811 名前:大人の名無しさん[] 投稿日:03/01/20 20:35 ID:+NBmCprR
小学校低学年の時に両親が離婚して、父方に引き取られたおいらにとって、
おばあちゃんは母親みたいな存在だった。掃除、洗濯、それに弁当づくり。
おいらを心の底から可愛がってくれた。
大学には浪人して入ったけど、ちょっとグレていたオレは、高校生ぐらいの
頃から、ちゃんとおばあちゃんに接することができなくなってきた。少し辛く
当たったこともあった。高血圧が持病のおばあちゃんは、その頃ぐらいから入
退院を繰り返すようになり、就職する頃には、老人医療施設に入りっぱなしに
なっていた。
親戚の政治家にお願いして、一応、立派な施設には入れてもらっていたが、
そういった場所は長居が出来ず、施設を転々とわたり、だんだん場所も遠くな
っていった。オヤジたちと一緒に見舞いに行くのはイヤだったから、ひとりで
行って、しばらく話して、最後にひたいに手をあてて、帰るのが、いつもの見
舞いのやり方だった。
でも、しまいには1年に一遍ぐらいしか行けなくなり、最後の施設は行けず
仕舞いで終わってしまった。
就職して2年目の冬の日曜日、その日は映画でも見に出かけようとしたら、
家から電話があって、おばあちゃんが危篤だという。急いで、そこに行こうと
したら、今度は亡くなった、という知らせがあった。
オヤジと再婚相手と3人でクルマで出かけた。地元の斎場になきがらを移す
ためだ。2時間ぐらい走って、着いた山奥の施設は、奇麗にはしてあったが、
やや寂しい印象を受けた。
(続く)
812 名前:大人の名無しさん[] 投稿日:03/01/20 20:38 ID:+NBmCprR
霊安所みたいなところでおばあちゃんと対面。久しぶりだったが、あまり変
わった様子もなく、寝ているみたいだった。
霊柩車でおばあちゃんを運ぶ段になって、付き添いが必要だといわれた。オ
ヤジはクルマを運転しているし、再婚相手には関係ない話だ。当然おいらがひ
つぎに付き添うことになった。
心の中では、最後に見舞いが途切れたことを悪いとは思いつつ、最後に付き
添ってやれることで、おいらは少しは埋め合わせができるような気になってた。
でも、最後に、看護してくれた人が、これを持っていってほしい、といわれた
のを見て、ぐっときた。
おいらのおばあちゃんは虎年生まれで、それが自慢だった。戦前、兵隊さん
に贈る千人針では、虎年生まれの女の人が縫うと喜ばれたそうだ。「虎は千里
を走って帰ってくるから」とかなんとかいう話を随分聞かされた。
最後におばあちゃんは虎のぬいぐるみを大切にしていたそうだ。でも、オレ
はそれを初めてみた。ということは、おいらたちが、見舞いにあまり行かなく
なったあたりから、買ったんじゃないのか。寂しくなったから、ぬいぐるみな
んかを可愛がってまぎらわせていたんじゃないか。そんなこととを思って、ク
ルマの中では、運転手さんに悟られないように声を殺して泣いた。
もし、これを読んでくれた人がいて、じいちゃん、ばあちゃんが入院してい
るようなヤツがいたら、頼むから見舞いに行ってくれ。いい気になってるかも
しれないが、気に障ったら許してくれ。
小学校低学年の時に両親が離婚して、父方に引き取られたおいらにとって、
おばあちゃんは母親みたいな存在だった。掃除、洗濯、それに弁当づくり。
おいらを心の底から可愛がってくれた。
大学には浪人して入ったけど、ちょっとグレていたオレは、高校生ぐらいの
頃から、ちゃんとおばあちゃんに接することができなくなってきた。少し辛く
当たったこともあった。高血圧が持病のおばあちゃんは、その頃ぐらいから入
退院を繰り返すようになり、就職する頃には、老人医療施設に入りっぱなしに
なっていた。
親戚の政治家にお願いして、一応、立派な施設には入れてもらっていたが、
そういった場所は長居が出来ず、施設を転々とわたり、だんだん場所も遠くな
っていった。オヤジたちと一緒に見舞いに行くのはイヤだったから、ひとりで
行って、しばらく話して、最後にひたいに手をあてて、帰るのが、いつもの見
舞いのやり方だった。
でも、しまいには1年に一遍ぐらいしか行けなくなり、最後の施設は行けず
仕舞いで終わってしまった。
就職して2年目の冬の日曜日、その日は映画でも見に出かけようとしたら、
家から電話があって、おばあちゃんが危篤だという。急いで、そこに行こうと
したら、今度は亡くなった、という知らせがあった。
オヤジと再婚相手と3人でクルマで出かけた。地元の斎場になきがらを移す
ためだ。2時間ぐらい走って、着いた山奥の施設は、奇麗にはしてあったが、
やや寂しい印象を受けた。
(続く)
812 名前:大人の名無しさん[] 投稿日:03/01/20 20:38 ID:+NBmCprR
霊安所みたいなところでおばあちゃんと対面。久しぶりだったが、あまり変
わった様子もなく、寝ているみたいだった。
霊柩車でおばあちゃんを運ぶ段になって、付き添いが必要だといわれた。オ
ヤジはクルマを運転しているし、再婚相手には関係ない話だ。当然おいらがひ
つぎに付き添うことになった。
心の中では、最後に見舞いが途切れたことを悪いとは思いつつ、最後に付き
添ってやれることで、おいらは少しは埋め合わせができるような気になってた。
でも、最後に、看護してくれた人が、これを持っていってほしい、といわれた
のを見て、ぐっときた。
おいらのおばあちゃんは虎年生まれで、それが自慢だった。戦前、兵隊さん
に贈る千人針では、虎年生まれの女の人が縫うと喜ばれたそうだ。「虎は千里
を走って帰ってくるから」とかなんとかいう話を随分聞かされた。
最後におばあちゃんは虎のぬいぐるみを大切にしていたそうだ。でも、オレ
はそれを初めてみた。ということは、おいらたちが、見舞いにあまり行かなく
なったあたりから、買ったんじゃないのか。寂しくなったから、ぬいぐるみな
んかを可愛がってまぎらわせていたんじゃないか。そんなこととを思って、ク
ルマの中では、運転手さんに悟られないように声を殺して泣いた。
もし、これを読んでくれた人がいて、じいちゃん、ばあちゃんが入院してい
るようなヤツがいたら、頼むから見舞いに行ってくれ。いい気になってるかも
しれないが、気に障ったら許してくれ。