議論中、相手の間違いを真っ向から指摘するのは避けておくのが無難です。相手は身構え、よりいっそう自分の信念に固執するでしょう。それよりも、相手がまったくもって正しいと伝えたうえで、自ら間違いに気づくように導くのがスマートなテクニックです。

17世紀の哲学者ブレーズ・パスカルは、著書『パンセ』第9章おいて、この説得法に触れています。相手の視点に立ったうえで、自ら気持ちを変えさせるのが他人を説得する最良の方法であると述べているのです。

相手の誤りを有利に正したいときは、相手の視点に立たなければならない。なぜなら、その視点から見れば、たいてい相手は正しいからである。そのうえで、別の視点から見ると誤りであることを示すとよい。相手は、自分が間違いを犯していたのではなく、事態を多面的にとらえられていなかっただけという事実に満足する。人は一般的に、他人から押し付けられた理由よりも、自ら発見した理由によって納得するものだ。

要するに、相手の間違いに気づかせたいときは、相手の正しさを示すことから始めましょう。そのうえで、相手が知らないと思われる情報を提示します。相手が自ら悟れるように導くことで、議論の過熱を避けられるはずです。パスカルの説明では、自分がものごとを多面的に見られていなかったことに気づいて、気分を害する人はいません。誰もが人間なのですから。でも、間違いを正面から指摘されると、自分の性格や知性を個人攻撃されたように感じ、腹を立てるのが普通です。そうなったらもう、双方が歩み寄れる望みはありません。

テキサス大学オースティン校で心理学を教えるアーサー・マークマン教授は、Quartzの取材に対し、この哲学的な説得法はリアルワールドでも非常に役立つと語っています。同教授によると、この方法で相手はガードを緩め、格好悪く見えることを恐れずに心を変えることができるそうです。これでお互いに歩み寄り、知的な議論ができるようになるでしょう。相手の気持ちを変えさせるには、自らそのチャンスを与えるとうまくいくことがあるようです。


Image: Wikimedia Commons

Source: Quartz

Patrick Allan - Lifehacker US[原文