レシート1枚10円で買うアプリ、天才高校生プログラマーが小売市場に挑む

これまで捨てていたものがお金に変わる瞬間を、あなたも目撃することになる。

スマホ。

お財布に溜まったレシートが現金化されるアプリが登場。

現役高校生プログラマーの率いるワンファイナンシャルは6月12日、お財布に溜まっているレシートを瞬時に現金化できるアプリ「ONE(ワン)」の提供を始めることを明らかにした。スマートフォンのカメラ機能を使ってレシートを撮影すれば、すぐにアプリ内のウォレットに10円が振り込まれるという。振り込まれた現金は銀行の手数料分以上になれば、国内のほぼ全ての金融機関で好きなタイミングで引き出すことができる。

ワンファイナンシャルCEOで高校3年生の山内奏人さんは「レシートには究極のいろんなデータが含まれている。いつ、どこで、誰が何をいくら払って、いくらお釣りをもらって買ったのか。一人ひとりの購買行動やパターン分析ができるようになる」と話す。蓄積データをメーカーなど企業向けに販売していく狙いがある。

山内さんは小学生の時に独学でプログラミングを始め、国際的なプログラミングコンテストやビジネスコンテストで数々の受賞経験を持つ。中学生時代から5つのベンチャーに参画し、15歳でワンファイナンシャルの前身となるフィンテックの会社を設立。2017年秋には投資ファンドから1億円を調達し、注目を集めた。

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オフラインのデータは手付かず

レシート現金化アプリ「ONE」による買い取りの上限は、1人につき1日10枚、1カ月に300枚。当面は、どんなレシートであっても1枚あたり10円としている。出金の時に、運転免許証や健康保険証といった公的な書類をアプリ内カメラで撮影してもらい、本人確認をする。このため、ワンファイナンシャルとしては個人にひもづく購買行動データが取得できることになる。

「戸籍情報や性別を抽象化することで、メーカーなど企業向けに売れるデータになる」と、山内さんはみる。

現状、メーカーのデータ分析というと「数万人の集団から属性をみて傾向を分析して『購買者の●割が20代』のように捉えている。けれど、スマートフォンが浸透した現代では、個人に合ったコンテンツを広告にできる時代です」

「例えば山内奏人という人間が、ある紅茶をどの頻度で買っていて、併せてどんなチョコレートを買っているかといったことも分かる。それなら併せて売ったらいい、というように変わっていく」と、山内さんはみている。

この人にこんなクーポンを届ける、こういう人にお店に来てもらいたいといったことが、より効果化的に直接アプローチできるようになるとイメージしている。

山内奏人。

「身近にあるもので、みんながいらないと思っていても実は価値あるもの」を探した。

ヤフーやアマゾンのような巨大eコマースは、オンライン上での膨大な購買データを持っているが、「オフラインのデータは手付かず」と、山内さんは指摘する。

「(小売業者の)プライベートブランドは別として、メーカーで販路を持っているところは少ない」

メーカーが購買データを入手できるのはもとより、レシートの購買データを蓄積していけば、逆にeコマースを手がける企業にもオフラインのデータを提供できることになる。

「周囲の友人を見ても、例えばパーカー1枚探すにしても、オンラインもオフラインも見ます。(蓄積したデータを提供することで)オンラインとオフラインのマッチングをしたいのです」

上限があるため、月額最大3000円の「お小遣い稼ぎ」程度の収入だが、口座さえ持っていれば、子どもでも忙しい主婦でも、誰でも現金を手にできる。

「ちょっとお金がないときに、稼げる仕組みを作っていきたい」と、山内さんはいう。

価値の非対称性に着目

お財布に溜まったら、まとめて捨てられてしまうレシート。コンビニエンスストアのレジ前には「不要レシート回収ボックス」が置かれ、受け取られなかったレシートが積み重なっている。

なぜそれを「買い取るサービス」をやろうと思い立ったのか。

「スイスから帰って来た友人が、お土産にフラン(スイスの通貨)をくれたんです。使わないし両替できないから、と。確かにその小銭は僕らにとってはただの金属の塊ですが、スイスに行けば価値ある通貨。ある人には価値のないものも、人によっては価値がある。これを僕は、価値の非対称性と呼んでいます。その究極がレシートだと思うんです。自分には価値のないものを、デザインや情報、インターネットを組み合わせて(欲しい人へ)最適化したい

フリマアプリの「メルカリ」や即時買い取りサービスの「CASH」もまさに、その「価値の非対称性」を押さえたサービスとみる。

「身近にあるもので、みんながいらないと思っていても、実は価値あるものってなんだろうと社員5人で考えました」

今後も次のサービスを準備中で、「あらゆる人に使ってもらえるプロダクト(製品)を作っていきたい」というのが、今の思いだ。

レシート現金化アプリONEの目標地点については「まず数百万枚は買い取りたいですが、具体的な数値目標のようなものは特にない」という。

「どのくらいのスピードで、どのくらいの質のデータが集まるのか。ふたを開けてみないとわからない。まずはユーザーを獲得するために、キャンペーン的な意味合いもあります。まずはやってみよう、と」(山内さん)。

(文・撮影、滝川麻衣子)

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