レースは難しい。ただ速いだけじゃなくて、ペース配分やポジション取り、レースの組み立てなんかを考えていないと勝てない――前回、アジア選手権・鈴鹿大会のSS600クラス・レース1を終えて、そんな内容のレポートをアップしましたが、レース2は、それにさらに輪をかけて難しいレースになりました。
レースは序盤からレース1ウィナー、アズラン・シャーが飛び出します。オープニングラップから2番手以下との差を広げにかかりますが、伊藤勇樹が、ザクワン・ザイディがここに食らいつき…ってところで転倒者が出てレースは赤旗中断、仕切りなおし。
しかし、再開後もアズランがまたもスパートを見せて、2番手以下を引き離しにかかります。アズラン、大混戦のアジア選手権では、最初から逃げる、が有効な勝ちパターンだと見てるんでしょうね。2番手集団はラタポン・ウィライロー、ユウキのヤマハ勢、ザクワンをはさんでウェストもいます。

画像: リスタートしての1周目 S字入り口まででこんなに後続を引き離す25アズラン

リスタートしての1周目 S字入り口まででこんなに後続を引き離す25アズラン

画像: レース中盤は76ユウキがレースをリード 最終ラップまではここにいたんだけど…

レース中盤は76ユウキがレースをリード 最終ラップまではここにいたんだけど…

しかし、アズランが逃げにかかっても、今度はその差がすぐに埋まってしまいます。ユウキが2周目にはアズランの背後に迫り、3周目にはトップに浮上! しかし、やはり引き離すまでにはいたらず、毎度おなじみのタテ一列の大混戦。ここで後方からスルスルと順位を上げてきたのがウェストで、一時ユディスティラがトップに立つも、あわてず騒がず、いつも2~3番手についている。これがウェストのレース展開の組み立てなんですね。アズランは逃げる、ユウキは隙を見てトップに立つ、でもウェストはジッと戦局を見つめながらトップに立つものの、またユウキやクボを前に出して、あわてない――クーッ、ニクいベテランだ!(笑)

画像: ここぞというところのスパートが鋭く、抜き方に躊躇がないね、ベテランは!

ここぞというところのスパートが鋭く、抜き方に躊躇がないね、ベテランは!

赤旗中断の影響で、3周減の10周な超スプリントとなったレース、終盤のトップ集団はユウキ、クボ、ウェスト、ユディスティラ、アズラン、少し離れてザクワンの順で5~6台。最終ラップもこの順で突入するも、クボがデグナーでユウキをかわすと、その機に乗じてウェストもユウキをかわします。これでクボ→ウェスト→ユウキがトップ3。次にスプーンでウェストがトップに立つと、今度はバックストレートの伸びに勝るクボがまたもトップのままシケインへ。このバックストレートでユディスティラが3番手、ユウキは4番手にまで落ちてしまいます。
とうとうクボがアジアで勝った!と思ったら、シケインでウェストがクボのインを差し、そのままバラけたところで4番手にいたユウキも前へ、ユディスティラもスルスルッと前に出て、ウェスト、クボ、ユディスティラの順でフィニッシュ。地元優勝に燃えていたユウキは、シケイン1つめでレイトブレーキングしたからか、立ち上がりでふくらんで失速。ユディスティラとほぼ同着で4位に終わり、2戦連続で表彰台を逃してしまいました。

「最終ラップは、終盤のシケインの時点でトップにいたらダメなんだよ。後ろからアタックされるからね。それまではイトウが前にいて、あいつはきっちりインを締めてシケインに入るタイプだから、それまで何周もずっとアウトから並びかけてやったんだ。最後の最後だけインから行くようにね。そうしたら最終ラップはクボが前にいて(笑)、ちょっと相手は違ったけど、最終ラップだけインをついて立ち上がったんだよ」とウェスト。
これでウェストは、開幕戦レース2に続く2勝目でランキングトップへ再浮上! 何がすごいって、ウェストは日程がかぶったためにワールドスーパースポーツ(=WSS)に出場して第2戦を欠場してるんです! それでランキングトップとは……。

「今年はアジア選手権に参戦して3年目になる。去年までは黄色いヤマハだったけど(注:アケノスピード)今年はブルー&ブラックのヤマハさ。アジア選手権、WSS、それに鈴鹿8耐のテストと、毎週のようにレースを転戦しているから、住んでる家がないようなもんだよ(笑)。冬の間はオーストラリアに帰るけど、この2年、シーズン中はホテル暮らし、レザースーツとヘルメットを持ってるバックパッカー、ジプシー生活だね」

画像: 2016年にもてぎロードレースチャンピオンを獲得し、全日本デビューしたクボ 19歳になりました

2016年にもてぎロードレースチャンピオンを獲得し、全日本デビューしたクボ 19歳になりました

そのバックパッカーに敗れたとはいえ、大舞台で2位入賞を果たしたのはクボ。ノリックパパの指導の下、全日本ロードレースJ-GP2クラスにも、伊藤レーシングから参戦しています。
「初めての表彰台、とてもうれしいです。去年からチームと一緒に頑張ってきて、今年やっと結果を出せました。もう少しで勝てそうだったけど、僕はまだ経験が足りないんだと思う。今回もミスがなければ勝てたかもしれないけど、それも経験として考えたい」とクボ。

画像: 2レース連続表彰台を獲得したユディスティラ 今シーズン中の初優勝はあるか

2レース連続表彰台を獲得したユディスティラ 今シーズン中の初優勝はあるか

3位に入ったユディスティラはウェストと同じく、2レース連続表彰台。
「レース2は周りのみんなが速くて、レース1よりキツかった。カワサキはタイヤも厳しかったから、なんとかプッシュして表彰台に乗りたかった。勝てなかったけど、表彰台に乗れてよかったかな」とユディスティラ。

600クラスっていうのは、WSSでも全日本でも、ベテランと若手の対決図式が鮮明です。その中でもウェストは、アジア選手権をメインに考えつつ、WSSを走っているそうです。1戦2レースを欠場してランキングトップなんて強いライダーがいるから、アジア選手権のライダーは、打倒ウェストを目標に成長していくわけですね。
「アジア選手権に参加するようになって、かなりレベルの高い選手権だとは思ったけど、年々ストロングになっているね。特に鈴鹿大会は、去年は(地元ライダーの)イトウに気を付けていればよかったけど、今年は6人もマークしなきゃならなかったからね。ある意味、WSSよりレベルが高くなっているよ」とウェスト。まずアジアンライダーは、この大ベテランの壁を乗り越えて強くなれよ、と。
「WSSではカワサキ、アジアではヤマハに乗っているから、乗り換えは大変なんだ。タイヤもサスペンションもエンジン特性も違うし、でも僕みたいに20年もやっているから、何とかなってるんだ。旅続きの生活だって、レースが好きだからね、苦じゃないさ」

画像: 99年にGPデビューを果たしたウェスト あの頃は口数の少ない少年だったのに、すっかり大人になりました

99年にGPデビューを果たしたウェスト あの頃は口数の少ない少年だったのに、すっかり大人になりました

アジア選手権は、こんなスゴいライダーと戦えるんです。
残り3戦6レース。次戦は8月3~5日のインド大会です。

■レース結果
1 アンソニー・ウェスト    イカズチレーシングヤマハ
2 ケミン・クボ        ヤマハレーシングASEAN
3 アーマド・ユディスティラ  マニュアルテックカワサキ
4 伊藤勇樹          ヤマハレーシングASEAN
5 アズラン・シャー      マニュアルテックカワサキ
6 アンディ・ファリド     アストラホンダ

写真・文/中村浩史

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