いい加減だし的外れな感。Facebookがフェイクニュースへの新しい取り組みを発表したけど…

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  • author そうこ
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いい加減だし的外れな感。Facebookがフェイクニュースへの新しい取り組みを発表したけど…
Image: Justin Sullivan/Gettyimages

とりあえず厳しくやりますって感じか…。

2018年6月下旬、Facebookがフェイクニュースへの新たな取り組み方を発表しました。

マシンラーニングを利用した5つのフェイクニュース対抗策

FacebookプロダクトマネージャーであるTessa Lyonsによるブログでは、大きく5つの新たな取り組みが紹介されています。

1:事実確認プログラムを導入する国を追加
2:画像、動画の事実確認テストの拡大
3:Claim Reviewの利用、重複記事をチェックするなど新技術を導入し、事実確認の力を強める
4:繰り返しフェイクニュースを発信するアカウントに対しては、行動を起こす
5:専門家と連携することで、正確さや透明を向上

これらのフェイクニュース対抗策には、マシンラーニングを使われます。アルゴリズムを用いて、怪しいコンテンツ(盗用記事や不透明な広告)を感知、フラグ付けしていくのです。BuzzFeedの取材にて、Lyonsは、事実確認で否と結果が出れば、マシンラーニングを使って重複記事もフラグ付けできると語り、フェイクニュースは他社からのコピペが多いこと、掲載サイトの広告の質が悪いこと、ページ管理者がすでにFacebookシステム上で要注意人物となっているなど、共通パターンがあると説明しました。フェイクニュースを拡散したとしてフラグ付けされても、アカウント自体がBANされるわけではありません。利用規約に違反したとして、警告を受け、ページは停止されるものの、フェイクニュース拡散をやめれば、ページは復活します。

ヘイトスピーチ、児童ポルノ、テロ予告などなど、注意を払うコンテンツは多々あります。マシンラーニングでなければ、無数のコンテンツをチェックしてまわるのは不可能でしょう。ただ、マシンラーニングには、どこまでコンテンツを理解しているのか?という疑問は常にあります。いや、もっと基本的なことを言えば、Facebookの定める「不可」の判断は、正しいのかどうかという疑問にあたります。

フェイクニュースに関していえば、社外の専門家と連携したファクトチェックで、真実か捏造記事かは、ある程度まで確認できるでしょう。嘘であれば、Facebookというプラットフォームでシェアされるべきではない→フラグ付けです。では、Facebookにふさわしくないとされるその他のコンテンツはどうでしょう? たとえば、大統領選を左右したとまで言われる、Facebook上での政治的コンテンツはきちんと精査できているのでしょうか。

コンテンツをきちんと見ている感じじゃない

事例1

先日、非営利調査報道メディアのRevealが、ある記事をプロモートしようとしたところ、Facebookから政治的な内容だとして却下されました。この記事は、移民の子ども収容施設に反対する裁判に関する内容でした。Facebookが記事プロモートを却下した理由は、Revealが政治的広告を発信するための許可を取っていないから。ちなみに、この許可を得るには、メディアの住所にFacebookから郵送されてくる特定コードと、政府が発行したIDが必要となります。

Facebookのフィードに流れるニュースの量が減少した今、メディアにとって記事を多くの読者に伝えるためには、プロモート(広告)は欠かせないツールとなっています。ただ、その内容が政治的だと判断されれば、その手段も使えません。それなのに、何が政治的コンテンツなのか、どこからどこまでは、有権者の票を左右する可能性がある政治的広告なのかという線引きは、Facebookからハッキリ明示されていないのが現状。

Revealの記者Beard Duncanは、米Gizmodoの取材にてこう語ってくれました。

「僕らは、主唱団体ではありません。いくつもアワードを受賞した非営利の調査報道団体です。長年、社会的弱者を守り、不平等に異議を唱え、社会責任を果たしてきたチームです」

「これは、政治的コンテンツではありません、政策を取り扱った報道記事です。二者の間には違いがあると思います」

事例2

同じく6月、中央インディアナ地域財団(Central Indiana Community Foundation)も、ポッドキャスト最新話のポストをプロモートしようとしたところ却下されています。却下理由は、Revealと同じく、政治的コンテンツの広告許可をとっていないから。ただ、プロポートが却下されたポッドキャストの内容は、インディアナのLGBTQコミュニティの話。財団のマーケティング担当者Ben Snyderいわく、特定の政治的課題を取り上げるものでも、議員に訴えるものでも、投票を呼びかけるものでもなく、ただ、その土地にすむ人々の生活を語っただけだったといいます。米Gizmodoの取材にて、Snyderは「地域の話まで政治的コンテンツと判断されるのは、迷惑千万。まるで検問のようです」「この地域に住む人々が直面している問題について語ることさえでいないうのならば、問題提起するなんてとうてい無理です」と、Facebookの対応に不満の声をあげています。「LGBTQコミュニティの話をするときは気をつけてねと言われたようなもの」とも。

Facebookが政治広告に関する新ポリシーを発表したのが4月、施行したのは5月。内容は、先述の通り、政治広告(ポストのプロモートも広告にあたる)をうつには、Facebookへの許可申請がいるというもの。ただ、ここでいう政治広告には、Facebookのいうところの「国中で議論されている政治的話題」であり、社会問題提起や、ディスカッションも含まれています。つまり、中絶問題も、市民権利問題も、移民問題も、健康問題も、いろいろなことが政治的話題となってしまいます。非営利報道団体のProPublicaは、この新ポリシーの不完全さを指摘。同紙の取材で、モントクレア州立大学行動組合メディアセンター長のStefanie Murrayも「ニュースを政治的広告コンテンツとラベルつけされては、消費者は困惑してしまう」と苦言を呈しています。

対策の穴を認識しつつも、とりあえずNGって…

Facebook自身も、システムの穴に気づいてはいるものの、現段階では疑わしきは罰せよのスタイルをとるしかない様子。

「選挙妨害を避けるため、ページが政治的コンテンツの広告をだすには承認が必要(簡単に取得可能)。ニュースと主唱は異なります。今後、透明性あるアーカイブでこれを別に表示する場を設ける予定ですが、今は厄介を避けるためどちらもフラグ付けしています」

「選挙妨害を避けるため、透明性はトッププライオリティ。ただ、この広告、記事ではなく、広告は政治的内容を含むとしてフラグ付けしました。近々、政治関連のニュース広告をアーカイブするセクションを別で作る予定。主唱とは異なるというのは同意です」

Revealのツイートに対して、上記のリプライをしたのはFacebook広告のVPを務めるRob Goldman。ここではっきりさせたいのは、Revealも中央インディアナ地域財団も、コンテンツ自体(記事やポッドキャストのエピソード)をフラグ付けされたわけでも、拒否されたわけでもないということ。拒否されたのは、これらのコンテンツをプロモートすること。多くの読者にリーチできるよう、このコンテンツの広告をうつのがダメだというわけ。Goldmanのツイートでもここに触れ、再確認されています。そして、Revealの主唱とニュースは違うという意見に賛成しつつも、現段階ではトラブルを避けるためどちら(主唱もニュースも)NGとするしかないのだと。対応策として、政治関連のニュース広告アーカイブを別でもうけるとも言いますが、問題の本質はそこなのか? それで解決できるのか?という疑問がわきます。その別アーカイブに割り振られるコンテンツを精査する物差し自体に、我々は疑問を感じているのですから。

正直、Facebokもまだ手探りなんでしょうね。先日、Facebookというプラットフォームの脆弱性をあらゆる角度から検証するための、危機管理チームができたという話がありました。アルゴリズムではなく、人間が検証するのです。しかし、フェイクニュースや選挙妨害コンテンツも、プラットフォームの危機管理の一部と言えるでしょうに…。何をどこまでコンピュータに頼り、何を人間の目でチェックするべきなのか、それすらも今は明確な答えを出せない時期。ここ最近トラブル続きのFacebookは、見通しが甘かったのだと言っていますが、今もまだ、目の前の霧は晴れていないようです。



Image: Gettyimages

Sidney Fussell, Melanie Ehrenkranz - Gizmodo US[原文 (1, 2)]
(そうこ)