2』。今作もまた『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』ほどではないにせよ、ネタバレなしではしっかり語れないし、SNSでは内容を気楽に語れないタイプの展開だらけの映画でした……と、いうわけで今回もガッツリとネタバレありでレビューをしていきます!
作品エンディング周辺の解説も行ないますので、まだ映画を見ていないという方は今すぐブラウザを閉じて劇場へ!
ストーリー
前作がR指定(日本ではR-15)の大人向けスーパーヒーロー映画でありながら、予想外の大ヒットを記録し、期待が高まりに高まっていた作品ですが……前作が好きだった人ならちゃんと楽しめる、ファンの期待にしっかり答えるタイプの作品でしたね!
ストーリーは、恋人ヴァネッサを殺されたことで自暴自棄になったデッドプールが、家族を殺され犯人を追って未来からやってきたサイボーグ戦士のケーブル、また自分を虐待する孤児院の所長を殺そうと恨みに駆られ、ケーブルの家族殺しの犯人でもあるミュータント少年のラッセルと出会うなかで始まっていきます。デッドプールは彼らとぶつかり合いつつ、恋人の幻覚に導かれながら心を入れ替えていく……という感じのシンプルなもの。かつ、メインの悪役が登場しないという、スーパーヒーロー映画としてはちょっと珍しい物語です。
メインのヴィランが不在といっても、アクションが抑えめだったりするわけではありません。今作は『ジョン・ウィック』や『アトミック・ブロンド』など、カッコよくて痛そうなアクション映画で知られるデヴィッド・リーチ監督作品ということもあり、アクションの量は凄まじく、いちいち派手でカッコいい。実写でのアクションの出来がよすぎて、それに比べてCGのアクションが微妙に感じてしまうのはご愛嬌。
前作が比較的低予算ながら大成功した背景には、CG会社出身のティム・ミラー監督の功績によるところが大きいと個人的には思っています。なので、スタント出身のデヴィッド・リーチ監督に交代してしまって大丈夫かと少し心配していたのですが、前作以上に独創的なヒーロー映画に。アクションも満載で、これは完全に杞憂に終わりました。
特に独創的だったのは、予告編やその他のマーケティングで売り込んでいた新チーム「Xフォース」の面々を一気に事故死させるところ。キャラクターがたいして活躍せずに退場しちゃうのはこういう作品では珍しくないのですが、全力で笑いに取りきたのが最高でしたね。
キャラクター
そんなふうにまとめて片付けるいっぽうで、生き延びた新キャラのドミノやケーブルは死んでいった他のキャラの分まで魅力的です。特にドミノが持っているパワーの幸運描写は楽しかったので、今後も活躍が見てみたいですね。
ケーブルは、コミックではXメンのサイクロプスとマデリーン・プライアー(ジーン・グレイのクローン)の息子で、幼少で未来に送られ老戦士になって帰ってきたという複雑な設定。ですが、これを短くまとめるために映画ではいろいろカットして、未来からやってきたマッチョなサイボーグ戦士というザックリとしたまとめ方にしたのは英断だったと思います。何ならそのへんの話は、次回作あたりでやってくれればOK!
実はケーブルとデッドプールはコミックでも『ケーブル&デッドプール』という形で約4年も続く人気シリーズが展開されたほどの名仲良し(?)コンビ。今回の映画のストーリーに直接的に引用されているわけではないものの、映画ではすでに似たような関係性になっているので、こちらも今後が楽しみです。ちなみにコミックは日本語版も出ているので、気になる人は読んでみて!
実はデッドプール、ケーブル、ドミノは3人とも、『ケーブル&デッドプール』も手がけたライターのファビアン・ニシーザが、アーティストのロブ・ライフェルドと一緒に生み出したキャラクターだったりします。
ちなみにデッドプールがドミノの生みの親を、字幕では「絵が下手な奴だろ」とディスっていましたが、原語では「足が描けない奴だろ」とディスっていて、実はこれロブ・ライフェルドのアートによく寄せられる批判のひとつだったりします(実際のところ、なるべく足を描かないようにしているアーティストは少なくないのですが……)。
さらに、今回なんの活躍の場もなく死んでしまったシャッタースターも、ニシーザ&ライフェルドが生み出したキャラクターです。ビジュアル的再現度も異様に高くて楽しみだっただけに、アクションが見られなかったのはちょっと残念……!
その代わり、前作ではちょっとしか出てこなかったXメンのコロッサスが(劇中でも言及されてた)『X-MEN: ファイナル ディシジョン』よりも原作に近いルックスのジャガーノートと激しく戦ってくれたのは嬉しかったシーンです。
魅力的な小ネタのオンパレード
それと、もうひとつ嬉しかったところといえば、デッドプールが白くなるシーン。ラストバトルでデッドプールが灰で真っ白になっていましたが、あれは実はコミックの『Xフォース』でデッドプールが着ていた白黒のコスチュームの再現。かなり控えめな再現方法だったけど面白かった!
ほかにも、コミックに限らずたくさんの小ネタが詰まっていてとても紹介しきれないんですが、特に面白かったのはダブステップディスりなどの音楽ネタ。終盤のウェイドとヴァネッサが抱き合う感動的なシーンで、A-haの「Take on Me」のアコースティック版がかかりますが、実はストーリーと歌詞が重なってるだけじゃなく有名なミュージックビデオにも似せた構図になっていました。
しかも、このミュージックビデオは、コミックの登場人物が第四の壁を破って読者をコミックの世界に引き込み、さらにはコミックの外に飛び出してくるという内容。この部分がメタなネタをやるコミックのキャラクターであるデッドプールの特徴にも重なってるという、単純に80年代な曲を引用して笑かすだけじゃない冴えた使い方をしていました。
ちなみに今作の音楽を担当しているのは、『ウォッチメン』や『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズを手がけたタイラー・ベイツ。劇伴が前作以上にわざとらしいくらいのヒーロー映画っぽく壮大になっていたのも、ワクワクさせられると同時に笑いを誘うポイントになっていました。
『デッドプール』シリーズ、FOXが買収されても楽しく続きますように
という感じで、キャラクターもアクションも音楽もクオリティが高かっただけに、物語を進めるためにヒロインを冒頭で殺す冷蔵庫の展開(ストーリーの展開のために女性キャラクターをむごい目に合わせること。ヒーローが帰宅すると冷蔵庫に殺害されたヒロインが詰め込まれていたというコミックのエピソードが問題視され誕生した用語。英語では「Frigging」。ちなみにその発端のコミックが『グリーンランタン』なのは奇妙な偶然)はいくらなんでも陳腐すぎるのでは……と思ったのが残念なところ。
最後にケチをつけてしまいましたが、『デッドプール2』は前作で切り開いた奇妙で笑えるアクションいっぱいのヒーロー映画路線を全力で活かしつつ、さらに新しいところへ踏み込んで、面白さを倍増させてきたすごい作品です。
ディズニーがFOXを買収するなんて話もあったり(それがなしになりそうという話もあったり)しますが、綿密に歴史を組みあげていくMCUとはかなり別路線の、適当に歴史も変えちゃうお気楽なシリーズとしてこれからも続けていってほしい所存。
そんな今作の続編は、『Xフォース(正式タイトル未定)』としてドリュー・ゴダード監督の元、2018年の10月から撮影開始予定。残念ながらシャッタースターは登場せず、デッドプール、ケーブル、ドミノが中心の話になるようですが、今から楽しみですね。
映画『デッドプール2』は現在全国公開中!
Image: (C)2018Twentieth Century Fox Film Corporation
Source: 『デッドプール2』公式サイト, YouTube(1, 2), PROGRESSIVE BOINK
(傭兵ペンギン)