メタップスが提供するウォレットアプリ「pring」のウェブサイト。ポイント獲得をメリットとしてユーザー拡大を図る他社アプリとは大きく異なる戦略を採用しているようだ。
pring HP
キャッシュレス社会の早期実現に向けて、風雲急を告げるQRコード決済市場。「どこが覇権を握るのか、今年でほぼ勝負は決まる」と言われるなか、ここに来て大きな動きが出てきた。
オンライン決済事業を手がけるメタップスは、グループ会社が提供するウォレットアプリ「pring(プリン)」を通じたQRコード決済に対応する加盟店の募集を始める。決済手数料は業界最安値となる0.95%を予定している。関係者への取材で分かった。
QRコード決済を利用する場合、加盟店は決済手数料を支払う必要があり、この負担が導入拡大の妨げになっていると言われてきた。楽天やLINEなど他の事業者が提供するQRコード決済の手数料は多くが3%台前半だが、メタップスのpringはそれらと比較しても圧倒的に安く、加盟店の負担を従来の相場の3分の1以下に減らした形だ。
飲食店や小売店など実店舗であれば中小を問わず加盟できるが、当初は法人格を条件とし、準備が整い次第、個人事業主にも拡大していく。初期費用と月額費用は無料。
pringは、店舗側が提示するQRコードをユーザー側のアプリで読み取って決済する方式を採用。店舗側はQRコードをタブレットなどのデバイスに表示するほか、紙に印刷して店頭に掲示しておくこともできるので、特段の設備投資を必要としない。
シェア争い、天下分け目の戦いへ
中国のように、日本でもQRコード決済は普及するか(写真はイメージです)。
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QRコード決済市場では、ここ数年激しいシェア争いが続いている。
2018年3月にLINEが「LINE Pay(ライン・ペイ)」を開始。支払い可能な加盟店を年内に100万店舗まで増やす計画を発表した。4月にはNTTドコモが「d払い」を開始し、年内にローソンやマツモトキヨシホールディングスなどの全国1万9000店舗で使えるようになる。
6月にはヤフーも参入(「Yahoo!ウォレット」にスマホ決済機能を追加)。家電量販店の上新電機の店舗、白木屋や魚民などモンテローザが運営する飲食店から導入を進めるという。2016年にいち早くサービスを開始した「Origami Pay(オリガミ・ペイ)」「楽天ペイ」なども加盟店の開拓を進めている。
また、業界関係者によると、2015年からECサイトを中心に決済サービスを提供している「Amazon Pay(アマゾン・ペイ)」も、実店舗での決済を可能とするサービスの準備を進めているという。
「pring」は、SNSや電話番号を用いた送金機能や、加盟店でのQRコードを用いたスピーディーな決済を実現するもの。銀行口座と直結しているため、アプリへのチャージや口座に戻しての現金化がスムーズに行える。送金や支払い、口座からアプリへのチャージ、アプリから口座への戻し入れにも一切手数料がかからないのが特徴。
アプリ直結で利用できる銀行は、2017年春に業務提携したみずほ銀行、2018年2月に接続した三井住友銀行に加え、三菱UFJ銀行との接続も時間の問題とみられる。また、現在キャッシュレス決済を促進するための実証実験を共同で行っている福島県の東邦銀行など、地方銀行との接続も順次可能になる。
Business Insider Japanの取材に対し、「pring」の広報担当者は「キャッシュレス社会を早期に実現するため、利用者や加盟店にとって最も適切なサービスのあり方を検討しており、近いうちに具体的な内容を明らかにしたい」と話している。
(文・川村力)