サイエンス

なぜ清潔に保たれているはずのクリーンルーム内でも微生物が繁殖してしまうのか?

by luxdarkmatter

異物の混入や細菌による汚染が許されない作業が行われるクリーンルームでは、空気が清浄に保たれ、空間内に持ち込まれる物品に対しても高い清浄度が要求されます。人間も専用のクリーンウェアを身につけなければ入ることができないクリーンルーム内で、「なぜか微生物が発見される」という不思議な現象が以前から確認されており、そのメカニズムを研究者が明らかにしました。

Team discover how microbes survive clean rooms and contaminate spacecraft
https://phys.org/news/2018-06-team-microbes-survive-rooms-contaminate.html

NASAのクリーンルーム施設では、宇宙船の生物学的汚染を最小限に抑えるため、さまざまな保護対策を実施しています。地球上の生物が他の惑星に持ち込まれることが、その惑星にどのような結果を招くのかといったこともわかっておらず、加えて地球型惑星における生命探索ミッションにも、間違った結果をもたらしかねないからです。


しかし現実には、クリーンルームにはさまざまな古細菌や細菌が存在しており、中でもアシネトバクターという真正細菌の種が宇宙船内で多く発見されているとのこと。カリフォルニア州立工科大学ポモナ校の生物科学教授を務めるラケシュ・モグル氏らの研究チームは、「なぜクリーンルームでの微生物による汚染が止められないのか?」という疑問を明らかにするべく実験を行いました。

研究チームは火星探査機のオデッセイフェニックスの隔離されたクリーンルーム内から、いくつかのアシネトバクター株を採取して分析したそうです。その結果、アシネトバクター株は栄養が極端に制限された条件下であっても、試験された株の大部分が繁殖できることが判明しました。

by UCL Mathematical & Physical Sciences

アシネトバクターが繁殖の栄養源としていたのは、なんと宇宙船の部品を洗浄する際に使用された洗剤でした。アシネトバクターは洗剤に含まれるエタノールを唯一の炭素源として生分解し、栄養とすることができたそうで、他の微生物にとっても洗剤の成分が栄養源となる可能性があります。

モグル氏は、「今回の実験により、いったいなぜ惑星探査機などのクリーンルーム内に微生物が残存しているのか、という疑問に一定の理解をもたらすことができました」と述べました。今回の研究結果は、今後の惑星探査機清浄において、より一層厳重な清掃ステップを踏む必要があることを示唆しています。

by Jeremy Brooks

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in サイエンス,   生き物, Posted by log1h_ik

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