ロボコン

NHK学生ロボコン2018 前日テストランレポート

本年も大田区総合体育館で開催される「NHK学生ロボコン2018」。本年は全出場24校、うち1校が高専チーム。優勝校は8月26日にベトナムで開催されるABUロボコンへの出場権を獲得することとなる。決戦の前日となる9日(土)、例年通り本番のフィールドを使用したテストランが実施された。

今年の競技テーマとなる「ネムコン ”シャトルコック・スローイング”」は、2台のマシンを使用して、フィールド中央のリングにシャトルコックを投げ入れ得点を競う。ルールのみを見れば、スローイングの精度に注目しがちだが、実際のところ勝敗を左右するのは、シャトルコックのピックアップおよび2台のマシン間における受け渡し速度とその精度、というのが大方の見方だ。取材の都合上、全てのできごとを取り上げることができず恐縮だが、「ピックアップ・受け渡し・スローイング」3点の要素に注目し、各大学のテストランを見ていこう。

・三重大

シャトルコックを受け渡す役目のキャリーングロボットが、ラックごとピックアップする機構を採用した三重大チーム。受け渡し精度も上々で、3分間にロンバイを2回達成した。

・早稲田大

各ロボットの位置決め時の動きに特徴のある早稲田大チーム。シャトルコックの受け渡し時や、スローイング位置決定時に、前後左右に細かい調整を行う。本番フィールドの感覚を掴むように調整、操作を行っている様子だった。

・東京工業大学

テストラン1巡目、昨年のチャンピオンは受け渡しで手こずっていた。ラックからシャトルコック2つずつピックアップをし、走行しながらスローイングロボットに受け渡す方法を採用した。足回りには吸引システムを採用、俊敏性には申し分ないものの、シャトルコックの受け渡し段階で落としてしまうミスが多発した。しかしその心配もつかの間だった。2巡目、再度フィールドに姿を現した東工大チームは、しっかりと調整を行い本番さながらの精度でランを行った。

・東京大学

キャリーングロボットに「彼氏」、スローイングロボットに「彼女」と書かれた東大チームのマシンは、見た者をささやかな笑いに誘う。しかし彼らこそロボコン伝統を背負う強豪チームだ。フィールドに出た2台のロボットは、目にもとまらぬ速度でピックアップから受け渡し、スローイングを行う。足回りにオムニホイールを採用するチームが多い中、東大チームの2台の足下には『オムらいす』と書かれたブラックボックスが。ここに速さの秘密が隠されてるのだろうか?

東京大学

・長崎総合科学大学

吊り下げ型のシャトルコックラックを使用しているチームが多い中、黄色と黒に彩られた筒状のラックが印象的だ。テストランではじっくりと時間をかけながらもロンバイを達成した。

・東京農工大学

伝統的なアロハシャツで登場した農工大チーム。足回りには吸引システムを使用しており、移動タイム短縮を目指す。注目はキャリーイングロボットの作り。中央部にピラミッド型の台座が設置されており、どうやらラックの中央を持ち上げる機構のようだ。しかしテストランでは不発。本番の動きに期待したい。

東京農工大学

・長岡技術科学大学

複数の関節で細かい動きを再現するスローイングアームが特徴的だ。一般的に可動部を増やすことで制御の難易度が上がる可能性があるようにも思うが、果たしてその狙いは。足回りには吸引システムを採用している。移動時はもちろん、投てき時にも短く動作しているのも気になるポイント。

・横浜国立大学

機構は投てき機をモチーフにしている。スローイングロボットに設置された虹色の風車は、2016年度の学生ロボコンで使用されたアイテムだろう。マニュアル操作だとみられるキャリーイングロボットの動作精度は、すべて操縦者の腕にかかっているといっても過言ではない。半自動、全自動マシンが台頭する中、果たしてマニュアル操作が勝敗にどのように関わってくるのだろうか。

・大阪大学

「速さに特化させた」という阪大チームのキャリーイングロボットは、テストランでも快走を見せる。受け渡しも速かった。あとは投てきでどの程度の精度を保てるかがポイントだろう。

・九州大学

終始にこやかでフレンドリーな九大チーム。「スローイングロボットでの注目ポイントはここです!」とメンバ−が指さしたのは『ジャスティン・エビーバー』(一部の方はお分かりだろう)と書かれたスローイングアーム先端部の機構。一瞬ネタかと思うが、マシンの動きはもちろんガチ。全体的にスムーズで安定したクオリティを見せつけた。笑顔の理由は、自信、か。

九州大学

・豊橋技術科学大学

豊橋技科大チームのお家芸、吸引の轟音が会場にこだました。移動機構のみならず、スローイングの機構にも注目したい。2発の連射が可能のスローイングマシンは、ひとつを直道機構、もうひとつ投石機構を採用し、他チームにはない動作を実現している。

・京都工芸繊維大学

シャトルコック、ロボットともに洗練された印象を受ける。”工芸繊維” の遺伝子か。キャリーイングロボット、スローイングロボットともに同型のパーツが3連しており、工業製品的な美しさを感じる。テストランでは1巡目終始調整に徹し、2巡目ではスローイング手前の動作まで行った。昨年は好調だった印象だが、今大会はやや苦戦を強いられているのかもしれない。これもNHKロボコンの難しさか。

・新潟大学

質実剛健なメカチックな外見の新潟大チームのロボット。キャリーイングロボットには間隔の異なる3つのアームが設置されており、どのスローイングロボットのアームに受け渡すかを変更できるという。テストランではロンバイ成功まで31秒という上々の記録を残した。

・鈴鹿工業高等専門学校

今大会唯一の高専チーム。注目したいのはスローイング方法。他チームが地面と垂直方向に回転させ投てきするのに対し、鈴鹿高専チームはサイドスローのような回転式の投げ方を採用する。高専ロボコン「輪花繚乱」を思い出させる。これが果たして吉と出るか凶と出るか。学生ロボコンでの高専勢初白星に期待がかかる。

・金沢工業大学

2016年大会で国内大会最速を叩き出した金沢工業大チーム。タイムアタック系では抜きん出るかと今年も注目が集まる。スローイングロボットは1つずつシャトルコックを受け取る構造を取った。テストランではピックアップからスローイングまで一通り動作を行ったものの、投てき精度に課題が残るか。

・信州大学

3色のシャトルコックを準備した信州大学。モチーフはもちろん、リンゴ。信州の代表する品種のカラーだとか。機構的には、そのカラーによって投てきする場所を事前に決めているという。両ロボットとも足回りは3輪。テストランでは思ったように作動せず、苦戦を強いられる展開に。

・北見工業大学

メンバーが着用する黄色のヘルメットには三角形の耳が。あの、でんき系キャラだろうか。そして遊び心あふれるのは、ロボットも同じだった。長方形のキャリーイングロボットは、シャトルコックを同時に複数個所持できる機構となっており、受け渡し時のタイムロスを避ける。テストランでは1投目以降、調整に徹したが本番は果たして。

北見工業大学

・千葉大学

エアタンクをスローイングロボットに実装した千葉大チーム。コンパクトな設計の2台は、足回り以外すべて空気圧の力を利用し行っているという。力強い動作反面、受け渡しや投てきでミスも発生。本番への調整が期待される。

・東京工科大学

テストラン前の測定で400gオーバーが言い渡された東京工科大学は、一番最後のテストランとなった。
キャリーイングロボットの足回りは自作3輪とユニークだ。受け渡しは走行中にスローイングロボットがキャリーイングロボットを追従する形で受け渡しを行う。

・富山大学

一投ごとの精度に注力し、3投でのロンバイを目指すという。キャリーイングロボットでシャトルコックラックごと運搬し、効率の向上を図った。テストランでは苦戦を強いられる結果に。

・岐阜大学

キャリーイングロボットはラックごと持ち上げ、10個のノーマル、5個のゴールデン、合計15個のシャトルコックを一度に格納できる構造。スローイングロボットにそれぞれ設置されたアームを伸ばし合って、シャトルコックの受け渡しを行う設計を取った。マニュアル操作の技術が重要か。

・名古屋工業大学

強豪名工大チームは安定した受け渡し、スムーズ投てきで周囲を惹きつけた。2014シーズンの優勝から、全体としてどんどんと洗練されいっているように感じるのは、記者だけだろうか。長年、名工大チームを率いる水野教授曰く、3DプリンタやNC加工の導入も成果につながっているとのこと。もちろん、それだけではなくソフト面の理由もあるはずだが。

名古屋工科大学

・大阪工業大学

キャリーイングロボットでの持ち運びに注目し、十字型をしたシャトルコックラックが特徴的な阪工大チーム。投てきではシングルストロークを採用し、時間短縮を図る。テストランでは受け渡しからスローイングまで一通り行い、本番フィールドでの感触を確かめた。

・岡山大学

ベトナムの伝統的な装飾を彷彿させる岡大チームのロボット。描かれたドラゴンは、競技に勝つという強い意志を表現しているという。テストランでは調整が長引き、思うように動作しなかったが、果たして本番どういう動きをするのか注目だ。
岡山大学
テストランを踏まえ、各校最終調整をどのように行ってくるのか。静かな決戦前夜を迎える。

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学生ロボコン2019出場ロボット解剖計画
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