みなさんは「クローン文化財」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。あまりに異なる言葉の組み合わせで驚いてしまいそうですが、これは文字通り、重要な文化財を復元し、クローンを生み出す技術のこと。
IBMのWebメディアMugendai(無限大)にて、この技術の生みの親である、東京藝術大学の宮廻(みやさこ)正明名誉教授のインタビューが掲載されていました。そこには、類まれな芸術家としてのセンスだけではなく、最先端テクノロジーとアナログ技術を融合させるアイデアマンとしての教授の姿がありました。
オリジナルを超越する、「クローン文化財」のすごさとは
宮廻教授が生み出した「クローン文化財」とは、3Dプリンターや最先端IT技術などと職人の手作業を融合させた技術。実際に教授は、門外不出といわれる国宝「法隆寺釈迦三尊像」を見事に復元し、展覧会でお披露目をしました。
この技術によって得られるのは、普段は見られない貴重な文化財の姿を目にできることだけではありません。実際に触れることも可能にななり、現存しているものでは欠損している部分も復元できるので、ある意味で、模倣や複製という概念を超えた「オリジナルを超越する」側面もあるのです。
専門家を結集させ、その力を遺憾なく発揮させる「ビジネスマン」としての手腕
そんな優れた技術を開発した宮廻教授ですが、その活動には芸術家としての感性はもちろん、ビジネスマンとしての手腕も多分に見て取れます。
例えば、通常デジタル技術を駆使して行う絵画の修復に際し、オリジナルの持つ感性や芸術性を加えるために美術史や絵具の専門家を集めたり、芸術作品のデータ解析や分析に優れたオランダの組織と協定したりなど、いわゆる「その道のプロ」に力を存分に発揮してもらうことで、大きな事業を成し遂げているのです。まさに優れた経営者という感じですよね。
他にも、日本有数の鋳物の街である富山県高岡市にて、伝統的な技術を持つ職人さんを活用し、地方創生にもつなげているのだそう。
また教授は、一見奇抜に見えるような活動も積極的に行っています。例えば、「芸術に触れる感動を障がい者から学ぼう」という活動では、障がいを持つ人が教える側となり、その人たちが持っている特別な能力を健常者に教えているのだそうです。
実はクローン文化財のプロジェクトも、そこから学んだ「お互いの尊厳を認め合い、それぞれの秀でた能力を合わせてより良いものを創る」という思いが根底にあるという教授は、以下のようにも語っています。
障がい者と一言で言っても、健常者には到底持てない能力を備えた人がいます。そんなすごい能力を持っている人たちを果たして「障がい者」と言えるのか。そのあたりを見直す運動も進めています。
クローン文化財の技術については特許を取得している宮廻教授ですが、その目的は利益を得ることではなく乱用を防ぐため。ゆくゆくは、世界各地の人たちが、自国の文化財のためにこの技術を使って欲しいのが真意だそうです。
最近では、藝大発のベンチャー企業まで立ち上げたというバイタリティ溢れる宮廻教授。芸術家肌の方もビジネスマンも楽しめるロングインタビューは、Mugendai(無限大)よりぜひ続きをお楽しみください。
Image: Mugendai(無限大)
Source: Mugendai(無限大)