白シャツ姿がサマになる男は、同性からも異性からも一目置かれます。ジャケットを脱いだときでも、清潔感と信頼感を印象付ける最重要アイテムこそ白シャツなのです。

そこで今回は、しっかりとした作りで着心地もいい本格派の白シャツをご紹介。しかも、1万円以下で買えるのです!

シャツには無数の色と柄がありますが、ビジネスにおいて最優先するべきはやはり白。日本では「ワイシャツ」と呼ばれることもありますが、これは"White Shirts”が訛ったもの。それくらい、シャツと言えば白というわけです。

さて、本格派の白シャツを見極めるポイントとして、素材、縫製、シルエットが挙げられます。たしかに十数年前までは、限られた名門ブランドの専売特許だったのですが、いまや多くのブランドの企業努力によって、適正価格でありながら、こうしたポイントをクリアした高品位な白シャツが手に入るようになったのです。

年に数回しか着ない勝負シャツならいざ知らず、毎日のように着用し、洗濯しなければならない白シャツに大枚をはたくのは非合理的でしかありません。そこで今回は、白シャツ選びの重要ポイントを改めて解説します。

本格派の白シャツ選び七か条、2018年度版

1. ネックサイズが豊富に揃うブランド

S、M、Lのサイズ表記で売られているシャツは、あくまでカジュアルシャツであって、スーツに合わせるシャツではありません。1㎝もしくは0.5インチ刻みでネックサイズが揃っているブランドは、それだけシャツの需要が高く、基本に則った作りをしています。こうしたシャツ専業ブランドであれば、まず間違いありません。

2. きっちり採寸して適正サイズを知る

概して多くの人が緩いネックサイズを選んで失敗しています。首周りをメジャーで測った数値(=実寸)に2〜3㎝足したものがベストとされており、裄丈の場合は3〜4㎝足すとちょうどいいフィットになります。自分でサイズを正確に測るのは至難の技。やっぱり、一度はお店のスタッフに採寸してもらうといいでしょう。

3. ムダのない正統派デザインであること

近年は色付きのボタンホールや、前立てや台襟の裏に別布をあしらったシャツが数多く見受けられます。しかし、これらはビジネスにおける着こなしにおいて、まったく無意味な飾りでしかないので避けた方がいいでしょう。また、前立ての有無、シングルカフスかダブルカフスかは好みで選んでOKですが、胸ポケットはないのが基本です。

4. 選択肢が多いようで少ない襟型

仕事用の白シャツで選ぶべき襟型は、クラシックで英国的なセミワイドカラー、イタリア的なワイドカラー、汎用性が高いレギュラーカラー、アメリカ的なボタンダウンカラーのいずれか。頭の大きさと肩幅のバランス、ネクタイとラペルの太さで多少変わりますが、多くの日本人に合うのはセミワイドかレギュラーです。

5. 見た目も美しく肌触りのいい天然生地

一般的にドレスシャツは、極細の綿糸を2本撚った=双糸のブロード生地が、最上とされています。触ってみるとなめらかで艶がありますから、すぐに良し悪しが分かります。糸の太さを示す番手の数値が高いほど上質とされ、100番手以上が理想的です。そのほかのおすすめとしては、ロイヤルオックス、ピンオックスがあります。

6. シャツはあくまで下着と心得るべし

白シャツを着ているのに、肌着が透けてしまうのはNG。日本人の多くが間違えがちですが、そもそもシャツは一番下に着る肌着として生まれたものだからです。汗でベタつくのがどうしても嫌だと言うのであれば、自分の肌の色に近い透けにくい、吸水速乾性素材の下着などを利用するといいでしょう。

7. 白シャツは消耗品、だからコスパ重視

男はいつも潔くありたいもの。いくらお気に入りの白シャツであっても、別れの時はやってきます。何度洗濯しても、黄ばみや黒ずみが落ちないようになったら潮時ですので、諦めましょう。数万円もする白シャツだと汚れるのが怖くて日常的には使えませんが、1万円以下なら諦めがつくのではないでしょうか?

現在における最良な白シャツの選択とは?

筆者もさまざまな有名ブランドの白シャツを買って、実際に着てみました。それぞれに特徴があり、同じネックサイズでも着心地と見た目が違うものです。プライスも考慮すると、これまで「これがベスト」と言い切れる1枚には出会えませんでした。

そんな折、海外の高級シャツに負けないクオリティとデザインを併せ持つ、1万円以下の白シャツと出会ったのです。これがまた、信じられないくらい良くできているのです。ということで、理想の白シャツの具体例を紹介します。

CAMICIANISTA(カミチャニスタ)

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Photo: 竹内泰久

フォーマルにも使えるエレガントなセミワイド

イタリアの高級スーツや名門ブランドの輸入販売を手がけているグループから生まれた、シャツ専門のオリジナルブランドがこちら。カミチャニスタというブランド名は、イタリア語でシャツを意味するカミーチェから生まれた造語です。

フライ、バルバといったイタリアの高級シャツブランドに見られるシルエットとディテール、仕立て技術を取り入れながらも、買い求めやすい価格帯を実現。幅広いラインナップでシャツを展開しています。

こちらは生地の密度が高く、さらりとした肌触りが心地いい140番手双糸のコットン100%ブロード生地を採用したセミワイドカラー。襟高が高めで、無理なく身体に沿うスリムフィットに仕立てられており、ビジネススタイルにはもちろん、フォーマルにも活用できます。

袖を後付けすることによって、腕の可動域が広く、突っ張らないように仕立てられています。タックインした際の腰回りに余計なダブつきが出ないように、着丈を長く取っているのもクラシックな仕様です。

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Photo: 竹内泰久

非常にきめ細やかな運針(=ピッチ)で縫製がなされているのが確認できます。高級シャツにおける必須ディテールでもある本白蝶貝(マザーオブパールとも呼ばれます)のボタンを採用。また、脇下の両裾にガゼットをあしらうこともこのブランドのこだわり。

5000円/カミチャニスタ(カミチャニスタ)

DOI HOUKOUSHO(土井縫工所)

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Photo: 竹内泰久

シャツ一筋の老舗による日本人に合うスリムフィット

1952年、大阪で創業した土井縫工所。シャツ専業ファクトリーとして創業以来、65年間でのべ700万着以上のシャツを世に送り出してきました。長年にわたるシャツ作りのノウハウと膨大な体型データを元に、日本人の体型に沿った美しいシルエットと着心地の良さを追求しています。

国内の自社工場で生産されるシャツは、高級シャツで用いられる1本針本縫いを採用。素肌に触れる部分の違和感を極力避けるように、非常に細かい運針で縫製がなされています。

こちらはホリゾンタルワイドカラーの定番モデルで、背面にダーツを入れたスリムフィット。前立てなし、胸ポケットなしのプレーンさも清々しい。シルクのようになめらかでありながら、ハリとコシも併せ持つ、100番手双糸のコットンブロード生地を採用。袖付けとアームホールのパターンを改良することで、ダブつきがなくフィットしながら、十分な運動量を確保しています。裄丈とカフスまわりのサイズ調整が、無料でできるサービスがあるのも嬉しい限り。

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Photo: 竹内泰久

シャープな印象を与える角落ちと呼ばれる袖口には、ボタン専門工場の阪本才治商店に依頼した白蝶貝ボタンをあしらっています。一直線ではなくカーブさせたカフスによって、常にジャケットの袖口と並行に沿い、美しい見た目とフィット感を高めてくれます。

9000円/土井縫工所(土井縫工所サポートセンター)

AZABU THE CUSTOM SHIRTS(麻布ザ・カスタムシャツ)

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Photo: 竹内泰久

驚異的なコスパを誇るこだわりのジャパンメイド

オーダースーツやオーダーシャツで、ビジネスマンに高い人気を誇る麻布テーラーがプロデュースする既成シャツのブランド。高級ブランドで用いられる素材、縫製、ディテールを網羅しながら、技術力の高い国内ファクトリーとの協力によって、1枚5000円という破格のプライスを実現しています。クラシックフィットとスリムフィットの2モデルで展開し、細かなネックサイズを用意しており、ほとんどの体型の人にぴったりの1枚が見つけられます。

均一に整った見た目を優先するため、ほとんどのメーカーで襟の芯地を接着してしまうのですが、こちらは高級シャツに用いられる"フラシ”という仕立てを行なっているのが最大の特徴。高い技術力が必要とされるこのフラシによって、柔らかい着心地が味わえ、着込むほどになじんでくるのです。こちらは100番手双糸の国産オリジナル生地を採用した、ワイドカラーのスリムフィットモデル。下から2番目のボタンホールを水平にすることで、お腹周りの微妙な膨らみに対応してくれます。

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Photo: 竹内泰久

本白蝶貝のアジャストボタンを採用したカフス。購入後、不要なボタンをカットするサービスも提供しています。カフスも襟と同様にフラシで仕立てているので、柔らかくフィットします。袖口の切れ込み=剣ボロの縫製もきめ細やかで美しい仕上がりに。

5000円/麻布ザ・カスタムシャツ(麻布テーラープレスルーム)

LANDS’ END(ランズエンド)

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Photo: 竹内泰久

日本の夏に合う涼感素材を用いたボタンダウン

1963年にアメリカのシカゴで生まれたランズエンド。ヨット用品を販売する小さな店から始まり、現在はアメリカ有数の通販ブランドへと成長。日本でも公式オンラインショップで購入可能。日本市場に合わせた商品を数多く開発し、高品位でありながらも適正価格なアイテムが揃います。数ある中でもオススメしたいのが、日本の気候に合わせた涼感素材を用いた、ランズエンド独自の立体Xシャツです。

その名の通り、最大の特徴は日本人男性特有の体型を研究して生み出された立体的な仕立てにあります。曲線で仕上げた襟、欧米人に比べ前に傾いた肩、前振りの袖付け、楕円のアームホール、スプリットヨーク、脇下からウエストにかけてのカーブなど、すべてにおいて心地よいフィット感を追求。さらに、古くから夏の着物に取り入れられていた“絡み織り”という技術を生かしたレノクロスという生地を採用。シャリ感があり肌にベタつかず、通気性が高いのでこの時期にうってつけの1枚。

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Photo: 竹内泰久

アジャスタブルボタンには白蝶貝風のものをあしらい、さりげなくブランドネームを刻印。随所の運針も非常に細かく、美しい仕上がりに。スーピマコットン糸を100%使用した絡み織りの生地は、メッシュに似た繊維組織なので汗ばむこの時期に重宝します。

6900円/ランズエンド(日本ランズエンド)

FABRIC TOKYO(ファブリックトウキョウ)

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Photo: 竹内泰久

形態安定加工を施した高級生地でオーダーできる!

これまでもオーダーメイドシャツはいくつかありましたが、こちらのブランドが大きく異なるのは、テクノロジーを最大限に利用した合理的なオーダーシステム。専門スタッフによる顧客のサイズデータをクラウドで管理することで、スマホやPCで好きなときに注文ができ、納期までの時間を短縮することを可能に。また、原料、生地、縫製までを一貫して行ない、高品質と適正価格を両立。原料や工場の詳細な情報を開示するなど、エシカルな試みに挑戦しています。

こちらの仕上がり見本のシャツは、肌触りの良いロイヤルオックスフォード生地を選択。世界三大綿のひとつとして知られるエジプト綿の中でも、特に希少で高価なGIZA86という綿が原料となっています。天然の植物性油脂が豊富に含まれており、艶やかでなめらかな風合いが特徴です。さらにその生地に、100年以上の歴史を誇る日本の播州地区の工場で形態安定加工を施しています。自分の体型にぴったり合う高級天然素材の白シャツをイージーケアで楽しめるのです。

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Photo: 竹内泰久

オーダーメイドなのでカフスも6種類から選ぶことができ、ダブルカフス、腕時計用カフスにも対応。標準仕様はプラスティックボタンですが、+1000円で本白蝶貝ボタンへ変更することができます。脇は本巻き縫いで仕立てられ、運針も非常にきめ細やか。

1万円(オーダー価格)/ファブリック トウキョウ


あまりに当たり前すぎるアイテムゆえ、安易に選んでしまいがちですが、こうしたベーシックアイテムにこそ、その人のパーソナリティが映し出されるもの。今回紹介した白シャツなら、どんなビジネスシーンにおいても通用します。

老舗高級ブランドと比べても遜色のない、素材、縫製、シルエットを誇りながら1万円以下なのです。ブランドやトレンドに惑わされることなく、本質を追求する男性の内面を白シャツが雄弁に語ります。

Image: 竹内泰久

Styling: 安部武弘

Source: カミチャニスタ, 土井縫工所, 土井縫工所, 麻布・ザ・カスタムシャツ, ランズエンド, ファブリック トウキョウ