敏腕クリエイターやビジネスパーソンに学ぶ仕事術「HOW I WORK」シリーズ。今回はニューヨーク州立ファッション工科大学学長のジョイス・F・ブラウン博士の仕事術です。

今年はジョイス・F・ブラウン(Joyce F. Brown)博士がニューヨーク州立ファッション工科大学(FIT)の学長に就任してから20周年を迎えます。同校はカルバン・クライン、マイケル・コーズ、Elle誌編集長のニナ・ガルシアといった世の注目を集めるデザイナーを輩出しています。女性としてもアフリカ系アメリカ人としても初のFIT学長となる以前のブラウン博士はニューヨーク市立大学副総長、ニューヨーク市政務地域問題担当の副市長、臨床心理学の教授を歴任しています。そんな彼女に、現在に至るまでの経緯、仕事の仕方、アカデミックな環境で物事をどのように決めていくのか、聞いてみました。

居住地:ニューヨーク

現在の職業:ニューヨーク州立ファッション工科大学学長

現在の携帯端末:iPhoneとiPad

── 略歴と現在の仕事に至るまでの経緯を教えていただけますか?

私が育った家庭では、読書が推奨され、教育に最も価値が置かれていました。両親は大学に行く機会に恵まれませんでしたが、姉と私は当然大学に行くものだという雰囲気の家庭でした。

私はニューヨーク市立大学キャンパスの隣で育ったので、1日中地下鉄から大勢の大学生が出てきては授業に向かう姿を毎日見て啓発されていました。自宅のアパートから大学の研究室の窓の中をのぞくことができました。大学キャンパスが私たちの遊び場で、そこに通う大学生みたいになりたいと思っていました。

それと同時に、祖母からも同じぐらい影響を受けていました。彼女はすばらしい腕の仕立屋で、多くの有名デザイナーの作品を縫いました。母も裁縫はできました。ですから私の生活はファブリック、豪華なテキスタイル、手で施した刺繍、マネキン、三面鏡、ピン、ボビン、芯材、ペプラムで溢れていました。

ですから、FITにきたときは、ちょっと我が家に帰ったような感じがしました。裁縫を習ったことはありませんでしたが、両親が私に受けさせたいと思った教育を追求してきた結果、今は美しい物を作ることで世の中を変えようとするダイナミックでクリエイティブな人々(学生も教員もです)に囲まれています。

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Photo: Lifehacker US

──最近の1日の流れを教えてください

  • 8:30:評議委員会とFIT創立メンバーと朝食
  • 9:45:四半期に1度の評議委員会
  • その後、建築家たちと新校舎の着工式のプランニングしながらランチミーティング
  • 午後:材料科学の分野で大学職員として採用する可能性のある人とインタビュー。
  • FIT/Infor DesignとTech Labの企業パートナーとミーティング。

会議の合間を縫ってメールに返信したり電話をかけたり、デスクワークを片づけたりします。

夜は、FIT博物館でウイミンズ・フォーラムにノーマン・ノレル展示会を案内してレセプションのホストを務めました。

── 「これがないと生きられない」というアプリ・ソフト・ツールは?

iPhone、iPad、メールとテキストメッセージです。

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Photo: Lifehacker US

── 仕事場はどんな感じですか?

私のオフィスにはデスクと会議用の大きいテーブルがあります。自分のオフィスでたくさん会議をするので、その会議用テーブルの周りに座っています。ウイングチェアが2脚あり、これはオフィスでインタビューするとき便利です。

デスクの上は、ごちゃごちゃしたくないので私生活の写真は置かないようにしています。どこに何があるかわかるのですが、見栄えは良くないです。大学の写真、2,3年前に学生用ダイニングホールを着工したときの記念シャベル、学部の広報誌やイラストなど、特別なできごとを思い出させてくれるものがたくさんあります。

でも、お気に入りは、デザイン学科の学生が作ったおもちゃです。みなさんのお子さんやお孫さんが遊んでいる有名キャラクターのおもちゃのほとんどは本校デザイン科の卒業生が制作したものです。ウイングチェアには、インタビューで使っていないときは、くまのプーさんに出てくる「イーヨー」が鎮座しています。

── お気に入りの時間節約術やライフハックは何ですか?

時間の節約はうまいほうではありません。プロジェクトを1歩1歩丁寧に考える静かな時間を何とか割くことができたら、いくつかのステップをまとめてしまうことで時間を節約するぐらいでしょうか。書くことでプロジェクトが概念化できるので、たくさんのリストを作ります(ときには、済んだタスクをバツ印で消す喜びを味わうためにしていることもありますが)。細部がおわれば、それを成し遂げるのにベストなチームメンバーをリストアップできます。

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Photo: Lifehacker US

──仕事場で採用しているプロセスで、興味深いもの、珍しいもの、こだわりがあるものがあれば教えてください

アカデミックなモデルは、企業用モデルとは大きく異なります。ヒエラルキー的要因がはるかに少なく、「共有ガバナンス」として知られていることを重視する必要があります。毎日その日に成された決定とその結果の責任は私が取りますが、協議のプロセスは重要だと思っています。

FITでは、長年にわたって一連の戦略計画プロジェクトに取り組んできました。毎回、私はコミュニティからさまざまなセクションのグループを招集して計画評議会を作り、ファシリテーターと一緒に目標を明確にして、目標達成のための戦略を話し合い、前進するためのイニシアチブを形成します。それから、さらに幅広いセクションの人たちを招集する討論会をいくつも行ないます。各討論会では、計画評議会で出された計画が発表されて、それに対する回答をもらいます。

このプロセスが終わるまでに、少なくとも200人が目標を打ち立て、それを達成する方法について意見を述べることになります。その後、暫定的な結果を発表して、コミュニティから意見を募ります。このプロセスの真の価値は、私たちの未来のビジョンを共有して展開することです。誰でも自分の考えが計画に反映されているのを見ると、自分も一端を担っていると感じるので、共有している目標達成をさらに推進するために、ますます自分が担当していることに力を注ぐようになるので、目標以上のことが達成されることもあります。

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Photo: Lifehacker US

── どんな人たちからどのように仕事を助けてもらっていますか?

仕事の日は私のスタッフがいますし、業務レベルではそれぞれの専門分野を持つ副学長たちで構成された顧問委員会があって、FITコミュニティ全体と協力して大学の戦略的計画を遂行したり文書作成をしてくれます。それが、この大学の原動力となっています。

──ToDoはどうやってトラッキングしていますか?

小さな都市を運営しているような感じで、まさに年中無休です。私はたくさんリストを作り、私のチームが私をトラッキングしてくれているので何とか軌道を外れずにいられます。そして、もちろん、電話ですね。テクノロジーの最もすばらしいことの1つは、真夜中に誰のことも邪魔せずにメッセージを送れることです。そして朝一番に返事がもらえることです。

──どのように充電していますか?

観劇と花やガーデニングが大好きです。あと、旅行も大好きです。時差のある国に行ってニューヨークが眠っている時間に遊んだり仕事をしたり(これじゃ休暇とは言えませんね)できるのは凄いことです。静かでカジュアルな夕食を夫や友人たちと共にするのも好きです。

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Photo: Lifehacker US

──仕事の合間に何をするのが好きですか?

飾りつけることと買い物が好きです。これは全部リサーチであって仕事の一部なんだ、と自分自身も夫も納得させています。

──今日あなたがされたのと同じ質問をしてみたい相手はいますか?

アマゾンCEOのジェフ・ベゾスさん。

──これまでにもらったアドバイスの中でベストなものを教えてください

注意を払うこと。注意深く話を聞くこと。人の話を聞いて良いアイデアを取り入れること。組織の中ではコミュニケーションのラインと責任を重視すること。他人に当事者意識を持ってもらうためにその人がどのような貢献をしているか自覚できるようにすること。

──改善しようとしていることはありますか?

片づけるべき仕事を全てこなすことと十分な睡眠をとることです。


Image: Lifehacker US

Source: FIT

Nick Douglas – Lifehacker US[原文