「好きなことを仕事にしたいけど、方法がわからない」

「目標から逆算してキャリアを描けって言われるけど、そもそも目標がない私はどうしたらいい?」

同世代から聞こえてくる悩みを愚痴で終わらせずに、そのソリューションを「学び」という形で提供するふたりの女性がいます。

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中山紗彩さんと福田恵里さんが設立したSHE株式会社の主軸は、 21世紀を生きる女性たちの新しい働き方の支援事業。 取材で訪れた表参道のオフィスには、2018年4月11日に行われた1周年記念パーティの華やかなデコレーションが残っていました。

見つける、深掘る、働く

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写真左:中山紗彩さん(代表取締役社長・CEO)、右:福田恵里さん(取締役・CCO)
Image: Ryuichiro Suzuki

SHEのビジョンは「ひとりひとりが自分にしかない価値を発揮し、熱狂して生きる世の中を創る」こと。SNSや口コミを中心とした拡散で、事業開始から半年で累計受講者数が2000人を突破(2018年5月でのべ2500人に)。

ポーラ・オルビスホールディングスほか10数人から資金調達も実行し、着実に事業規模を拡大しています。

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Image: Ryuichiro Suzuki

中山さん「現在SHEでは3ステップでの事業展開を行なっています。最初は、個人名で生きる方々の支援をするための機能として、SHEworks(シーワークス)の提供から始めたのですが、それを構想する中で、そもそも個人名で生きるに際して自分の“好き”や“得意”が何なのか分からない方も多いことに気づいて、キャリアスクールSHElikes(シーライクス)を始めました。

SHElikesは月額会員制で、毎月25~30くらいのさまざまなレッスンを受け比較検討することで「自分だけの好きや得意」に出会える機能として位置づけています。

そのSHElikesで見つけた“好き”を専門スキルとして深堀りして身につける機能も必要だと感じ、その後2カ月間短期集中レッスンのSHEloves(シーラブズ)を開講しました」

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Image: Ryuichiro Suzuki

福田さん「SHElovesでは、likesで反響が高かったものを取り上げるようにしています。現状は3コースで、今後他のコースもどんどんリリースを予定しています。職業としては在宅ワークができたり、女性がライフイベントに合わせて働き方を柔軟に選べるものが人気。ウェブデザイン、ライティング、広報・PR、起業家/事業家開発コース、動画クリエイトコースなどがあります」

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見つける、深掘る、働く——がSHEの3つの柱。SHElikesのレッスンは、ヨガや料理といったライフスタイル系から、中山さんが教える「本当に活躍できる『広報』人材になる方法」、福田さんが教える「初心者限定のWebデザイン集中レッスン」といったスキルアップ系までさまざま。月1回、月2回、受け放題プランの中からプランを選んで、自分のペースで好きなレッスンを自由に受講。そこで“好き”が見つかればSHElovesの2ヶ月集中講義で“深掘り”していきます。

SHElovesのレッスンは1回5時間×7回。とにかく効率的に、がっつり学んですぐ働けるように指導していくスパルタ方式です。

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Image: SHE株式会社

SHElikes会員はコワーキングスペースSHEworksを月額3500円で利用することができ、業務斡旋や転職斡旋などのサポートも受けることができます。

スキルセットが真逆のふたり

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Image: Ryuichiro Suzuki

もともとリクルートで別々のカンパニーにいた中山さんと福田さん。中山さんが先にリクルートを辞め、スタートアップの取締役をしていたときに、ITイベントの登壇者として福田さんを招いたことが事業のきっかけでした。

福田さん「当時、私がデザインガールズという、初心者むけのWEBデザインスクールを開講していて。ヨガやスイーツを講座中に楽しむ取り組みが受けて、けっこう人気が出たんです。そのときに、“好き”を仕事にすることって、人生に納得感を与えてくれるという気づきがあった。ちょうどそのころ、中山が外部イベントの登壇者として呼んでくれて、そこで意気投合しましたね」

中山さん「福田と私は、スキルセットが真逆。今も福田がユーザー視点でサービスを見て、私がビジネス視点でそれ以外を見る、という役回りの分担ができています。守備範囲が違うけど、背中を預け合える関係になれそうだなということはもちろん感じましたし、何よりも成し遂げたいことが一致していた。困難やリスクがあっても、世の中に価値提供したいことが一致しているからこそ、ここまで一緒にやってこれた、とも思っています」

ゆるふわと見せかけて…

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Image: Ryuichiro Suzuki

レッスン会場やコワーキングスペースとして使われる表参道オフィスには、ふわふわのラグとペールトーンのグレーのソファをおいて“おうち感覚”に。土足厳禁、女性がはだしでくつろいで仕事できる空間は、SHEの世界観そのものです。

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Image: Ryuichiro Suzuki

福田さん「クリエイティブはサイトのデザインからイラストまですべて内部でやっています。世界観の統一は、我々がとくに大切にしているところ。自分を振り返っても、女性は本能的にかわいいもの、美しいものに惹かれると思っていて。見た瞬間にときめいたら、そこに行きたいと思う。そういう本能的な部分も重視してあげたいと考えています」

キラキラした入り口は、参加者を新しい学びの世界に誘う仕掛けでもあります。

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Image: SHE株式会社

福田さん「ゆるふわ・スパルタを我々は目指していまして(笑)。入り口はちょっとキラキラしていて、楽しそうな雰囲気。でも中身はふわふわなわけではなく、きちんと実を伴っていて、実践的でスキルアップできる内容であると。そういうギャップを感じてもらうことで、満足度がアップするような仕立てにしています」

価格も手ごろなので、「女の子が集まってわちゃわちゃして終わるんだろうなと思っていたら、めちゃくちゃ実践的すぎてびっくりした!」といった感想が多いとのこと。

参加者の年代は20~30代のボリュームゾーンを中心に、学生から50代以上までと広範囲。子育てが一段落し、自分の学びに時間を使いたいという女性もいます。

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Image: Ryuichiro Suzuki

中山さん「面白いのは、会員の方が先生になるケースが多いこと。我々もコミュニティの作り方として、ピラミッド型ではなく球体型で、フラットに学び合える組織を作りたいと思っています。みんながギブしあえる空間のほうが、コミュニティへのエンゲージメントも高まる。自分の介在価値を感じられて、愛着も高まりますよね」

キャリアデザインのレッスンに背中を押されてか、とにかく転職の報告が多いのも特徴的。SHElovesのコンテンツはスパルタなだけに、受講生同士に濃いつながりができるといいます。

ゴールデンウィークに旅行に行って、お互いの実家に泊まり合った会員も。会員同士が交流して仲良くなっている姿を見ると本当に嬉しいと、ふたりは口をそろえます。

もはや言い訳ができない時代

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Image: Ryuichiro Suzuki

小中高一環のレガシーな女子校で18歳までの12年間を過ごし、わりと浮いた存在だったという中山さん。

中山さん「私自身は中3くらいから広告代理店に入りたいと思っていて、学生時代の後半には自分たちで会社をやりたいという思いを持っていました。やりたいことも明確にあるし、実現するためのプランも自分のなかにあるタイプ。そういった生き方を見ていた友達に、キャリアや人生について相談される機会が多くなり、それが今やっているSHEの事業が必要だと思うきっかけになりました。

いまは副業、兼業の解禁も進み、好きなことをリスクなく追求しやすい時代になりました。環境も整ってきているし、ロールモデルとなる人の話を聞く機会も増えてきた。逆に、好きなことを行動に移していない人は、言い訳ができない時代になっています。

こういう良き時代なので、好きなことや夢があるのならぜひ挑戦してほしい。納得感のある生き方をすることこそがいい人生につながるんじゃないかと思います」

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Image: Ryuichiro Suzuki

自分の価値を発揮して生きるというSHEのビジョンは、学びのモチベーションの根本と言えるかもしれません。

大きな飛躍を予感させるSHEのふたり。SHElikes、loves、worksときて、さらなる展開の展望は? と伺うと、「自分たちが介在価値を発揮できる限り、世界中の女性たちにSHEの事業を通じて、人生をより良い方向に転換してもらうこと」という答えが返ってきました。

image: 鈴木竜一朗

Source: SHE株式会社, SHEworks, SHElikes, SHEloves