年表で見る連載「INSIDE Facebook」──2年間の蹉跌と真実のすべて

WIRED.jpの連載「INSIDE Facebook」が、7月2日公開分で最終回を迎える。テクノロジーを駆使した新しい時代のコミュニケーション・プラットフォームを目指しながらも、フェイクニュースをまき散らし、大統領選挙の行方を左右する“メディア”へと変貌を遂げたフェイスブック。その蹉跌はなぜ生じたのか。2年間の一部始終を年表にまとめた。
年表で見る連載「INSIDE Facebook」──2年間の蹉跌と真実のすべて

フェイスブックの社員や元社員など関係者51人への取材を基に、『WIRED』US版の編集長ニコラス・トンプソンとジャーナリストのフレッド・ボーゲルスタインが、巨大ソーシャルメディアの知られざる2年間を暴く長編ドキュメンタリー「INSIDE Facebook」。『WIRED』にしか書けない真実のすべてを13章にわたってお届けしてきた連載も、明日7月2日(月)18時の公開分で最終章となる。

連載ページ: INSIDE Facebook──打ち砕かれた夢と理想、そして混迷の2年間

フェイクニュースの温床として非難を集めたFacebookのニュースフィードは、なぜその目的を違えるようになったのか。問題点の改善が進まなかった理由はどこにあるのか。マーク・ザッカーバーグが真に向き合い、戦うべき「敵」とは誰だったのか──。最終回を前に、「INSIDE Facebook」で取り上げた主要な出来事を年表にまとめた。この年表を見ながら一連の流れを振り返り、これを機会にまとめ読みして理解を深めるのもいいだろう。

欧州では一般データ保護規則(GDPR)が施行されるなど、各国の規制当局が個人データの保護を強化しようと法規制を進めている。何気ない日常を気軽にシェアしているソーシャルネットワーキングサーヴィス(SNS)の裏側を知り、プライヴァシーの扱い方について考えるきっかけにしてほしい。


2011年9月、フェイスブックはタイムライン機能を発表した。急成長で世界を席巻|2012〜15年PHOTO: JUSTIN SULLIVAN/GETTY IMAGES

2011年9月、フェイスブックはタイムライン機能を発表した。

01. 急成長で世界を席巻|2012〜15年

12年: 「ニュースフィード」でメディアのニュース配信を開始。

13年: Facebookのトラフィック、競合ニュースサイトの2倍に。

15年: ニュースサイトへの読者の誘導回数でGoogleを上回り、Twitterの13倍に。また、「インスタント記事(Instant Articles)」機能を導入し、メディアがFacebook上に記事を直接、掲載できるようになる。

第2章:ニュースの支配者


02. 波乱の幕開け|16年1〜5月

16年1月: セキュリティチームがロシアからのアクセス急増に気づき、FBIに通報する。

16年2月: トレンディング・トピックス部門の派遣社員、ベンジャミン・フィルノウが内部情報をテクノロジー系ニュースサイト「Gizmodo」に提供し、解雇される。ヴェンチャーキャピタリストのロジャー・マクナミーがフェイスブックの異変に気づく。

16年5月: Gizmodo、フェイスブックが右派寄りのニュースを掲載しないようにしているという記事を掲載。Facebookが大統領選挙に影響を及ぼすのでないかとの批判が高まる。共和党の上院議員ジョン・スーンがフェイスブックに質問状を送付。

第1章:ある派遣社員の告発
第3章:不審な影


2016年4月、フェイスブックは10年計画を発表。マーク・ザッカーバーグは、人々の交流のあり方を変えるのだと宣言した。PHOTO: JUSTIN SULLIVAN/GETTY IMAGES #### 03. 一時しのぎの謝罪に奔走|16年5〜6月

16年5月: フェイスブック、幹部をスーンの元へ派遣し、12ページの報告書も送付。右派の著名人17人を本社に招き、投稿の偏向について謝罪会見も行う。

16年6月: 提供すべきサーヴィスやニュースフィードのあり方について検討する機運が社内で高まる。アルゴリズムを変更し、友だちや家族からの投稿を優先するという声明を出す。

第3章:不審な影

04. 惨劇の渦中へ|16年7〜8月

16年7月: ザッカーバーグ、投資銀行アレン&カンパニー主催のカンファレンス(国際年次会議)に出席。ニューズ・コーポレーションなどの会長であるルパート・マードックから、「もっとましな取引条件」を提示するよう要請される。

16年8月: フェイスブック、トレンディング・トピックス部門を解散し、フィードの管理権をエンジニアチームに移管。ドナルド・トランプがFacebookの「類似オーディエンス(Looklike Audiences)」機能などを活用し、大統領選のキャンペーンを展開。「トレンディング・トピックス」のフィードにフェイクニュースがあふれる。

第4章:メディア王の脅迫
第5章:フェイクニュースの嵐


05. 混乱と迷走|16年11月

16年11月: ロジャー・マクナミー、Facebookの問題点を指摘するメールをザッカーバーグとシェリル・サンドバーグに送付。トランプが大統領に当選し、ザッカーバーグはFacebookの記事が大統領選に影響したとの考えを「ふざけてる」と一蹴し、窮地に陥る。その後、ペルーで講演し、フェイクニュース問題を真摯に受け止めるとの表明、7つの対応策も発表。バラク・オバマにも会う。フェイスブック社内で「Facebookは影響力をもちすぎているのではないか」という懸念が広がる。

第5章:フェイクニュースの嵐
第6章:ザッカーバーグの失言


06. 信頼の回復を狙う|16年11月〜17年2月

16年11月: ニュースフィード部長のアダム・モセリや、プロダクトマネジャーのアンドリュー・アンカーらがプロジェクトチーム「ニュースフィードの信頼性に関するタスクフォース(News Feed Integrity Task Force)」を結成。広告代理店に支払う手数料をカットし、フェイクニュースの疑いがある記事をユーザーが報告しやすくする仕組みをつくると発表。

16年12月: ニュースの真偽を確認する機能を外部委託せず、自社で初めて実装すると発表。

17年1月: フェイクニュースに断固とした措置を取ると表明。メディア担当責任者として元CNNアンカーのキャンベル・ブラウンを起用し、「フェイスブック・ジャーナリズム・プロジェクト」を立ち上げる。ブラウンは自宅にメディアの幹部を招き、フェイスブックの最高商品責任者(チーフプロダクトオフィサー、CPO)のクリス・コックスとともにフェイスブックへの不満を聞く会を開催。

17年2月: ザッカーバーグが5,700ワードのマニフェストを発表。グローバルなコミュニティを築くために、フェイクニュースやクリックベイト(釣り記事)を排除する必要性を強調。ザッカーバーグ、「人々の意見に耳を傾ける」ために、全米を回る旅を開始。

第6章:ザッカーバーグの失言
第8章:深い溝


07. 止まない批判|17年4〜5月

17年4月: ロジャー・マクナミーとグーグルのデザイン倫理担当だったトリスタン・ハリス、セキュリティ研究者のレネー・ディレスタの3人が協力し、Facebookが民主主義に及ぼす悪影響についてキャンペーンを張る。フェイスブックのセキュリティーチーム、ロシアなど外国の諜報機関がFacebookをどのように使っているかをまとめた報告書を公表。

17年5月: 『タイム』誌に、ロシアの工作員がFacebookの広告を購入し、米国員に向けてプロパガンダを流しているという記事が掲載される。フェイスブックのセキュリティチーム、議会の調査団を受け入れる。フェイスブックの広告取引記録のなかに、米国の世論操作を狙うロシアの団体の銀行口座が見つかる。

第7章:反フェイスブック同盟
第9章:ロシア名義の口座


08. 集中砲火|17年7〜11月

17年7月: ロジャー・マクナミーとトリスタン・ハリス、ワシントンD.C.に出向き、議員にコンタクトを取り始める。

17年9月: フェイスブック、ロシアのグループが米国の有権者を標的とした約3,000件の広告を10万ドル(約1,110万円)で掲載していたことを発表。

17年10月: コロンビア大学タウ・センター・フォー・デジタルジャーナリズムの研究者であるジョナサン・アルブライト、ロシアのプロパガンダ用アカウント6件からの投稿が3億4,000万回シェアされたと明らかにする。

17年11月: 米議会の諜報特別委員会の公聴会が開催され、フェイスブック相談役のコリン・ストレッチが非難を浴びる。初代最高経営責任者(CEO)ショーン・パーカーがフェイスブックを批判するコメントを発表。フェイスブックの元プライヴァシー・マネージャーであるサンディ・パラキラス、政府にFacebookの規制を求める。

第9章:ロシア名義の口座
第10章:非難のいけにえ


マーク・ザッカーバーグは2018年4月、米下院の公聴会に出席。議員らの執拗な追及を受けた。PHOTO: CHIP SOMODEVILLA/GETTY IMAES

09. 決断と改革|17年11〜18年1月

17年11月: フェイスブック、第3四半期の決算発表を行い、利益よりセキュリティを優先する方針を発表。また、「インスタント記事」を利用する報道機関に有料サーヴィスの提供を許可。ニュース・プロダクト部門の責任者を務めるアレックス・ハーディマンが、「センセーショナルな記事のほうが儲かる仕組み」を助長してきたと認める。

17年12月: フェイスブックでユーザー獲得部門のトップだったチャマス・パリハピティヤ、フェイスブックを含むソーシャルメディア企業を批判。ザッカーバーグ、マンハッタンの有名レストランでルパート・マードックと会食。

2018年1月: ザッカーバーグ、Facebookに費やす時間が「有意義な時」となるよう抜本的改革を行うと発表。