アップルの世界開発者会議「WWDC2018」。注目の基調講演は2時間超という、かなりボリュームのあるものだった。大幅な機能強化が行われた「iOS12」「watchOS」、そしてネーミングを新たに「Mojave(モハべ=砂漠の名前)」にした「macOS」など、発表は多岐にわたる。

WWDC2018で明らかになった、iOS12の全貌

なかでも注目はやはり、この秋のiPhoneの新機能を先取りする「iOS12」だ。3分でわかるiOS12の新機能をサマリーでお届けする。

1. iOS12は今秋登場、「スピードアップ」を重視

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iOS12は、例年どおり「今秋」登場。機能の追加もさることながら、「スピードアップ」も意識したアップデートになる。壇上でソフトウェアエンジニアリング担当の上級副社長、クレイグ・フェデリギ氏は、カメラの切り替えが70%高速に、高負荷な処理が最大2倍速くなる、などをアピールした。

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iOS12の新機能解説ページより。「あなたが毎日することがスピードアップする」と説明。

2. iOS12は対応機種が幅広い。iPhone5s以降がアップデート可能

「アップルは古い機種を切り捨てる」というのは完全に昔の話になった。iOS12は、iPhone 5s以降、iPad mini2以降の機種でアップデートできる。両機種が登場したのは5年前の2013年。単に古いというだけでなく、この時期の機種は現行世代とはメモリー容量がまったく異なる(iPhone X=3GB、iPhone 5s=1GB)。ある程度、メモリー負荷に対する柔軟性を備えた設計になっているともいえる。

3. マルチユーザーARに対応! 複数人が同じAR空間で遊べる

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iOSのARアプリの使い方をまったく変えてしまうような、地味にすごいアップデートがこれだ。最新のARフレームワーク「AR Kit2」が登場、ついにその場にいる複数人で同じAR空間に触れる「マルチユーザーAR」をサポートする。例えば、ARゲームでは、その場に本当にいるかのように協力プレイや対戦ができるようになるし、クリエイティブ系アプリでは同じAR空間を見ながら共創するといったことができるようになる。デモでは、レゴのゲームアプリを使って、最大4人の協力プレイができることが披露された。

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基調講演でデモをしたレゴのアプリ。最大4人まで同時に同じ空間に入って遊べるという。

4. 子どものスマホ中毒を防止、「スクリーンタイム」機能がすごい

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「スクリーンタイム」はユーザーが自分の利用パターンや頻度を認識するための機能。キッズ向けのダウンタイム機能はこのオプションとして加わるイメージだ。

スマホが生活に欠かせないツールになるなかで、子どもが際限なくスマホで動画やゲームを遊んでしまう「スマホ中毒」は、多くの国で問題視されている。iOS12では、アプリの利用頻度をレポートする「スクリーンタイム」が搭載される。この機能のキッズ向けの機能は、スマホ中毒防止機能としてかなり強力そうだ。

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ダウンタイム機能を追加したところ。ゲーム中に「あなたの遊べる時間は残り5ふん」といったように通知される。

これまでアプリの利用を制限する機能はペアレンタルコントロールの一貫として搭載されてきたが、ここまで踏み込んだ機能を搭載するのは初めてのこと。「ダウンタイム」に指定された時間帯はスマホの表示を制限するほか、通知も制限される。「アップル、わかってる!」と感じるのは、これら設定や利用状況は、親の端末から「ファミリーシェアリング」の一貫として、リモートで使えることだ。

5. Animojiで自分のアバターをつくれる「Memoji」が面白そう

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iPhone Xの強力な顔認識をアピールするために登場したAnimojiに、自分の顔をカスタムしてつくれる「Memoji」機能が拡張される。この機能は、Nintendo Switchなどのアバター、Miiをイメージするとわかりやすい。Memojiでつくったアバターは、Animojiと同じように顔認識して表情を作れるほか、新しく32人までのグループ通話に対応するFaceTimeでも使える。リアルタイム通話で使うMemojiは、VR的なコミュニケーション手段として新しい可能性を感じさせる。そう遠くない将来に、AR Kitに融合してくる可能性が十分にある機能だ。

6. 「FaceTime」が32人までの同時通話に対応

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この画面に出ているアップル社員は、全員ビデオチャット中。話している人は顔のタイルが大きくなる。ユーザーインターフェイスの設計もよく考えられている。

これも何気に強力なアップデートだ。最大32人までの同時通話というのもスゴイが、その時話してる人の顔が拡大されるなどUIの設計が非常に魅力的だ。表情が見えるビデオ通話は、音声通話より親しみを感じやすい半面、女性だとメイクや服装が気になる人もいる。FaceTimeではリアルタイムで表情を読み取るMemojiを人物の顔にオーバーレイすることもできるので「いまは顔出ししたくない」といった場合はMemojiで通話することもできる。

7. 通知まみれのドロワーを、アプリごとにすっきり整理

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iPhoneを使っていると、画面を上から下へスワイプで表示されるドロワー(通知領域)が、いろいろな通知まみれになっている人は多いはず。iOS12では、通知をアプリごとにまとめてくれるグループ化機能が追加される。

8. Siriを超強力にする「Siriショートカット」

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iOS12には毎日、あるいは定期的に使うアプリの操作をSiriからショートカットできる機能が追加される。新たに追加される「Shortcuts」アプリでは、複数のアプリの動作を連携させるマクロ的な動作もできるようだ。これは強力だ。デモでは、指定したフレーズでアプリを呼び出したり、毎朝通勤でコーヒーをオーダーするアプリを、自動的に「これ、いります?」とサジェストしてくれたりといったことを披露していた。アプリ側の対応次第ではあるけれど、例えば日本だと通勤時間に乗換案内アプリをサジェストしてもらう、などの使い方が便利そうだ。

9. CarPlayに「グーグルマップ」が来る!

iPhoneのクルマ向けモードCarPlay。これまでCarPlayのナビ機能はアップル純正のマップアプリでしか使えなかったが、iOS12ではナビがサードパーティに解放される。デモではグーグルマップなどが使えるようになると紹介。普段使い慣れたアプリがCarPlayでも使えるというのは大きなアップデートだ。

10. 「Photos」の写真検索が便利に

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iPhoneに保存された大量の写真からイイ感じのものをどう見つけ出すかは、もはや人間の検索能力だけでは難しい。iOS12のPhotosでは、検索のサジェストがさらに強力になる。入力する前に、最近のイベントや人、場所の候補が表示されるほか、複数のワードによる検索もサポートされる。

iOS12ベータの登場は今月後半

近年の流れと同様に、iOS12は正式リリース前にベータ版の先行配信が実施。6月後半に、登録したユーザー向けにアップデートが出る見込みだ。iOS12の新機能は、これ以外にも細かなアップデートが数多くある。不安定なことを覚悟で試すという人は、ここから登録してみるといいだろう。

BUSINESS INSIDER JAPANより転載(2018.6.5公開記事)

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