通知をハックする、画面を白黒にするなど、スマホの使用時間を減らすためのテクニックは巷にあふれています。

そんな手軽なハックを見つけるのは容易ですが、科学・健康ジャーナリストで『How To Break Up With Your Smartphone: The 30-Day Plan to Take Back Your Life』の著書を持つCatherine Priceさんは、こう警鐘を鳴らします。

小手先のテクニックでは、スマホとの関係性を変えることはできません。

「スマホを白黒にする」「1日40分しか使わない」などと宣言したところで、きちんとした根拠が背景になく、ランダムな制限をかけているだけ。

それよりも、まずは一歩引いて、現在の自分の習慣、理想的な習慣、理想的な生活について考えましょう。目的はスマホの使用時間を減らすことではなく、生活の中の時間を見つけることなのです。

とらえ方を変える

ただ制限をかけなければという考え方は、ダイエットと同じようなもの。進んでダイエットをしたいと思う人はいません。

それよりも、スマホを使わない時間を自分へのギフトと考えましょう。自分にとって本当に大切なものに触れられる時間が増えると思うことで、我慢しなければならない誘惑だったスマホを、時間泥棒と思えるようになります。

そうやって関係性を変えることが、人々の力になると私は考えています。

データで武装する

科学的な視点で問題をとらえることも、力につながります。Priceさんの本の最初の10章は、スマホが脳に与える影響に関する研究に焦点を当てています。具体的には、脳の使い方や脳に与える刺激によって、脳は変化するのだそう。平均的な米国人は、1日に4時間以上スマホを使っています。

本でも書いたように、1日4時間を費やせば、何ごとでもきっと上達するはず。ですから私たちは、それが何かを自問すべきです。私たちは、脳に注意力散漫を叩き込むトレーニングをすることで、自らの集中力をそいでいるのです。

注意力散漫のトレーニングにより、短期記憶と長期記憶を妨げることも上手になります。脳が情報を処理したり反復したりする時間を十分に与えられないからです。とりわけ長期記憶は脳内で新しいたん白質を作り出す必要があり、そのプロセスは注意力散漫によってすぐに阻害されるとPriceさんは言います。

それだけじゃありません。長期記憶が蓄積される方法は、一見無関係なもので構成されるネットワークのようなものなので、記憶どうしの関連性が強いほど、より深い洞察とクリエイティビティが得られます。脳にそのような関係性を築く時間を与えないと、深く考える能力やクリエイティブ思考を鈍らせることになります。

人間関係への影響を考える

Priceさんは、スマホが自分の脳だけでなく赤ちゃんの脳にも影響していることを知ったとき、スマホとの付き合い方を考え直さなければならないと目覚めたそうです。それは2015年の秋、深夜に当時6カ月の娘を見ていたときのことでした。

進化上、赤ん坊の目の焦点距離は、自身と親の距離になっていると聞いたことがあります。心のどこかにそれが残っていたのでしょう。娘のそばに座っていたそのとき、幽体離脱のような体験をしました。eBayでアンティークなドアノブを買おうとスマホをのぞき込んでいると、ふと娘が私をじっと見ているのに気付いたのです。焦点は完全に、私の顔に合っていました。

その瞬間が忘れられないというPriceさん。なぜなら、娘と母としての関係はもちろんのこと、人間どうしの関係として、そのような状況を娘の印象に残したくないと思ったからです。

目覚めから別れへ

さあ、本当に変わる準備はできましたか? まずは、Priceさんの言う「テクノロジートリアージ」からはじめましょう。トラッキングアプリを入れて、スマホを手にした回数、使った時間をチェックしてください。現在の行動をデータで把握するのです。何日かトラッキングを続けたら、次はいろいろなことに注意を払う期間。スマホ使用前後の感情の状態、よくスマホに手を出すシチュエーション、通知などによってスマホに注意を向けさせられる方法や回数などを意識します。

それらの情報を集めたら、今度は「スピードバンプ」を設けましょう。自分を抑えるための障害物を置くのです。FacebookやTwitterをブラウザからでなければ開けないようにSNSアプリを削除する、待ち受け画面に「なぜ私を手にしたの?」「今、何に注目したい?」といったビジュアルによる抑止力を働かせるなど、方法はいくつも考えられます。この段階こそ、最初に書いたようなテクニックを使う時期なのです。

トリアージが済んだら、次は環境を整えます。スマホの内外を問わず、あなたの注意力を奪うものを廃し、自分がこれと決めた習慣を支える環境です。

やめたい習慣のトリガーを取り除くには、やりたい習慣のトリガーでそれを置き換えなければなりません。

スマホで頻繁にメールをチェックしてしまう癖をなくすには、アプリを削除して、デスクトップだけをチェックしてください。通知に時間を奪われているのであれば、着信、チャット、予定表以外の通知をすべて切りましょう。

脳を訓練しなおす

習慣を変えるのと同時に、スマホによって奪われていた集中力を鍛えなおすことも重要です。Priceさんは、1日に何回か小さな静寂を取り入れる、紙の本を読む(スマホを切って)、瞑想するなど、正式なマインドフルネスの方法をすすめています。

24時間の試験的分離もオススメです。丸1日、スマホはもちろん、すべてのスクリーンとさよならするのです。極端なやりかたですが、それで得られる魔法を感じてください。そこで得られた考えこそ、あなたが前に進む道しるべを与えてくれるでしょう。

これらをすべて試しても、固定電話をほしいと思ったり、スマホがほしいと思うかもしれません。でも、Priceさんは決して、電話と縁を切ることをすすめているのではありません。

スマホとの別れとは、バスの下やゴミ箱に投げ入れることではありません。いつも寝食を共にし、いないと恋焦がれるような恋愛関係をやめて、友達に戻ろうと言っているにすぎません。それはいわゆるセフレのような関係かもしれません。境界線を決めて、健全な関係を築いてください。


Image: Sam Woolley/GMG

Source: Phone Break Up

Kirsten Akens - Lifehacker US[原文