サイエンス

24時間明るい「白夜」で生物の睡眠サイクルはどんな変化を遂げているのか?

By Judith

人間を初めとする地球の生物には、「体内時計」または生物時計と呼ばれるメカニズムが備わっていることが知られています。体内時計は主に太陽が登ってくる朝陽の光によってそのサイクルが決定づけられていると考えられているのですが、北極圏や南極圏にみられる「白夜」はそんなリズムを狂わせてしまいます。しかし、北極圏に住む生き物は、そのような特異な状況に対応する能力を進化の過程で身に付けていると考えられています。

How Does the Summer Solstice Affect Animals?
https://www.livescience.com/62870-summer-solstice-animals.html

一年で最も昼の時間が長くなる夏至は、毎年6月21日頃に訪れます。この現象は地球の地軸が傾いていることが原因で起こるもので、夏至は冬至と並んで古くから人々の生活の中で最も重要な日であったと考えられています。

夏至とは何か? - GIGAZINE


人間にとって、体内時計のリズムを整えるのは毎朝の朝日がもたらす「明るさ」であると考えられています。これは概日リズムと呼ばれるもので、太陽光がもたらす1日の中における明暗の変化が刺激となってリズムが整えられています。

よく言われる「日の出の光が体内時計をリセットしてくれる」というのが概日リズムの働きをしめしているのですが、北極圏に近い地域など、夏になると24時間にわたって太陽が地平線の上に存在し続ける白夜が訪れる地域では、この概日リズムに狂いが生じることがあります。地球に住む多くの人類にとっては「夜に暗くなったら寝る・朝に明るくなったら起きる」というのが典型的な睡眠と起床のパターンといえますが、一日中明るい白夜の地域では、そのサイクルを作り出す明暗のリズムが完全に失われてしまうためです。


そのような太陽が全く沈まない地域では、「日が沈まない」ということをいかしたイベントが開催されることもあります。カナダのユーコン準州にある都市、ドーソン・シティで開催される徹夜のゴルフトーナメント「Midnight Sun Golf Tournament」はその例の一つ。2018年度は6月23日に開催されます。

Midnight Sun Golf Tournament - DawsonCity.ca
https://dawsoncity.ca/event/midnight-sun-golf-tournament/


人間がこのようなイベントを開催できる理由の一つに、体内時計が周囲の影響を受けやすい、すなわち「体内時計が狂いやすい」という点が挙げられます。1974年に発表された研究内容では、人間は明るいままや暗いままの環境の中では、時計を使わないと時間の感覚を持ち続けることが非常に困難であることが示されています。

しかし、白夜が訪れる地域に住む動物の中には、そのような特殊な環境に適応してきたものも存在します。アラスカ大学フェアバンクス校の生物学者であるコリー・ウィリアムズ准教授によると、体長15cmほどの鳥「ヒレアシトウネン」はそんな生き物の一種で、夜の長さの変化に睡眠時間が左右されないという特徴を備えています。ウィリアムズ氏によると、ヒレアシトウネンのつがい(夫婦)は、2匹が交代で睡眠と起床を繰り返すことで、常にどちらかが起き続けている状況を作り出しており、そのサイクルは「24時間周期で動いているものではありません」とのこと。

By Mick Thompson

頭に大きなツノを持つトナカイもまた、白夜による影響を受けない生き物の一種です。トナカイは、夜にまとまった時間の睡眠をとるのではなく、食物を食べた後にそれらを消化するタイミングで短い眠りをとるというサイクルを身に付けています。そこには、人間などのような概日リズムは存在していません。

ウィリアムズ氏によると、このような特徴は極地域に生息する生き物においてのみ見られるものであるとのこと。昼夜の時間差が大きい地域では、特定の時間帯に活動することによる利点は失われます。例えば、エネルギーを節約したり、天敵から身を守るために夜間に餌を求める夜行性の生活パターンを持っていたとしても、そのメリットは夜が訪れない夏の時期になると全く意味を成さないものとなってしまうためです。

このように、極地域の生き物は他の地域の生き物とは異なる生活パターンを身に付けているわけですが、その一方で概日リズムに基づく生活パターンを持つ生き物がいることも事実であるとのこと。ウィリアムズ氏によると、リス科の生き物であるホッキョクジリスは、夏でも夜に相当する時間帯になるとエネルギーを節約するために巣穴に戻って休む行動パターンに固執しているとのこと。一方で、ホッキョクジリスは9月から4月頃までの時期を冬眠して過ごします。そのため、ホッキョクジリスは概日リズムに基づいた生活パターンと、季節に基づいた生活パターンの両方を持つ生き物といえそうです。


ウィリアムズ氏と同じ分野の研究に携わる科学者は、概日リズムを固持する動物とそうでない動物の違いについての研究を引き続き進めているところです。そんな中、約1世紀にわたって平均気温が上昇し続けている地球の環境に対し、これらの生き物がどのように生活パターンを変化させるのかについても、科学者は感心を寄せているとのことです。

By Eden Brackstone

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in サイエンス,   生き物, Posted by darkhorse_log

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