赤い太陽を発生させた、帯電したほこりの研究からわかったこと

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  • author かみやまたくみ
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赤い太陽を発生させた、帯電したほこりの研究からわかったこと
2017年10月16日に英国で目撃された赤い太陽

昨年の10月16日、英国南部で太陽が赤くなりました。この不思議な現象を英国各地の人々がSNSに記録しました。

気象学者たちはその原因をすばやく突き止めました。サハラ砂漠とイベリア半島から巻き上げられたほこりがハリケーン・オフィーリアに乗って英国まで北上、その途上でほこりは負に帯電したのです。

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参考:巻き上げられたほこり
Image: NASA/Flickr

英国では、このほこりが部分的に太陽を覆い、暗い赤みがかったオレンジに染まりました。ある新しい研究にこの巻き上げの分析結果が載っており、その発見は将来の天気予報を改善するのに役立つでしょう。

どうして太陽は赤くなるのか?

英国のレディング大学とバース大学のチームがいくつかの気象観測所からほこりの雲を観察しました。そして、観測所のひとつで、雷検知装置によって増加する雲の電荷を測ることができました。

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赤い太陽
Image: Joybot/Flickr

まず、どのようにして太陽が赤くなるかを説明しましょう。Environmental Research Lettersに発表された論文には、以下のようにあります。

太陽が赤くなる現象は、青い光が優先的に散乱することで発生します。光は光学的に厚い(※訳注:不透明な)巻き上げの中で減衰するためです。

ほこりは太陽光の中のいくつかの色の光を、ほかの色の光よりも散乱させ(そして光を弱め)ます。その結果が赤みがかった太陽なのです。

巻き上げられたほこりは雲を生む?

これらの複合的な要素のすべては、天気を予測するのに重要かもしれません。前述の論文では、巻き上げの中の粒子が、その日に形成される雲に影響を及ぼすかもしれないとしています。

落下する粒子は、観測された電荷と同様に、より多くの水分子を蓄積する可能性があります。への字型の水分子は、その片側により多くの電荷を持つように形づくられているので、ほかのものにくっつく傾向があるのです。実際、観測所のひとつでは、ほこりの雲が到着した後の期間に下降する雲を観測しましたが、相関は原因ではありません。

前述の論文によれば、巻き上げられたほこりは一般に、粒子同士の衝突と摩擦によって電荷を含みます。しかし、このようなエアロゾル粒子(※訳注:粉塵・浮遊粉塵)は雲の種になりうるので、その電荷はさらなる研究に値します。世界最大の衝突型円板加速器「大型ハドロン衝突型加速器」では、粒子の大きさや構成のように、ほこり粒子のさまざまな性質がどのように雲に影響すかを測定する実験を行なってさえいます。しかし、新しい論文には次のように記されています。

ほこりの電気的性質はずっと観察されていましたが、その電気的影響は大気数値モデルにおいて考慮されていません。

結局のところ、気象学者の仕事は天気を予測することです。そして、天気はしばしば難しい物理問題になります。なので、地元の天気予報士がいい予報ができずにいるなら、優しくしてあげましょう。彼らは、物理の不思議に翻弄されている人たちなのですから。



Image: Flickr (1, 2, 3)
Source: Environmental Research Letters via Physics

WorldRyan F. Mandelbaum - Gizmodo US[原文
(かみやまたくみ)