メモ

原油価格の変動によってどの国が得をしてどの国が損をするのか?

by benjamin.duivesteyn

原油の価格は原油の需要や産出量によって左右され、日々刻々と変化しています。その変動によって、石油輸出国と輸入国は得をしたり損をしたりしていますが、その影響は、国によってもかなり大きな差があるようです。

Dear oil helps some emerging economies and harms others - The crude curve
https://www.economist.com/finance-and-economics/2018/05/26/dear-oil-helps-some-emerging-economies-and-harms-others

Oil helps some, hurts others… The Economist – Commodity Research Group
http://www.commodityresearchgroup.com/blog/oil-helps-some-hurts-others-the-economist/

原油価格(1バレルの単価)は1年間で数十ドル(約数千円)も変化し、そのたびに石油輸出国も石油輸入国も大きな影響を受けます。政府の政策に関わる人々は、為替の変動を注視すると同時に原油価格にも大きく注意を払っているとのこと。


スイスのチューリッヒに本拠を置く世界有数の金融企業UBSは、原油価格の変動が世界各国の国内総生産(GDP)とどのように関連しているのかを分析しました。

そして、イギリスの週刊新聞であるエコノミストのオンライン版は、UBSのデータをもとに原油価格とGDPの関係を表したグラフを作成しました。以下のグラフでは2019年のGDPについて、原油価格が50ドル(約5500円)だった場合と、100ドル(約1万1000円)だった場合に予想されるGDPを棒グラフで表しています。原油価格が50ドルだった場合のGDPが水色の棒グラフ、100ドルだった場合のGDPが濃い青色の棒グラフで示されています。


基本的に、石油の輸出国は原油価格の上昇に伴って利益を増し、逆に石油の輸入国は原油価格の上昇に伴って不利益を被ります。ところが、原油価格とGDPの関係はより複雑であり、単純に「原油価格が上昇すると石油輸入国のGDPが落ちる」とは限らないようです。

グラフの上部に注目すると、ロシア・カナダ・ブラジル・メキシコ・インドネシア・アメリカといった国々は、原油価格の上昇によって利益を得て、原油価格の低下によって不利益を受けます。ロシア・カナダ・ブラジルは石油輸出国なので「輸出が増えるとGDPが成長する」というわかりやすい構造です。

インドネシアは石油の輸出国ではないものの、石炭やパーム油といった「エネルギー」の輸出国です。原油価格と石炭やパーム油といったエネルギーの価格は連動を示すため、インドネシアは原油価格の上昇によって利益を得る国になっているとのこと。また、メキシコとアメリカも石油輸入国である一方、国内の石油産業が非常に大きな規模を誇っており、原油価格の上昇は石油産業に従事する人々に恩恵をもたらすと同時に雇用も創出します。そのため、原油価格の上昇により被る不利益を、原油価格の上昇に伴って生み出される利益が上回っているのです。


もちろん、多くの石油輸入国は原油価格の上昇によってGDPは低下し、日本・イギリス・トルコといった国々は原油価格低下による恩恵が大きい一方で、原油価格上昇によるダメージも非常に大きいことがわかります。


エコノミストによれば、単純に「原油価格が上昇すれば石油産業に恩恵がある」というわけでもないとのこと。たとえば、アメリカにある石油プラットフォームの多くは、原油価格が40ドル(約4400円)のときには利益が出ないため停止しています。しかし、原油価格が60ドル(約6600円)に上昇すると、利益を生み出せるので稼働しはじめ、大きな雇用を創出します。

一方で、原油価格の変化幅が同じ「20ドル(約2200円)」であっても、原油価格が100ドル(約1万1000円)から120ドル(約1万3000円)へ上昇する場合、石油プラットフォームのほとんどが100ドルの時点で稼働しているので、120ドルになったとしても雇用への影響は小さいのでGDPも大きく変化しないのだそうです。

UBSのアナリストであるArend Kapteyn氏によれば、世界的に見ると原油価格が50ドル(約5500円)を下回ったり、75ドル(約8200円)を上回ったりすると経済に悪影響が及ぶとのことです。

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in メモ, Posted by log1h_ik

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