私たちが見ている光景をペットはどのように見ているのか？

by Matthew Henry

人間は他の動物よりも色を識別したり暗い場所で物を見たりすることが不得意だと言われていますが、デューク大学の研究者らはホ乳類・昆虫・魚など約600種の生き物の視力について調査を行い、「鋭敏さ」という点で人間の視力が優れていることを示しました。デューク大学の研究者は、さまざまな動物が取り入れる視覚がどのようなものかを画像で示すソフトウェアを開発しています。

Visual Acuity and the Evolution of Signals: Trends in Ecology & Evolution
https://www.cell.com/trends/ecology-evolution/fulltext/S0169-5347(18)30052-1

Details That Look Sharp to People May be Blurry to Their Pets | Duke Today
https://today.duke.edu/2018/05/details-look-sharp-people-may-be-blurry-their-pets

人間の視力において他の生き物よりも優れている点は、「ディテールを判別する力」。以下の図は左上から人間・猫・金魚・ラット・はえ・蚊の視界を表したものですが、人間に比べて他の生き物の視界がぼやけていることがわかります。

この研究では動物の視力についてc/d(視角1度あたりの周期)を単位とする空間周波数で測定しました。c/dは視覚1度の範囲で生き物が黒と白の並行ラインのペアを「灰色」と認識せずにどのくらい識別できるかを示すもの。もちろん、ラクダに「どれくらい認識できる？」と尋ねるわけにはいかないので、研究者は生き物の目の構造や行動から視力を見積もりました。

人間やチンパンジーの視力は60c/dほどで、オナガイヌワシといった一部の鳥は人間以上である140c/dの視力を持ちます。このため、オナガイヌワシは上空からでも地上にいる小さなウサギの存在を認識することが可能です。しかし、何種類かのワシやハゲタカを除けば、多くの鳥の視力は30c/d以下、つまり人間の半分以下の視力であるとのこと。また、魚にも同様のことがいえ、最もはっきりした視界を持つ魚であっても、人間の半分ほどの能力であるそうです。このほか、c/d単位の人間の視力は犬や猫の4～7倍、ネズミやハエの数百倍だといいます。デューク大学の博士研究員であるEleanor Caves氏はこの違いについて、多くの生き物は「私たちが必要とするよりもディテールを必要としないからだ」と述べています。

研究をもとに、Caves氏らは生き物の視界の違いを視覚化する「AcuityView」というソフトウェアを開発しました。AcuityViewは1枚のデジタル画像を使ってさまざまな生き物の視覚情報を再現できるというものです。

AcuityViewの画像変換は、どの生き物が特定の生き物の模様を判別できて、どの生き物には判別できないのかを明かします。チョウの羽にあるしまや斑点などの模様の役割については、これまで研究者らが議論してきたところでした。一般的な仮説では、チョウの模様は鳥などの捕食者に「近づくな」と警告を与える役割があるといわれていますが、互いの存在を確認したり、つがいを誘惑するためのものではないか？とも考えられています。この点、デューク大学の研究者は「アカマダラの模様は多くの鳥から識別されるが、その他のチョウの模様は、例え数インチ(数センチ)の距離からでも鳥にはぼやけて見える」と述べました。つまり、鳥に対する警告として機能する可能性は小さいのです。

またコガネグモ科のクモがジグザグ模様やらせん模様などを含んだ巣を作る理由には「大きな生き物が巣にぶつかってしまわないように目立ちやすくしている」という説のほか「獲物を誘惑している」という説があります。この点、AcuityViewを使うと、「鳥は6フィート(約1.8m)離れた場所からクモの巣を見つけることができるが、ハエなど小さな生き物にはクモの巣は見えない」ということがはっきりします。

研究者は、AcuityViewは生き物が実際に見ているものを再現するツールではないという点に注意を促しています。目は視覚情報を取り込みますが、実際に情報を感知するのは脳であるため、AcuityViewで示されるよりもシャープに知覚される可能性もあるとのこと。しかし、AcuityViewは「脳が処理する視覚情報とはどのようなものか」を示したと研究者は主張しています。

by Leah Kelley