これはミラーレス一眼なのだろうか? FUJIFILM X-H1レビュー

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  • author 三浦一紀
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これはミラーレス一眼なのだろうか? FUJIFILM X-H1レビュー
Photo: 三浦一紀

ガタイがいいのは安心できる。

FUJIFILM Xシリーズのフラッグシップだった「X-Pro2」と「X-T2」の上に登場した、新たなフラッグシップミラーレス一眼「X-H1」。

フィルムの色合いをデジタルで再現する「フィルムシミュレーション」、高感度性能など富士フイルムらしい高い基礎能力を見せてくれました。特に、手ぶれ補正は超強力。

ただ、「ミラーレス一眼らしくないデカさ」がかなりのネックです。ゴツい分、剛性の安心さは確かにあるのですけど…。ということでさっそくレビューしていきましょう。

使用したレンズは「FUJINON XF16-55mm F2.8 R LM WR」、写真はすべてJPEG撮って出しです。

5.5段分の手ぶれ補正は三脚の出番を減らすほど強力

X-H1を触って一番驚いたのは、5.5段分の手ぶれ補正機能です。これにより、今まで手持ちでは撮影できなかったシーンが撮影できるようになります。

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これ、三脚を使ってないんです。作例のように、歩行者をぶらす場合、「三脚を使ってスローシャッター」が定番の撮影方法です。しかし、5.5段分の手ぶれ補正機能を使うと、1/8秒のスローシャッターでも手持ち撮影が可能です。ちなみに上の写真はレンズMAXに伸ばした55mmズーム時。三脚の呪縛から解放されるので、表現の幅が広がります。

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広角側での撮影なら、さらにスローな1/4秒でも手持ちでいけます。

ちなみに、1/2秒でもトライしてみたんですが、2回に1回は手ぶれせずに撮影できる感じでした。ここまで強力だと、シャッタースピードをどこまで落として撮影できるか、限界にチャレンジしたくなっちゃうもんです。

強力な手ぶれ補正機能により、撮影できるシチュエーションが広がるのは間違いなしです。

高感度の強さは特筆もの

Xシリーズと言えば、高感度撮影時の画質に定評があります。X-H1でも高感度の強さは健在でした。

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ISO 6400で撮影。ぱっと見、ノイズが感じられません。等倍まで拡大して、やっと暗部に少しのノイズが見られるくらいです。

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ISO 12800で撮影。ISO 6400とあんまり変わらない感じですね。完全に実用レベル。強力な手ぶれ補正機能と組み合わせて使えば、かなり暗いところでも手持ちで撮影できます。「夜?なにそれ?」って感じです。

FUJIFILMの割に色味は地味

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これまでのフラッグシップ機X-Pro2、X-T2と比べると色味は、曇天での撮影ということを考慮しても地味です。X-Pro2、X-T2含め、これまでのXシリーズは、色が深くポジフィルムのような透明感がありましたが、この機種はあっさりした色味です。

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暗部がやや潰れ気味です。コントラストが強い被写体の場合、RAWで撮影して後で現像をしたほうがいいです。ダイナミックレンジもあまり広くない印象です。

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おとなしめの発色なので、しっとりした質感の被写体には合っています。

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AFは迷うこともなく食いつきがいいです。本体背面のレバーで測距点を素早く移動できるのがいいですね。

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猫に睨まれました。

フィルムシミュレーションは楽しい

富士フイルムのデジカメと言えば、フィルムシミュレーションなしには語れません。いくつか撮影サンプルをご覧ください。

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フィルムシミュレーション「ビビッド/Velvia」で撮影。鮮やかな色味になりますが、どぎつさはありません。特に本機のJEPGは地味な絵作りなので、JPEGオンリーならばこのモード常用でもいいかも。

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僕が個人的に大好きな「クラシッククローム」。彩度低めでコントラスト高め。非常に落ち着いてしっとりとした質感になります。なんならこれを常用のモードにしたいくらいです。

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ソフト/ASTIA」は、コントラストが低く柔らかい描写になります。クラシッククロームが登場するまでは、このモードが一番好きでした。

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X-H1で初登場のフィルムシミュレーション「シネマ/ETERNA」です。おとなしめの発色に暗部の豊かなトーン再現で、動画向き。写真だとちょっと地味な印象です。

フィルムシミュレーションでひとつ残念なのが、ファインダーを覗きながらの設定変更がやや難しいところ。なので、被写体ごとに設定を変えるよりも、フィルムカメラ気分で「今日はASTIAでいくか」というように、一日特定のフィルムシミュレーションだけで撮影するというスタイルもいいかもしれません。フィルムで撮影しているみたいで新鮮な気持ちになれるかも?

デジタル一眼と見間違う「ゴツさ」

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Photo: 三浦一紀

ミラーレス一眼と言えば、デジタル一眼レフに比べミラーボックスがない分、本体が薄くて軽いのがウリです。

しかし、X-H1は違います。「高耐久・高剛性」のボディと謳われている、プロ向けの機種。ボディの耐久性を高めるのならばコンパクトさは不要とばかりに、W139.8×H97.3×D85.5mm、約673gと堂々たるナイスバディに仕上がっています。重量だけならば、ソニーのα9と変わらないのですが、ボディの大きさはこちらのほうが大きいので、よりナイスバディ感があります。ぱっと見でも、「これはミラーレス一眼なのだろうか?」と思わずにはいられないサイズです。

今回使用したレンズ「FUJINON XF16-55mm F2.8 R LM WR」が655gですから、合わせて1,328gです。キヤノンやニコンのフラッグシップモデルに比べれば断然軽いですが、重さもミラーレス一眼とは思えないヘビー級です。

こうなってくると、ミラーレス一眼に小ささ、軽さを求めるユーザーには受け入れられないのではないかと。正直言えば、X-H1のサイズ感ならば、「デジタル一眼レフでもいいのではないか…」とさえ思ってしまいます。

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Photo: 三浦一紀

ただし、その大きさがメリットとなっている部分もあります。サイズが大きいことにより、グリップがかなり深くなっているのでしっかり握り込めるんです。そのため、撮影時に安定して構えることができます。ミラーレス一眼のなかには、本体の薄さを優先してグリップが浅い機種が多いのですが(ない機種さえある)、グリップがしっかりしていることのメリットを実感できました。

僕はグリップが深いカメラが好きなので、X-H1のデザインは嫌いではありません。ちょっと小指が余る感じがしたので、できれば別売りのバッテリーグリップを着けたかったくらいです。

まあ、だったらデジタル一眼レフでいいんじゃないかと(二度目)。

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Photo: 三浦一紀

その他の操作周りをみると、本体上部には、シャッタースピードとISO感度を設定するダイヤルがどどーんとあります。これはX-Pro2X-T2などに通じるデザイン。こういうメカニカルなところが、カメラ好きの心をくすぐります。

各種設定がダイヤルで行なえると、カメラの電源が入っていなくても現在の設定を確認できる利点があります。

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Photo: 三浦一紀

本体上部右側には、大きなサブ液晶があります。富士フイルムの中判ミラーレスデジタルカメラGFX 50Sと同じ、E-Inkを採用。バックライトONで色を反転できます。表示されるのは、初期設定でシャッタースピード、F値、露出、ISO感度、フィルムシミュレーション、画質モード、ホワイトバランス、画像サイズ、撮影モードと情報量がかなり多いです。ここを見るだけで、カメラの大体の設定が分かるのは強みです。

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Photo: 三浦一紀

シャッターボタンは、繊細なタッチの「フェザータッチシャッターボタン」。軽いんですよ、このシャッター。しかも静か。ただ、慣れていないと半押ししようとしたらシャッターが切れている、なんてことも。その辺は使い込めば慣れると思います。

また、約369万ドット視野率100%のEVFは視認性バツグン。まるで光学ファインダーを覗いているかのようなクリアさで、左右にカメラを振っても遅延があまり感じられません。以前からXシリーズのEVFは出来がいいですが、今回さらによくなっている印象。X-H1のEVFを知ってしまうと、他社のミラーレス一眼には戻れないかも。

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Photo: 三浦一紀

ちょっと気になったのが、背面液晶。約104万ドット3型タッチパネル式TFTカラー液晶。3方向チルト方式です。上下への可動はもちろん、左右へも動きます。

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Photo: 三浦一紀

この機構が複雑で直感的に動かしづらい。関節技っぽく、曲げちゃいけない方向に動かしそうになって壊しそうになりました。特に左右。動画対策で左右にも動くようになったのでしょうが、正直これ、あんまり使わないような気がするんですよ。何よりヒヤヒヤしながら背面液晶を動かすのは精神的にキツい。

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チルト液晶を使って鳩目線で撮影。低めから狙うときにありがたさを感じます。

ほかに気になったのはバッテリー持ちの悪さ。235枚を撮影して、5メモリ中残り1メモリまで減りました。半日の撮影でぐんぐんバッテリーが減っていくのはさすがに心許ないかな。もし一日撮影したいのであれば、予備バッテリーは必須。バッテリー切れで文鎮化したX-H1を持ち歩くのは想像もしたくない…。

FUJIFILMらしさが影を潜めた。そして、やっぱゴツい

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X-H1は、富士フイルムらしい質実剛健なカメラです。5.5段分の強力な手ぶれ補正機能とノイズの少ない高感度の画質は、環境を問わず撮影チャンスを大幅に広げてくれます。物理ボタンが充実しているので操作性は快適ですし、豊富なフィルムシミュレーションを使うことで自分の写真の幅が広がります。

しかし、今ひとつ突き抜けた特徴がないのも事実。Xシリーズの最大のセールスポイントであろう「JPEG撮って出しの画質の美しさ」が、X-H1ではちょっと影を潜めた感があります。

そして、なにより最近荷物を軽くすることに命をかけている僕としては、ミラーレス一眼なのに小さくもないし軽くもないというところがどうしても引っかかります。

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X-Pro2なんかは、定期的に「欲しい!」と思うときが来るんですが、今のところX-H1は欲しいという気持ちがあまり起こりません。価格がこなれたころに検討って感じでしょうか。

本体価格は、富士フイルムオンラインショップで25万8660円(税込)。使用したレンズ「FUJINON XF16-55mm F2.8 R LM WR」は13万9860円(税込)です。


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(三浦一紀)