以前、中国の警官が顔認証サングラスを使い、5万人の群衆の中からたった1人の犯人を見つけたというニュースがありました。こうした個人を特定する技術は実用化が進んでいますが、どうやらその進化は私たちが思っていた以上かもしれません。

Co.Designの記事によると、顔だけではなく、息継ぎやタイピングでも個人を特定できるというのです。

1. 息継ぎによる特定

話している途中に誰もが行なう息継ぎ。カーネギーメロン大学の研究チームは、息継ぎの音に注目しました。

論文によると、息継ぎ時に、短い時間で大量の空気を肺に取り込もうとするため、乱流が発生し、声道が共鳴することで音が出ます。この音は声道の形に依存するため、個人の特定に利用できるのではないかと研究チームは考えたそうです。

実験の結果、録音した息継ぎの音を分析することで、91.3%の精度で個人を識別できました。

息継ぎは声とは異なり、意図的に変えられるものではないため、犯罪科学分野での応用が期待されています。

2. 歩き方による特定

ジャーナル誌『IEEE Transactions on Pattern Analysis and Machine Intelligence』によると、AIを使った歩き方認証システム「SfootBD」は、人間の歩行に関係する24の要素をすべて追跡できるシステムということ。これを使うことで、誤差率0.7%で個人を識別できるようです。

このシステムには高解像度カメラだけでなく、床に圧力センサーを埋め込む必要があるので、こっそり設置されることはまだないかもしれません。とはいえ99.3%の的中率は目を見張るものがあります。

セキュリティチェックの混雑緩和に向けて、空港やコンサート会場で導入されるかもしれませんね。

3. タイピングによる特定

毎日何気なくタイプしているキーボードですが、そのタイピングのリズムは、実はその人固有なのだとか。ルーマニアの会社「TypingDNA」が作ったJavascriptのプラグインを使うと、キーボード上の44文字の入力の仕方だけで、99.9%の精度で個人を特定できてしまうというのだから驚きです。

これを利用すれば、パスワードが不要になる(任意の文をタイプするだけでいい)日も近いかもしれません。

4. 声による特定

Google HomeなどのAIスピーカーは、すでに家族の声を聞き分けています。最新の研究はそれ以上に進んでおり、Wells Fargoなどの金融機関は、声紋鑑定を使って不正電話の常習犯を特定しているそう。

ある研究者は、「声は指紋やDNAと同等」とさえ述べています。そこまでいかずとも、声は現段階でも、身長、体重、心理状態を判断する材料に使われているようです。電話を使った詐欺事件はまだまだ横行していますが、声のデータを活用することで詐欺防止に使われるようになるかもしれませんね。


「歩く」「タイプする」「話す」「息継ぎをする」。何気ない行動で個人が特定できる時代は、すぐそこまで来ているようです。良くも悪くも、このようなテクノロジーをどう使うかは私たち次第。悪人の手に渡れば、特定の人物をストーキングすることに利用される可能性だってあります。

人としての倫理感がますます試される時代になりそうですね。


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Source: ギズモード・ジャパン, Co.Design, IEEE Xplore, TypingDNA, USA Today, arXiv