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 「異能」ともいえる際立った能力や実績を持ち、まわりから一目置かれるエンジニアを1カ月に一人ずつ取り上げ、インタビューを掲載する。今月取り上げるのは、テスト駆動開発(TDD)の日本での第一人者として知られる和田卓人氏。JavaScriptのテストフレームワーク「power-assert」の作者でもある。今回は、プログラミングとの出会いや巨大システム開発プロジェクトに参加した経験などを聞いた。

(聞き手は大森 敏行=日経 xTECH/日経NETWORK


 コンピュータに最初に触れたのは、中学1年のときに家にパソコンが来たことでした。父親がコンピュータソフトウエア開発の会社を立ち上げて、家に開発用のDOS/Vパソコンがやって来たのです。

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 悔しいことに、その時点ではプログラミングにはあまり興味を持ちませんでした。単なるゲーム機の一種としてDOS/VやWindows 3.1のパソコンに触れていたというのが実情です。高校まではプログラミングは全くやっていませんでした。

 世の有名なプログラマーは、たいてい小さい頃から街頭でパソコンを触っていたりマイコン雑誌を読んだりしています。それに比べると、コンピュータにあまり興味を持たなかったことにコンプレックスや一種の後ろめたさを感じています。

留学でコンピュータの重要性に気づく

 1996年に国際基督教大学(ICU)に入りました。ICUには教養学部(リベラルアーツ)という一つの学部しかありません。「最初の2年間でやりたいことを決めなさい」という感じです。大学に入った当時は、あまりコンピュータの道を志すという感じではなかったというのが正直なところでした。

 ぼくの前に再びパソコンが現れたのは、大学1年の夏、米国に短期留学したときです。ICUでは交換留学が盛んで、その一環としてカリフォルニア大学に留学しました。留学中は、基本的には英語の勉強です。あとは米国の歴史や文化の授業で単位を取る感じでした。

 向こうの大学では、レポートをパソコンで作成して提出することになっており、このことにすごいカルチャーショックを受けました。それまで中学や高校のときは、原稿用紙やレポート用紙にペンや鉛筆で書いていたからです。